中国ブランドの存在感といえばなんといってもスマートフォンだろう。インドは年間1億2000万台以上のスマートフォンが売れる巨大市場。いわゆるガラケー(現地ではフィーチャーフォンと呼ばれている)まで含めるとその数は年2億5000万台以上。その半数強が中国ブランドだ。
IT(情報技術)専門の調査委会社IDCによると、7-9月のインド国内でのスマホの販売シェアで、これまで首位を堅持してきた韓国・サムスン電子がついに中国・小米科技(シャオミ)に23.5%で並ばれた。
これをレノボや、インドのプロ・クリケットリーグのスポンサーとなった維沃移動通信(Vivo)や新顔ながら急速に出荷台数を増やしている広東欧珀移動通信(Oppo)などが追撃するという構図だ。
中国ブランドのスマホのうち半分以上が1台100ドルを切るいわゆる格安スマホ。コストパフォーマンスの良さや、台頭するネット通販各社との独占販売契約などで売り上げを急速に伸ばし、15年4-6月期にスマホ市場のわずか12%しかなかった中国ブランドのシェアは今年4-6月に初めて50%を超えた。そもそもインドでモバイル通信を支える携帯電話の基地局を設営しているのはほとんどが中国企業だ。
中国企業が進出しているのはスマホやITだけではない。中国企業は道路建設や発電事業への参入にも強い関心を示しており、インド政府も「技術基準を満たし、競争入札に参加してもらえば中国企業を差別することはない」(インド国道庁=NHAI=幹部)との立場だ。
ムンバイやバンガロールなどの建設プロジェクトにはすでに中国企業が下請けの形で多数参入しており、工事現場では中国語の社名が書かれたクレーンや杭打ち機が乱立している。
もちろん、インド企業の中国進出も進んでいる。重電・エンジニアリング大手のラーセン&トウブロ(L&T)や、飲料大手のタタ・グローバル・ベバレジ、トラクターや多目的車が主力のマヒンドラ&マヒンドラなどはすでに中国市場で足場を固めている。
タタ自動車傘下のジャガー・ランドローバーは奇瑞汽車(チェリー)との合弁で中国江蘇省に合弁工場を建設、乗用車の生産を開始している。インフォシスやタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)などのIT大手はすでに中国にそろい踏みしてから10年がたつ。