インドの核兵器も今や中国に対して十分な抑止力となっているのはもちろんだが、何よりも印中協力による経済外交の実利は計り知れない。
印中貿易額は近年700億ドル規模で安定して推移。インド側の大幅な貿易赤字とはいえ、インドにとって中国は今や最大の貿易相手国だ。近年では貿易だけではなく、二国間の直接投資も拡大している。投資は相手国にカネを預けることになるので、一定の信頼関係がないと成立しない。
2011年度にわずか7000万ドルだった中国の対印直接投資(FDI)は15年度には4.6億ドルに増加。2000年4月から2017年6月末までの中国の対印投資累計は16.68億ドルで、世界18位。単年度の対印投資額が10億ドルに到達すれば、ベスト10に仲間入りするのは確実だ。
情報機器大手ファーウェイ(華為技術)がインド・バンガロールに中国以外では世界最大となる開発センターを開設したのをはじめ、世界最大の鉄道車両メーカーで、ムンバイ・メトロ(都市高速鉄道)の車両納入の実績もある中国中車(CRRC)は、西部マハラシュトラ州への工場建設を表明してインド政府を喜ばせた。
家電大手のハイアール(海爾集団)は11月、同州にある工場の拡張投資を終え、主力の洗濯機だけでなくエアコンや液晶テレビ用パネルなどに生産品種を広げる計画。1万人を超える新規雇用が期待できるといい、まさにモディ首相が掲げる政策「メーク・イン・インディア(インドでものづくり)」に合致する。
そして、上海汽車はGMインディアの生産集約で遊休施設となったハロル工場で乗用車の現地生産に乗り出すことを決定。中国の乗用車メーカーとしては初めてのインド進出となる。