2017年12月23日に中央本線の特急用車両としてデビューしたE353系。早速、スーパーあずさ1号に新宿から甲府まで乗車しましたので、乗車レポートをお届けします。
中央本線の特急用新型車両「E353系」とは?
E353系は、中央本線(中央東線)の特急用に導入された新型車両です。
導入当初(2017年12月現在)は一部の「スーパーあずさ」に充当されていますが、2018年3月のダイヤ改正時には全ての「スーパーあずさ」がE353系に置き換わります。さらに、現在、E257系電車で運行されている特急「あずさ」「かいじ」への導入についても報道されています。最終的には、JR東日本の中央本線の特急列車は、全てE353系で統一されることになりそうです。
今回、新宿から甲府まで、スーパーあずさ1号の普通車(指定席)に乗車しましたので、その乗車レポートをお届けします。
ゆったりした客室内、居住性は大幅に向上!
まずは、客室内の設備面でのレポートです。
広々とした客室
乗車してまず気がつくのは、これまでのE351系の電車と比べると、客室内が広々としていることですね。
車両断面が丸みを帯びていたE351系に対して、E353系は四角に近い断面で、その分、広々としているようです。
E351系は、カーブ通過時に車体を大きく傾けるので、その分、車両の横幅を絞らないといけなかったのに対して、E353系は傾斜がかなり小さくなったので、断面を大きくとることができるようになったのでしょうね。
シートピッチは標準的ながら、可動式枕の付いた座席
普通車の座席です。シートピッチ(前の座席との間隔)は960mmで、新幹線の普通車の座席(980mm~1000mm)よりは若干狭いものの、在来線の特急車両としては標準的です。
実は、E351系はシートピッチが970mmでした。E353系では10mm狭くなっているのですが、シートが改良されたのと、前の座席のシート下が空いているので、その狭さを感じさせません。E351系は、前の座席の下に、座席を支える台があって、足を伸ばせなかったのですよね。
E351系ではグリーン車にしかなかった上下可動式の枕が普通車の座席にも付きました。これは個人的には高評価です。枕の位置は、各人の好みも大きいでしょうし、車内で休みたいのか、何らかの作業をしたいのかによっても異なるでしょう。そういう意味で、自分で好きな位置に調整できるのはありがたいです。
「E353」のロゴが入ったカバーもGOODですね!
大きめのテーブル
テーブルは比較的大きく、モバイル用のパソコンを置いてもはみ出ないくらいの大きさになっています。(サービスサンドは気にしないでください…)
テーブルの耐荷重は5kgまで。駅弁を食べたり、お酒を飲んだり、パソコン作業をする分には全く問題ないでしょう。
電源コンセントは前の座席の下に
最近の特急型車両の標準設備となっている電源コンセントは、全席に装備されています。
E353系では、前の座席の下部にあります。
常磐線のE657系では、ひじ掛けに付いていたのですが、E353系では変更したようですね。
パソコン作業をするなら、E353系のように前の座席の下にあるほうが、電源ケーブルが邪魔にならなくてよさそうですが、スマホを充電しながら利用したいとなると、ひじ掛けに電源コンセントがあるほうが便利かな、と思いました。もっとも、好みの問題の範疇とは思いますが…。
WiFiがないのはトンネルのせい?
もう一つ、最近の特急型車両の標準的なサービスとしてはWiFiがあります。最近デビューした車両でも、常磐線のE657系や、東武鉄道のリバティ(500系)には、WiFiのサービスがあります。
ところが、E353系にはWiFiのサービスがありません。平日にはビジネス需要も多い中央本線の特急列車ですから、ニーズはあるはずですが…。
おそらく、中央本線にはトンネルが多いことと関係しているのではないかと思います。特に、高尾から塩山あたりの山岳区間は、とてもトンネルが多く、携帯の電波も途切れがちです。列車のWiFiサービスは、外部との通信を携帯に頼っていることが多いですから、携帯の電波が届かなければWiFiも使えないということになりますね。
トンネル内でも携帯の電波が届くようにするためには、「漏洩同軸ケーブル」という、電波が漏れ出すように加工された同軸ケーブルを、トンネル内に敷設する必要があります。地下鉄や新幹線では整備が進んでいますが、中央本線ではまだ整備されていないのでしょうね。
荷物置き場は客室内に設置
荷物置き場が、一部の車両の客室内に設けられています。
車端部の座席のスペースに設置されています。下り列車(松本方面行き)の場合は、最前列のC/D列の座席に相当するところに設けられていました。
ただし、デッキに掲示されている「車内設備のご案内」によると、全車両にあるわけではないようです。
荷物置き場があるのは、
- 1号車、3号車、5号車、7号車、10号車、12号車の客室内
- 9号車(グリーン車)のデッキ部
の7か所のようです。
網棚に載せられないような大きな荷物を持って乗る場合には、上記の号車に乗車したほうがよいでしょう。
揺れと騒音が少なく、乗り心地はかなり向上
次に、新宿から甲府まで乗車した際の乗り心地についてです。
車体傾斜はほとんど気が付かないレベル
中央本線の特急列車には、カーブを高速で通過するために、車体傾斜装置が装備されています。カーブを通過する際に、車体を傾斜させることで、高速でカーブを通過しつつ、乗り心地の改善を図るための装置です。
先代のE351系では、「制御つき自然振り子方式」の車体傾斜装置が採用されていて、カーブ通過時には最大で5度も傾斜していました。一方、E353系では「空気ばね車体傾斜方式」が採用され、傾斜は最大でも1.5度に抑えられているとのことです。
実際に乗車してみると、E351系では車体が傾くのがよくわかったのですが、E353系では車体の傾斜はほとんどわかりませんでした。
個人的には、E351系の車体傾斜も嫌いではなかったのですが、傾斜が大きいので乗り物酔いを誘発しやすく、揺り戻し時の揺れが大きいといったことから、一般的には乗り心地が悪いとされています。
その点では、E353系は大幅に改善されています。急勾配、急カーブの多い中央本線ですので、多少の揺れは発生しますが、小刻みな揺れが多く、E351系のような大きな横方向の揺れはほとんど感じませんでした。少なくとも、不快に感じる変な揺れはほとんどなくなりました。
客室内の静穏性も向上
乗り心地という点では、客室内の静穏性もかなり向上しています。
今回乗車した10号車は、モーターが付いている車両(モーター車)でしたが、そのモーター音がかなり軽減されているのがわかりました。客室内の床が防音構造になっているそうで、モーター音や走行音を軽減しているそうです。
ゆっくりと休みたい方にとっては、とてもよい改善点ですね。
新型特急車両「E353系」の乗車レポートをお届けしました。先代のE351系の欠点を改良しつつ、高速性はそのままという優れた車両に仕上がっている印象を受けました。中央本線の旅がさらに快適になりそうですね。