連続テレビ小説「わろてんか」総集編(前編)[解][字] 2017.12.29

2912月 - による admin - 0 - 未分類

明治35年京都。
ここに笑いを商売にして大阪を笑いの都にやがて日本中を笑顔にした一人の女性がいます。
笑う事がとっても大好きなこの物語の主人公です。
(てん)すごい風太。
こないにぎょうさんの人がわろてはる。
すごいお人がいてはるもんやな。
・「出かける時の忘れ物」・「ひょいとつかむハンカチのように」・「心の中にすべり込む」・「いちばんちいさな魔法」・「泣いたり笑ったり」・「今日も歩き出す」ここはてんの実家。
京都で一二を争う薬問屋藤岡屋です。
長女のてんは何にでもよく笑うゲラ笑い上戸でした。
(りん)う〜んおいしいおすぅ。
やっぱりお母はんの料理は天下一や。
その甘鯛の酒塩焼きなぁわざとウロコごと皮を残しましたんえ。
(新一)へえ〜。
ホンマや。
目ぇからウロコの料理やな。
目ぇからウロコや〜。
(笑い声)人の生き死にに関わる薬屋の娘がゲラが過ぎる。
近々ドイツの薬会社の社長ご一家を招いての大事なホゥム・パァティもある。
それまでに笑い癖を直すんや。
ほならわてが一からしつけ直しまひょ。
まずは会釈礼。
敬愛礼。
尊敬礼。
最敬礼。
それやったらからくり人形どっせ。
からくりて…。
その笑い癖。
すんまへん!ゲラを止める方法はないんやろか。
僕は好きやで。
てんの笑い上戸。
何にでもよう笑うという事は人の哀しみにも敏感やいう事やと僕は思う。
お前が笑うとみんな楽しなるんや。
いよいよ外国のお客様をおもてなしする日を迎える事になるのですが…。
ビッテ。
(笑い声)てん!てん!てん!お前何やって…。
あ〜っ!大事なお客様になんちゅう事を!堪忍しとくれやす!金輪際わろたらアカン!ところがてんはこの笑い禁止令を破り内緒で寄席に出かけます。
(風太)よいしょ。
もう間に合わへん。
横から行くで。
えっ!?「ホンマにね珍しい名前で…」。
落語や。
「元祖やないとあきまへんでちりとてちんは。
くっさ〜!」。
(笑い声)お前らどっから潜り込んだんや!逃げろ!こ〜ら!
(笑い声)これがてんが初めて笑いの力を知った瞬間でした。
その帰り道。
(キース)よっ!よっ!何やお前ら!お〜っ痛っ!アカン…。
ほなまた。
さいなら!おお…キース!?何や?お前。
俺は…。
あ〜っ見つけたでお前ら!てん逃げろ!おお…。
か〜っ腹立つな〜!おお…何や何や。
来よった!へ?へ?こっちや!へ?ホイホイホイ…。
・捜せ捜せ!・どこ行きよったんや!?行ったようやな。
さっきの奴キースいうんやけど食い逃げしよって。
へ!あいつらが飯食わしたる言うからただやと思うて食べたらとんでもない金払えて脅されてな。
俺は何も食べてないのにや。
(おなかが鳴る音)チョコレート。
くれんのか?おおきに!うまっ!僕は旅芸人一座の芸人でな。
芸人さん!?お…おお。
すごい。
初代北村藤吉たぁ俺の事よ。
知らんのんか。
大阪やったら知らんもんはない売れっ子芸人やで。
日本一の芸人や。
日本一!すごい。
すごいやろ。
うち家ん中では笑い禁止わろたらアカンねん。
何や?それ。
もったいないなぁ。
笑わんやなんて人生損してるで。
ある日の事です。
どないしたんや?酒瓶の中身が夜な夜な減っていくんどす。
旦さんは下戸一滴も飲まぁらへん。
ネズミやないんやったらバケ猫ちゃうか?
(サエ平助)バケ猫!?バケ猫?お前がマタタビでバケ猫をおびき寄せる。
出てきたところを俺がこのこん棒でたたきのめす。
しかしバケ猫の正体は…。
お父はんがバケ猫になってしまわはった。
うちがわろたせいで?うちがパァティをむちゃくちゃにしたさかい?お父はんドイツの薬会社とどうしても取り引きしたいと思うてはるんや。
ドイツにはいろ〜んな病気を治す魔法のようなお薬があるらしいんえ。
けど取り引きが思うようにいかんようで…。
こっそりお酒を飲むようになったんや。
すみまへんどした!うちあなたをわろたんやのうてチョウチョがお嬢さんのリボンみたいで楽しゅうて楽しゅうて…。
そやからお父はんの事見捨てんといて下さい。
お願いします!あのドイツさんに会うてきました。
何やと!?うちのせいでお父はんがバケ猫に…。
そんなアホな事…。
よっしゃ!
(サエ)いや何をしやはるんどす!
(しず)あなた!ちょっと旦さん!何しはりますのん!?てん!風太!酒瓶皆持ってこい!
(てん風太)へえ!これでもう二度とバケ猫は出てこぉへん!てんがバケ猫退治してくれたわ。
お父はん…。
よいしょ。
笑ってよし。
へ?だが笑い過ぎたらいかん。
これで腹いっぱい笑えるで!食う事ばっかりやな!
(笑い声)て〜ん!てん!フフフフフフフ。
うまっ!よかった。
笑いの世界はええわ。
何か心が温こうなる。
たった一人でええ。
一人でもわろてくれはったらその笑いが広がってみんなが幸せになれるて思うんやけどな。
「とざいと〜ざい!天下の大泥棒石川チョコ衛門たあ俺の事よ!」。
チョコ衛門やて。
君は僕の芸にわろうてくれた第一号のお客さんや。
え?なあ。
これからもその笑顔でずっと…。
わろてんか?手紙書いてあげるわ。
ホンマ!?ああ。
旅先の様子書いて送るわ。
チョコのお礼や。
(鈴の音)
(藤吉)「テンテンテンゴのおてんちゃん僕は今越中富山におる」。
てんは藤吉から旅の手紙を受け取りながら笑顔がまぶしい年頃の娘へと成長したのです。
この焼き色脂のてかり。
見事なもんどす。
これやったら今すぐお嫁に出しても恥ずかしゅうないな。
うちはまだ学生どす。
お嫁に行くんはまだまだ…。
商家の娘としては遅いくらいや。
へ!はよう許婚を決めてやらんといかんいうのに。
なあ儀兵衛。
(せきこみ)物事には順序いうもんがおますさかい。
なあ新一。
(せきこみ)僕は研究に没頭したいさかいまだ結婚する気はあらへんで。
研究もええけど根詰めたらアカンえ。
あんたは療養中やいう事す〜ぐ忘れてしまうさかい。
おおきに風太。
え?手紙や手紙。
えっ手紙て何の?もう〜ええからはよ!こんな泥棒芸人の手紙旦さんに見つかったらどうなるかよう考えてみい。
さっさと渡しぃや!あっびっくりした!え…何?あっああ…。
どうぞ。
(藤吉)「テンテンテンゴのおてんちゃん元気にしてはるか?俺は今大阪に戻ってきたとこや。
法善寺近くの南北亭いう寄席でトリを任されたからや。
日本一の芸人になったら会いに行くから」。
て〜ん!てん!あっあの…!てん。
お前の婿さんや。
ええっ!?伊能製薬さんのご次男で東京の帝大をご卒業後貿易会社を任されてはるらしい。
顔よし家よし頭よし。
(2人)うらやましいなぁ。
そんな中大事件が起きてしまいます。
ちょっと旦さんえらいこってす!神戸港で火事があってうちの薬品倉庫が…全焼したようです!何やと!ホンマか?ホンマに間違いないんか!?一方てんは藤吉を捜しにこっそり大阪へ来ていました。
あっ!あれや。
いてない?けどここに出てはるいうて…。
おらんもんはおらん言うてまっしゃろ。
初代北村藤吉なんて聞いた事もおません。
あの〜!待っとくれやす!かわいい顔してもう〜!はあ…。
どないしはったんや?人を捜してるんどす。
北村藤吉いう。
それやったら知ってんで。
ついといで。
はい!一人で大阪漫遊なんざえらいええご身分やな。
や〜っ!静かにせえ言うてるやろ!イテテテテッ!うわ〜イタタタタタッ!腕を折られたくなければ消えろ。
大丈夫か?あなたは…。
おい!何してるんやお前こんなとこで。
何や?こいつ。
伊能さんやおまへんか?そうだが。
すまない正直言うとあまり興味がなかったんだ。
仕事が忙しくてね縁談を考えてる余裕がなくて。
ほう〜そやのに寄席通いですか。
僕は薬品の貿易をやるかたわら活動写真にオペラ文化芸能全般に興味がある。
いつかこれを仕事にできないかと考えてるんだ。
何て?この人。
君こそ何でその芸人を捜しに?縁談の事で迷てしもて自分の気持ちにけじめをつけとうて…。
アハハハハハハハ!その芸人が君の想い人という訳か。
想い人いう訳やありまへん。
ただあの笑顔を思い出すと楽しゅうなって笑いとうなって。
フフフ。
興味深い。
火災の事詳しゅう聞きました。
和漢薬の在庫を売り払て仕入れた洋薬が皆灰になって店が危ない事も。
何で僕に話してくれはらへんかったんですか!?てんに結納を急がせるのはそのためですか!?伊能製薬に援助してほしいさかい金のためにですか!?こんなんお父はんらしくない!お父はん!わしが一人で決めた事や。
お前らには関係ない。
旦さん!えらいこってす!取引先の旦那衆が店に押し寄せてます!倉庫の火災による損失で藤岡の手形が不渡りになるのではないかと噂が広がってしまったのです。
わしが親せきを回って金を工面するしかあらへんな。
店は僕に任せて下さい。
そやけどお前体…。
大丈夫です。
騒ぎは三日三晩続き…。
(せきこみ)兄さん!?兄さん!
(りん)兄さん!新一…。
(医師)気道から肺に炎症が広まってるようどす。
ここまできたらちょっと…。
ドイツでは特効薬を開発してると聞きますがまだ日本には…。
よう…存じております。
新一はわしよりずっと先を見てる。
いつか優れた薬が開発されて自分と同じように苦しんでる人たちを救える日ぃが来るてな。
あいつの夢を…なんとかかなえさせてやりたい。
人生いうんは思いどおりにならん。
つらい事だらけや。
そやからこそ笑いが必要になったんやと僕は思う。
つらい時こそ笑うんや。
みんなで笑うんや。
へえ!頼んだで。
(鈴の音)新一のためにも店の再建に励まんとな。
心意気はよろしいけど仏頂面は困りますえ。
お父はんもわろてんか?これでもわろてる。
ゲラゲラゲラゲラ思いっきり笑うのが苦手なだけや。
そやけどてんお前は思いっきりわろて生きるんや。
兄さんの代わりになれると思わへんけど立派なお婿さんもろて藤岡屋を守る。
まさか…。
伊能さんや。
伊能さんにお手紙書いた。
お父はんや藤岡のためにうちができる精いっぱいの事を考えてみたんや。
嘘やろ…。
おてんさんからこの論文を読んでほしいと。
新一さんが書かれたものだそうです。
兄さんはこれからの藤岡の目指すものが頭の中にあると言うてはりました。
回想
(新一)これからは薬をただ輸入するだけやのうて日本で作る時代です。
僕はその先駆者になりたい。
新一さんがお考えになっていた事は夢物語ではない。
だから僕がこの事業と研究に投資をしたい。
新一さんが残して下さった贈り物です。
一緒に受け取らせて下さい。
よろしゅう…お願いします。
よろしゅうお願いします!てんとの縁談も進めてよろしおすな。
それはお断りさせて下さい。
これはあくまでビジネスパートナーとしてのお話です。
実は僕は西洋の自由な恋愛というものに憧れていまして。
お互いの心の声に任せたい。
君の家族は幸せだな。
論文に添えられていた君の手紙家族への想いが詰まってた。
それでもうちではアカンのどすやろか?君がほかに想いを寄せる人がいるようだったから。
え?あっすいません。
大丈夫?藤吉さん?おてんちゃん?びっくりした〜。
べっぴんさんになったなぁ。
変わらへんなおてんちゃんの笑顔。
(風太)おいてん!ああどうも。
われ〜!あん時の泥棒芸人やないかお前!あん時のイガグリ坊主か!お前も大きなったなぁ。
おいこらやめろ!どこの馬の骨とも分からん泥棒芸人とつきあうな!もう。
おい行くぞ!
(唇を鳴らす音)あ…おてんちゃん鈴。
藤吉っつぁんこんなかわいいお嬢さんをからかうやなんて悪いお人やなぁ。
とうの昔に芸人やめてな大阪のうちに帰ってたんよ。
ほなあの手紙は…。
真っ赤な嘘や。
嘘?手紙に書いた気持ちに嘘はない。
けどあれから旅を続けたもんの日本一の芸人になるどころか全くウケへん。
それをおてんちゃんによう書かんと旅してるふりして手紙を送り続けてたんや。
手紙だけやのうて何もかも嘘なんやから。
この人の本名は藤吉やのうて北村藤吉郎。
大阪・船場の米問屋のボンや。
どういう事どすか?米問屋のボンって…。
いやホンマはな長男坊やから家継がなアカンのにな…。
もう戻れんし戻る気ぃもない。
うちと一緒に野たれ死ぬ覚悟で飛び出してきたんやもんなあ?よう分かりました。
跡取りの長男長女や。
許されぬ恋や!恋なんかやあらへん!忘れる忘れるさかい…。
藤吉への想いを断ち切ろうとするてんですが運命のいたずらかまたしても再会。
おてんちゃん!おてん様まさかこのお人が?あ〜…。
え!え!おてんちゃん!・待てこのガキが!お前らもグルか!
(てんトキ)へ?
(悲鳴)おてん様!この2人は関係ない!お前らまとめて鴨川に沈めたる!藤吉さん!危ない!藤吉さん!堪忍な。
おてん様は人助けでかくもうただけどす。
手当てが済んでほとぼり冷めたらさっさと出てっておくれやす。
分かってる。
痛っ。
婿さんの事もし迷うてるなら…。
そんな事ない。
(儀兵衛)てん!てんはどこや!?
(悲鳴)何!?番頭はん蔵の鍵持ってこい!へえ!お父はん待って!起きろ藤吉!おおっ…。
商家の長男が跡継ぎ修業もせんとこのざまとは情けない思わんのか!申し訳ございません!てんは長女として婿を取りこの藤岡の家を継ぐ人間や。
長男長女が結ばれる事はあらへん。
そないなつもりはありまへん。
うちはただ藤吉さんを助けとうて…。
まだ言うか!蔵に入って頭冷やせ!おてん様!旦さん!おてんちゃん!
(小石が床に転がる音)・おてんちゃん!いてるか?藤吉さん!?よかった。
これできちんとお別れが言えます。
藤吉さんのお手紙嘘でもホンマ楽しかった。
ありがとうございました。
手紙の礼をせなアカンのは俺の方や。
この8年間手紙を書く事で励まされてきたんや。
おてんちゃんは俺の芸にわろうてくれたたった一人のご贔屓さんやったんや。
それを励みになりたい自分の姿書き続けたんや。
ご贔屓さんを笑わせ続けとうて。
おてんちゃん覚えてくれてるか?「天下の大泥棒石川チョコ衛門たあ俺の事よ!」。
アハハハハハ!チョコ衛門さんやアハハ!これからもうちは藤吉さんの一番のご贔屓さんや。
俺はおてんちゃんが好きや。
これからもずっとわろて…。
藤吉さん!?戻ってきたからには覚悟はあるんやろな。
お嬢さんを下さい!えっ!
(儀兵衛)家はどうする気ぃや。
店を継ぎます。
きっぱりと芸は捨てます。
とざいと〜ざい!初代北村藤吉これがお見納め。
その覚悟の最後の芸。
はいよっよっ!必ずやおてんちゃんに一生ますますの幸せが降り注ぎ続ける事を〜。
あっお約束致します〜!俺の嫁はんになってくれ!苦労はかけるかもしれんけど一生笑わしたる。
アホんだら!てんはお前なんかにやらん!うちもわろて生きていきたい。
藤吉さんと一緒にならして下さい!もう…親でもなければ子ぉでもない。
勘当や!お父はんお母はん。
親不孝な娘をどうぞお許し下さい。
お父はんに言われた言葉を胸にわろて生きていきます。
・今日までホンマにありがとうございました。
ホンマにええんか?俺についてきたら苦労するで。
覚悟の上です。
一生一緒にわろてんか?はい。
そうして二人は京都から大阪・船場へと向かいました。
けれどそこに待ち受けていたのは…。
お帰りやす〜!このお人こそ北村屋のごりょんさん。
あ…あのお母ちゃんこの人…。
そや会わせたい人がいるんや。
あんたのお嫁さんやで。
え?許婚の楓と申します。
よろしゅうお頼申します。
うちこの縁談にかけてますねん。
え?石にかじりついてでもこの縁談は譲らへん。
この家に入る覚悟を聞かせてもらいまひょ。
このお家の嫁として認められるよう精進致しますのでどうかここに置いとくれやす。
しかたあらしまへんなぁ。
女中としてやったら置いたげまひょ。
行こうおてんちゃん。
帰ってきた俺がアホやった。
構しまへん。
置いて頂けるだけでもありがたい思います。
こうして壮絶な商い修業が始まります。
(スミ)あと頼んだで。
へえ。
ごめんやす。
おトキ!うちもここでおてん様とご一緒します。
お母はんか。
(又八)えらいこってすわ。
どないしました?若旦さんが法外な値段で古米や外米をようけ買わされてしまわはったんだす。
すんません!こんな米に大金払うて。
(啄子)ちょうどええ機会やわ。
は?うちの嫁候補2人に売りさばいてもらいまひょ。
え?内助の功で店と藤吉郎を助けられるかええ試験や。
古米ってどないして食べるんやろ?古米はにおいがありますさかいお酒で炊いたり油入れたり…。
それや!古米はおいしないとお思いやありまへんか?そやけど潰して丸めてしょうゆをかければ…。
(歓声)安くておいしいおだんごができます。
ほんだら2升頂きましょ。
へえおおきに!驚きですな。
こんな売り方が。
わしも3升や!へえ!あんたお客さんに振る舞うた分の材料代ちゃんと勘定してはりますのんか?それは…。
まあよろしおすけどな。
ああいう生きたお金を使うのは。
へ?船場の商人は始末才覚算用を重んじます。
始末は節約の事やない。
無駄な出費をせず使うべき時に生き銭を思い切り使うという事です。
この勝負あんたの勝ちや。
何でおてん様とうちが楓さんの部屋の掃除までせな…。
「みだれ髪」!?はしたない!人のもん勝手に見たらあきまへんて。
あっ楓さん。
「枯れ肌の水も弾かぬひとり寝のあはれなりけり女もののふ」。
もしかして楓さん歌人になりたいんや…。
アカンか?ホンマは親の決めた結婚なんか興味ない。
自分の事は自分で決めたいんや。
夢かなうとよろしいですね!かなう訳ないやろ。
あんたは夢ないんか?お慕いする人とお墓まで連れ添う事です。
うちなやきもちやいてたんや。
あんたが親に勘当されても自分を貫いてまっすぐ生きてる事に。
うちもあんた見習うてうちらしゅう生きてみるわ。
何やこれ!何で店にこんな借金があるんや。
お父さんが女子にうつつ抜かしてこさえた借金や。
あんたが一人前になったら話すつもりでしたんや。
あんたなら立て直せると信じての事や。
新しい取引先を探す藤吉でしたが…。
こんだけ回ってもアカンか。

(歌子)この穀潰しが!
(万丈目)いや〜っ!うわ〜ちょっ…おおっ…。
万丈目はん!?この男は昔の芸人仲間の万丈目吉蔵。
久しぶりやなぁ!何しとんねん?こんな所で油売っとらんとちゃっちゃと寄席の仕事の一つも見つけてこんかい!よう!楽しそうやな。
どっから見ても立派な若旦さんや。
なんとか店を立て直してお母ちゃんに認めてほしいんやが…。
ええ儲け話あるで。
電気式髪結い機略して…電髪や。
電髪?エゲレスで発明されたばっかりの機械や。
今すぐ現金で払たら安い値ぇで譲ってくれる。
こんなもん買う金ないで。
お前んとこの家と土地担保にして借金するんや。
アホか!できるかそんな事!店救ってお母ちゃんに認めさしたいんやろ?家と土地を担保に一発逆転の勝負に出た藤吉ですが…。
(キース)スイッチ入れんで。
はい!
(藤吉)おおっ…煙出てるぞ!ホンマや!煙って何?大将!頭燃えとる!熱熱熱っ!熱熱熱熱っ!・
(藤吉)アカ〜ン!・
(爆発音)こらイカサマもんや。
(万丈目)なんぼあんのや?これ。
1,000個や…。
1,000個!?ちょっとごめんやっしゃ。
どなたさんで?金貸しやっとります。
ここの若旦さんにこの家土地を抵当に金お貸ししましたんや。
はっ…。

(藤吉)待てキース!邪魔すんで!「待て」言うてるやろ!キース!藤吉郎!あんたなんて事してくれたんや!すまんお母ちゃん!今説明してる暇ないんや!あんたみたいな不肖の息子成敗したる!ごりょんさん!お母ちゃん!待ってくれ!藤吉は関係ない俺が悪いんや。
せめて在庫を売りさばいて金にできんかて走り回っとったんや。
(藤吉)キース…。
わての事恨んでるんやろ。
「のれんや家や」言うて昔からあんたの事縛りつけてきた。
俺が初めて覚えた芸が何か知ってるか?鳥の鳴きまねや。
お父さんの事でつらい顔してるお母ちゃんにわろうてほしいて一所懸命覚えたんや。
ホ〜ホケキョ!ホ〜ホケキョ!そやけどくだらん事するなてどなられた。
認めてほしかったんや。
お母ちゃんのためにここで一発当てたろて…あんな勝負したんや。
藤吉郎…。
ホンマにすんませんでした。
てんと藤吉は最後の一粒まで売り切ろうと町じゅうを行商しました。
あとちょっとどすな。
ああ。
よっ!おおキース。
残ったん全部もろてくわ。
え?晦日に払わなアカン長屋の家賃や。
おおきに。
ふん。
これから花火をご覧に入れましょう。
ボ〜ン!サラサラサラサラサラサラ。
よ〜っ!届いてないわ!
(笑い声)芸がそないに好きやったらいっそそれを商売にしはったらどうですか?笑いを商売て…。
うちはこれまで笑いに救われてきました。
世の中には同じように笑いが必要な人がぎょうさんいるんやないかて。
一緒に寄席を作りましょ。
そして家と土地を手放し借金を全て返済した藤吉とてんたちが引っ越した先は…。
よいしょ。
よいしょ。
おおっ!ようこそ…。
(3人)芸人長屋へ!芸人長屋?そこは売れない芸人たちが身を寄せる貧乏長屋でした。
でこれからどうする気ぃや。
寄席をやる。
三月死ぬ気でやって何の手だてもよう見つけんかったら諦める。
ひとつきや。
早速売ってくれそうな寄席がないか探し回る2人ですが…。
どこの寄席も門前払い。
笑われるだけや。
ええなぁ。
いつかお客さんがいっぱい入る日本一の席主になりたいな。
こんなとこにも寄席があるんや。
端席いうやっちゃ。
場所も悪い人通りも少ない。
あんまりようない寄席や。
それやのにこの寄席が気にならはるの?何かええなと思うてな。
安う手に入るかもしれんな。
ああ。
えらい古そうやし。
(亀井)何ゴチャゴチャ抜かしとるんや。
(2人)へ?ここの小屋主さんがどちらさんかご存じありませんか?さあ。
天神さんの裏の裏でっしゃろ?あんなとこあきまへんあきまへん。
小屋主誰か分からんやろか?さあなぁ。
変なオッサンがおって尋ねたんやけど…。
(岩さん)あれが小屋主や。
ホ…ホンマか?それ。
亀井いうてな万年生きてる亀のように朝夕じ〜っと動かんとあっこにおる変なオッサンや。
ああ聞いた事あるわ。
(万丈目)殻に籠もって人信用せん偏屈ジジイや!ほか探した方がええんちゃうか?お願いします!ここで寄席をやらしてもらえませんやろか。
せめて中見せて頂けませんか?アカン。
おおきにまたどうぞ。
(歌子)おおきに!着物一枚縫うてたった20銭か…。
一日1枚仕上げたらなんとか切り盛りできます。
一日に1枚も?お針仕事の余りぎれで作ったもんです。
継ぎはぎで堪忍どすえ。
あんた大丈夫かいな。
寝とらんのちゃうんかいな。
寄席を手に入れるためやったらへいちゃらです。
そんなに寄席やりたいんかいな。
あの人を日本一の席主にしたいんです。
そのころ京都では…。
これだけははよ片つけとかんと。
ああっ。
やっぱりお休みにならはった方が…。
大丈夫や。
わしの体の事は誰にも言うたらアカン。
この小屋壊すいうんですか?この土地売ってきれいさっぱり借金返す事にしたわ。
壊すくらいなら俺に任して下さい。
素人に席主なんか任したらこの小屋に泥塗るだけや。
この看板亀は亀井さんで鶴は…?嫁はんや。
つる子いうてな。
もしかしてこの寄席ご夫婦でやってはったんですか?寝る間も惜しんでよう働いたわ。
文句一つ言わんでな。
あんたみたいな女子やった。
働いて働いて。
わしより先に死んでしもうた。
そやけどもうしまいや。
ここを日がな一日眺めてても嫁はんに罪滅ぼしできる訳でもないしな。
罪滅ぼし?もういっぺん二人で亀井さんとこ行ってみまへんか?亀井さんホンマは小屋を続けたいんや思いますえ。
芸を愛する気持ちやったらどんな席主にも負けません。
亀井さんの奥さんの事羨ましい思います。
夫婦二人なら苦労もへいちゃら。
亀井さんの事信じて幸せやったとうちは思います。
受け継がせて下さい。
お二人の思いを。
お願いします!あんたらに任すのがええのかもしれん。
今すぐでもできそうな立派な寄席ですなぁ。
よ〜し!うわっ!これが俺らの夢の寄席や!お〜!わ〜!あきまへん。
寄席を始めるお金なんてどこにありますんや!毎日の売り上げからちょっとずつ払うていくて亀井さんも納得してくれたんや。
子どもの頃あんたを寄席に連れていったのが大きな間違いやった。
お父さんを捜し回った時の話か。
そうや。
歩き疲れて親子で川にでも飛び込んだろか思うた時…。
お母ちゃんあれ見たい!あれ見たい!あそこで道を誤ったんや。
藤吉はん起きとくれやす!ごりょんさんがいてはらしまへん。
へ?やっぱりここや。
藤吉郎と初めて来た寄席や。
ここがお母ちゃんと来た…?
(笑い声)藤吉郎さんがここを気に入ったんはそやからなんや。
そや…。
俺あん時もお母ちゃんにわろてほしいてここに連れてきたんや。
ホーホケキョ!暗い顔したお母ちゃんを元気づけたい。
その一心やった。
ホーホケキョ!
(笑い声)わろた…お母ちゃんが俺の芸でわろた。
わろてやったんや。
あのころは生きるのに必死で気が付かへんかったけど…。
あんたの芸で助けられた事もあったんかもしれんなぁ。
お金が取れる芸人集めなあきまへんで。
こっからがホンマの試練や。
あんじょう気張りや。
親孝行のためにも頑張らなあきまへんな。
(物音)わしの小屋で何しとるんじゃ。
い…いやこの小屋は俺らのもんです。
亀井さんそうですよね?お前みたいなど素人にな席主は務まらん!あれはどなたさんで?寺ギンさんや。
寺ギン?元は坊主やったんやけどもこの世界に飛び込んできて大成功して今をときめく太夫元や。
太夫元?ポ〜ンと500円出す言うてきよったんや。
(2人)500円!?まあ先約はあんたらや。
寺ギンさんより先に500円持ってきてくれたら小屋あんたらに渡そう。
500円とは今のお金でおよそ500万円。
(トキ)おてん様が…。
(儀兵衛)どういったご用件で?500円を貸して頂けませんやろか。
何を血迷うた事を。
米問屋潰してお前に金の無心をさせるなんぞあの藤吉いう男も見下げたやっちゃ。
藤吉さんに言われて来たんやあらしまへん。
うちが勝手に。
その借金の話はお断り致します。
(風太)旦さん!藤吉さん!?てんに再びこの家の敷居またがしたんは全て私の不徳の致すところでございます。
すぐに連れて帰ります。
そやけどこのままやったらあの小屋ほかの人に渡ってしまいます。
そういう事やない。
大事な約束破ってまであの小屋手に入れてもしかたないんや。
いつかまた違う小屋を手に入れる。
そやから約束を違えるような事はするな。
しず500円用意せえ。
はい。
雪の花やな。
花と信じればどんな寒空の下でも花は咲く。
その寄席で花を咲かせてわしを思いっきり笑わせてくれるんやろな。
必ず笑わせてみせます。
約束や。
はい!てん。
わろてるか?わろて生きてます。

(アサリ)寄席の高座に「薬」の額かいな。
笑いいうんは人を幸せにする薬やと思うて。
ボンの寄席か。
寄席の名前を決めんと。
付けたい名前あるか?これ。
それ俺があげた…。
この鳥のように小さい羽で一所懸命風に乗って大阪中に笑い声を広めてくれたら…。
二人の夢を乗せ風鳥亭初日の開演でございま〜す!風鳥亭開業しました!本日初日でっせ!10銭で落語が見られますえ。
そらオモロそうやな。
えいや〜っ!「トンチンカン」。
「トンチンカン?」。
(アサリ)「大黒さ〜ん」。
ところが代わり映えのしない出し物に日に日に客足が遠のき…。
もっと銭あったらなこういうホンマもんの落語が聴きたいわい!売れっ子の噺家をつかまえてくる?つかまる訳ないやろ!何でです?小さな端席に出たら噺家の格が下がってしまうんや。
その上今演芸の世界を真っ二つに割る戦争が起きててな。
片や当代随一の噺家喜楽亭文鳥を筆頭に落語の伝統を守る伝統派。
文鳥さん?あっ片や寺ギン率いるオモロかったら何でもありのあっオチャラケ派!2つの派閥でどっちが上や下や言うてケンカしてんねん。
そやけどお前ら人気の噺家と同じ高座に立ちとうないか?俺はこの小屋にお客さんもっと集めてお前らの芸を見てもらいたいんや。
風鳥亭は皆さんの夢をかなえる小屋でもあってほしいんです。
みんなで一緒にこの寄席を育ててやっておくれやす。
伝統派の誰がそんな10銭小屋みたいなもんに出ますかいな。
お願いします!どの面下げて来たんじゃ。
伝統派が出よらんから困って来ただけやろ?芸に上等も下品もない。
安うてオモロイもん売るだけや!まだ入れますか?は…。
伊能さん!?新しい寄席ができたと聞いてどんなものか見に来たんだ。
どちらさんで?伊能栞です。
どうして寄席なんか?たくさんの人を笑顔にしたいからです。
あの芸人たちで?それなりのええ噺家に出てもろたらきっとうまくいくと思てます。
何で落語にこだわるんだ?落語は芸のてっぺん。
出てる噺家の格で寄席の格も決まる。
くだらないなぁ。
一番大事なのはお客じゃないか。
そらもちろんやけど…。
お客は寄席の格や君らの夢なんてどうでもいい。
ただ笑えさえすればね。
落語がどうのこうのとそこにこだわる意味が分からないな。
俺は落語が好きや。
落語は面白い。
芸の事知らんあんたにとやかく言われる筋合いはあらへん。
そんな甘い考えでおてんさんを幸せにできると思ってるのか。
何やと?何すんねん!・
(話し声)そこやそこ。
伊能さん!?何で…。
活動写真?西洋の活動写真を日本中に広めるんが夢なんや。
親からはこっぴどく怒られて勘当同然だけどね。
あの伊能製薬のご次男が親の反対を押し切ってまでご自分の夢を?ご立派ですな。
俺かて日本一の席主になるっちゅうご立派な夢があるんや。
当てにしてまっせ。
何やそれもう〜。
お代わり。
へ?藤吉さん!僕の母親もよくそうやって夜なべしていたよ。
僕は本家の子じゃない。
東京の妾の子だ。
母は活動写真が好きでね。
だからいつか自分の手で母の好きな活動写真を作りたい。
僕の作った活動写真で日本中を感動させたい。
うちらは日本中を笑わせます。
どっちが先か競争だ。
へえ。
藤吉君に伝えておいてほしいんだ。
文鳥師匠に会ってみないかって。
そんな…どうやって?伊能製薬の正月行事にもよく顔を出してくれてたんだ。
ひゃ〜。
辛いものが大好きらしくて子どもの僕に「日本一辛いトンガラシカレーを作った。
勇気があるなら食べてみろ」ってむちゃくちゃ言ってきてこわごわ食べたらなんと中身は甘いカレー。
文鳥さんは大の甘党だったっていうオチだ。
へえ〜。
ホンマにこんなカレー作ったくらいで文鳥師匠が会うてくれんのか?ただのカレーやありまへん。
甘っ!うまいなぁ。
だしもしっかりきいてるししかも…辛いわ。
そやけどこのうどんでコロッといくほどわては甘うないで。
子どもの頃から文鳥師匠の落語が好きで特に「時うどん」が大好きで大好きで。
ようまねしました。
(うどんをすする音まね)「ひっぱりな!そない引っ張ったらだしがこぼれるやないかい!」。
そやけどうちの近所の人らは師匠の「ひっぱりな」を知らんのです。
お願いします!席主として悔いのない番組を作って天満の町を歩いてる人らに師匠の落語をその目ぇで見てもらいたいんです!うちが初めてわろた芸はお祭りで見た落語でした。
笑いってええな芸人さんてすごいなぁ思て…。
ウフフフフフ…。
そやからうちは女子はんらにもお子たちにもみんなにわろてもらいたいんです。
伝統派でもオチャラケでもない…。
落語のためやと言わはるんやったら…。
一回きりやで。
カレーうどんの礼や。
ありがとうございます!ありがとうございます!おおきに。
しかし一回こっきりではしかたがない。
これを利用しよう。
新聞?間もなく札止め!入ってってや!
(拍手と歓声)よっ!「百年目」やって!
(文鳥)今日はめったにやらんもんを一つやらしてもらいます。
(どよめき)
(すする音まね)「ええだし出てるがなこれ」。
「ひっぱりな!」。
(笑い声)「ちゃんと半分残しといたる」。
「ホンマに半分残しといてや。
昨夜とちょっとも変わらんようにやって1文ごまかしたんねん。
ひっぱりな〜!ひっぱりな〜!そないにこのうどんが食いたいか!食いたけりゃ食え!食わいでか〜!」。
「気色悪い人やなこの人」。
(笑い声)
(拍手と笑い声)いやしかし「時うどん」とはびっくりしましたわ。
てんちゃん!楓さん!?あ〜どないしはったん?うち記者になったんや。
職業婦人として働きながら歌人目指してる。
すごいわぁ。
おっきい記事書くさかい楽しみにしててな。
「風鳥亭に喜楽亭文鳥が出演す!」。
よし!大阪中の話題やで!
(一同)万歳!この記事を読んで居ても立ってもいられない男がいるはずだ。
ごめん。
あんたんとこに芸人出したるわ。
(2人)え?伝統派に庶民の味方気取りされたらたまらん。
うちが専属の太夫元なったるで。
「安うてオモロイもんがええ芸や」。
それは俺らも同じ気持ちです。
ほなら7分3分や。
そちらさんの取り分が3分なら文句ありません。
アホ言うな!わしが7分や。
(2人)え?それ以外は認めん。
あっいや…。
いや〜そやけどえらい評判や。
わし雇うてくれまっか?え?開業して三月。
お客さんは入ってるんやけど頼んでる芸人らの給金が高うて儲けにならんのや。
(啄子)このままやったら京都のお父さんへの借金もよう返されへんし。
北村の名ぁも宙に浮いたまんまや。
ほう〜えらいきれいになってますな。
気持ちよう帰れますわ。
ほなおおきに。
こちらこそありがとうございました。
(亀井)おおきにまたどうぞ。
お客さんの履きもん磨いてまんのか?へえ。
元手はかかりまへんよって。
ごりょんさん?泥はねした履きもんでお客さん帰す訳にはいかん。
そのとおりや。
汚れた履きもんきれいに磨いてもうたらうれしおますわなぁ。
そしたらまたここに来ようと思う。
そういうもんや。
へえ。
今日は蒸し暑うてもうやってられんわ。
表行て冷やしあめ買うてきてんか。
へえ今すぐ。
どうぞ。
あ〜っうまい!汗が吹き飛びますわ!これええかも。
てんは大阪名物の冷やしあめを売る事にしたのですが…。
何や冷とうないな。
え?そんな事ないんやけどな…。
はいお茶どうぞ。
アッチ…!冷たいやないか。
少しでも涼んでもらお思て氷を入れた冷茶にしたんどすけど…。
お〜。
ほんならこっちの方がええわ。
冷たっ!これぞ氷のだいご味や。
それや!え?今度は冷やしあめを氷の上で転がして売り始めると…。
あ〜!キンキンに冷えててうまいわぁ!おおきにありがとうございます。
おおきにありがとうございます。
随分と盛況ですね。
伊能さん!ようこそおいでやす。
この氷の仕掛けはおてんさんが考えたのか?へえ。
冷たそうですやろ?1本頂戴。
これを日本中の活動写真館でかけてもらうんか。
すごいなぁ!すごいわぁ!冷やしあめの売り方を僕にご教授して頂けたら代わりに何でも手伝うよ。
ホンマですか?伊能さん。
え?大阪一オモロイ寄席は風鳥亭!夕方から夜遅くまでやってます!冷やしあめを飲んで笑っていって下さい!どないですか?えらい男前な東西屋さんやなぁ。
お客さんを増やすのには女子はんにも来てもらわんとなぁ。
ええ男はんに頼まれたら嫌とは言えませんわなぁ。
はあなるほど。
昼間この辺りは老人や女性が多い。
寄席の営業を活動写真と同じにしてみるのはどうだろう?どういう事や?平日の昼間からもやるんだ。
お年寄りや女の人らが来てくれはる!そうだ。
近所の青物市場の男衆は昼過ぎには仕事が終わる。
フラッと寄ってくれるかもしれん。
さすが伊能さんやわぁ。
こうして風鳥亭は当時珍しい平日の昼興行を始めました。
10銭でおなかがよじれまっせ〜。
風太?どないしたん?またお父はんに怒られたんやろ。
旦さんが亡くならはった。
え?前々から病気やったんや。
嘘や…冗談やろ?うちをだましてるだけやろ?待て!離して!待て!行ったらアカン。
四十九日も終わったさかい。
何で誰も教えてくれへんかったん?親父さんが決しててんに言うたらアカンて。
うちお父はんに会いたい。
会いたい!会わせて!いやや!てん。
てん!お前はここにおるんや。
京都に帰ったらアカン。
てん。
ちょっとつきおうてくれるか?へえ。
ハローハロー!キースでやんす。
「新しいはニュー豚はトンでニュートンやがな」。
(笑い声)今日も一日わろて過ごしまひょ。
陽気に陽気に!はい!
(手拍子)相談があるんや。
相談?風鳥亭を会社にしよう思うんや。
会社になったら信用もされる。
いろんな仕事がやりやすうなるんや。
うちも相談がありますのやけど。
木戸銭を思い切って半値にしてみたらどうですやろ?半値?10銭を5銭にするんです。
もし儲けを今の倍にしたら…。
7分3分の条件を5分5分にしてもらえますか?そんな夢みたいな事でけたら条件変えたるわ。
おおきにありがとうございます!どないですか!わろていきまへんか?5銭でいろんな芸が見れまっせ。
五銭寄席は連日大盛況となり…。
儲けが倍になった?はい。
約束どおり取り分の条件5分5分にしてもらえますか。
それでも寺ギンさんの実入りは前より増えます。
お前も席主らしゅうなったのう。
手ぇ打とう。
6分4分や。
いやこないだ儲けを倍にしたら条件変えてくれるて…。
そやから条件変えたったんや。
6分4分に。
嫌やったら芸人全員引きあげるだけや!次は向こうから条件変えてもええさかいうちの芸人使て下さいて言わせてみせまひょ。
そやな。
そして風鳥亭が営業を始めて1年がたちました。
お父はんにお借りした500円これが最後の返済分になります。
ようお気張りやしたなぁ。
おおきに。
あんたらの寄席お父はんと一緒に見させてもらいます。
あなたわろてはりますか?お父さんわろうてくれてる。
きっと。
ありがとうございました。
あの子を仕込んで下さって。
いいえ。
仕込んでもろたんはわての方です。
え?あんたは親身になって芸人さんの世話をしたりお客さんの下駄を雨でもないのに磨いたり心を込めて仕事しなはった。
それが人の心をひきつけて自分の財産になった。
わてはこの北村屋三つの家訓を大事に守ってきた。
けどあんたに人は財なりちゅうのを教えてもらいましたんや。
あんたは立派なこの寄席のごりょんさんや。
結婚も喜んで認めまひょ。
ありがとうございます!お母ちゃんおおきに!二人はようやく祝言を挙げる事ができました。
みんなおおきに。
ありがとうございます。
一生そばにいて笑わしたるさかい。
はい。
(啄子)北村笑店?これが俺らの会社の名前や。
これで心残りがのうなったわ。
(2人)へ?わては出ていきますさかい。
出ていくて…どこへ?アメリカや。
(2人)アメリカ!?海の向こうでもう一旗あげますよって。
この子頼んますな。
これからはお義母さんに代わって厳しゅう仕込ませてもらいます。
うん!何でや。
(笑い声)そして長男の隼也を授かり1年がたちました。
もう一軒寄席を増やす。
へ!?今活動写真の小屋があっちこっちに何軒もできてるんやて。
どの小屋主も2軒目3軒目と小屋を増やしてる。
うちは木戸銭の安さと小屋の数で勝負する。
それがこれからの北村笑店のやり方や。
(隼也の声)今日は芸人さんのお給金の日ぃやさかいお母ちゃん忙しいんや。
ごりょんさんそこでよろしおすか?そこやのうてそっちに積んどいてくれへん?へえ。
そうやお茶の葉出しとかな。
(隼也の声)
(おもちゃの鈴の音)いや〜っ皆さんのお給金を計算した紙が!真っ黒で読まれへんで!すぐ計算し直しますよって。
ごりょんさん一人やったら手ぇ足りまへんな。
(アサリ)ボンの子守もせなアカンのに。
でそのボンは?いやぁ隼也!?え?どこ行かはったんやろ!?隼也!何してんねや!
(2人)風太!?目ぇ離したらアカンで。
なあ隼也。
今晩はうちに泊まっていき。
一緒にごはんにしよ。
ああすまん小屋を譲ってくれそうな席主見つけてな会う約束してもうたんや。
ああそうですか。
なんとかはよう切り上げて帰ってくるわ。
おいしいごはん作っときます。
お前こんな大変やのに寄席もう一軒増やすなんてとんでもない話やで。
ホンマはそんな事より隼也と三人でいる時間を増やしてほしいんやけどな。
てん帰ったで!お帰りやす。
隼也お父ちゃん帰ってきたで。
おいおいおい!隼也寝てるさかい!ああ…そうか?うまそうやなぁ。
ああっ…。
あっ!こらお前!家族の事寄席の裏方てんがどれだけ大変な思いしてるか分かってんのか!?それが何や。
俺も家族のためにいろいろやってるんや。
お前に知った顔で言われとうないわ。
何やこら。
こらお前…。
何すんねん。
隼也が起きるさかい!いつもの宿に泊まるわ。
何やお前。
お前こそ何や。
ん?あ?あの人ここんとこ隼也やうちの事ほったらかしで。
ちゃんと話したいだけやのにな。
東京で聴いた落語で「堪忍袋」いう噺があってな。
ケンカしてばっかりの夫婦が面と向かって愚痴言い合う代わりに袋にいろんな不満をぶちまけるんや。
「亭主を亭主と思わないスベタあま!」。
「一緒になったら幸せにしてくれるって言ったくせにこの大嘘つき!」。
袋に愚痴言うてると夫婦ゲンカがのうなってその噂を聞いた近所の人が袋に言いたい放題や。
そしたら袋がパンパンになって破裂してかんにん袋の緒が切れてしもたちゅうお噺でございます。
あんたもやったらええ。
藤吉はん!ホンマそれでも父親か〜っ!やったで!新しい寄席の本契約してきた!これ契約書や。
何で一緒に喜んでくれへんねん。
これで寺ギンと決着つけて…。
俺を呼んだか?うちの取り分もらいに来たわ。
実は小屋をもう一軒手に入れました。
そやから寺ギンさんとこの芸人今までの倍回してほしいんです。
構へんで。
それにこれからはお互いの木戸銭の取り分5分5分にしてもらいます。
オモロイ事言うようになったな。
そやうちの新しいの紹介するわ。
風太…。
こいつは肝の据わった憎たらしい奴でな気に入ったんや。
ハハハハハハハハハ!お待たせしました。
ほな帰ろか。
ちょっ…待って下さい。
何や?お互いの木戸銭の取り分も5分5分にしてもらいます。
お前どう思う?芸人の数が倍なるからいうて取り分の条件変える必要はありまへんな。
あんたどっちの味方や。
俺は正直に思うた事を言うたまでや。
(寺ギン)帰るで。
何であんな奴んとこいてるんや?京都帰らんでええんか?藤岡屋は辞めよう思てる。
分家させてもらう話があるけど断る。
そんなええ話何で?大阪はオモロイ。
どんどん変わってく。
俺も新しい事をしたいんや。
ホンマにそれでええの?ああ。
後悔しても知らんえ。
(藤吉)「東洋のマンチェスター」か。
大阪は今欧州大戦の好景気で地方からぎょうさん働き手が集まって人口は東京を抜いて日本一らしい。
日本一?ああ。
売り上げも2軒ともだいぶ伸びてますしなぁ。
ああ。
・こら待て!どいて!あっご…ごりょんさん助けて!黙れこのさい銭泥棒が!
(2人)さい銭泥棒!?お騒がせ致しました。
わいは自分のぜぜこを勘定しとっただけや。
さい銭箱の前でお前みたいな人相の奴が金数えとったら誰でも疑うやろ!すんません。
よう言い聞かせますんで。
近頃けったいな芸人が人気出て世間の風紀が乱れとるさかい厳しゅう監督しいや。
すんませんでした。
近頃人気のけったいな芸人さんて…。
そら団吾師匠やろ。
風太。
寺ギンさんとこの集金来たで。
ご苦労さん。
団吾師匠いうたら…。
月の井団吾。
落語界の風雲児や。
落語に今の世相を取り入れて客を笑わす話術は絶品や。
そないに面白いんですか?ああ。
破天荒でウケる思たら高座で屁ぇもするしすっぽんぽんにもなる。
すっぽんぽん!ちなみに口癖は…。
「女遊びは芸の肥やし。
借金はせなアカン」。
最低やあらしまへんか?そやけど団吾師匠の面白さは本物やと思うで。
笑いの神に愛された天才や。
大看板の芸人迎えてうちのお抱えにしたらどうかと思うねん。
へ?団吾師匠のような。
えろうお金かかりますやろ?5,000円か…1万。
1万!?1万円といえば今の価値に直すとおよそ5,000万円。
てんの心配ももっともです。
団吾師匠はいつ来はるんですやろか?わしらも今日会えるかどうか全く分からんのや。
(藤吉)そんな…。
・ひゃ〜師匠そないな格好で!・ちょっと!
(団吾)お待たせしましたな。
水もしたたるええ男が来ましたで。
(笑い声)よっ待ってました!
(団吾)ご贔屓の旦那がな「なんぼ天下の団吾でも戎橋から道頓堀にはよう飛び込まんやろ」抜かしよるから「南無阿弥陀仏!」。
うわ〜っあ〜っ!師匠!…言うてとっとと飛び込んだったわ。
(笑い声)わしが命をかけてもろてきたご祝儀や。
持ってけ〜!さあ飲め飲め!一晩中つきあわされてな…。
そやけどあの師匠はホンマもんや。
へえへえ。
(戸が開く音)
(キース)席主!我々は団体交渉の開催を要求します!「我々にも契約金を支払い風鳥亭に尽くしてきた芸人として尊重する事。
高座の出番を増やす事」。
そらのめんな。
高座の出番は人気次第や。
それとも今まで以上にオモロイ新ネタがあるんか?もちろんあります。
ほな見してみぃ。
ここでやるような事やないと思います。
席主は我々をどう喝しています。
ほな俺もはっきり言わしてもらうわ。
新しい事何一つやってみようともせん。
今の芸磨いてもっとお客を笑わしたるいう気概もない。
文句言う前にちょっとは新しい事考えて団吾師匠より笑い取ってみいや。
みんなうちらの家族です。
はなから苦楽を共にしてくれた事忘れはったんですか。
こいつらのために言うてるんや。
ストライキを決行し寄席に出入りしません。
以上!
(笛の音)決裂や決裂!藤吉はん団吾師匠しか目ぇに入ったはらへんさかい。
何も分かっとらんなぁ。
団吾師匠のようなお人がほかの芸人の人気も底上げしてくれるんや。
そのために1万でも2万でも払うちゅう藤吉の考えは何も間違うてないわ。
てんちゃんてんちゃんてんちゃん…。
おいどが!し〜っ。
え!?団吾師匠に会わせてくれへん?え!?どんなお人なんか自分の目で確かめたいんや。
今日は団吾師匠に会いたいいう者を連れてまいりまして。
金持ってきたんか。
1万か?それとも2万か?うちはお金で芸人さんを縛るなんてしとうありまへん。
芸人さんと席主はお金だけの関係やない。
そう信じてますさかい。
ほな話す必要はないな。
あ〜。
飯食わしてもらえるか。
(歌子)へえどうぞ。
資本家や。
資本家は出ていけ。
ええ加減にせえ!芸を磨く努力もせんとお前ら何やっとんねん!世の中もお客さんもどんどん変わってんのにお前らいつまでたっても変わろうとせん。
俺はお前らの才能信じてるんや。
団吾師匠の事かてきっと目の色変えるはずや思うとったわ。
団吾なんかに負けてられんてな。
お前らも芸人やったら命がけで芸に取り組んでみい!お見事です。
えっもったいない。
活けた花が美しいんはほんの一瞬やで。
笑いも同じや。
ボ〜っとしてたらすぐに腐ってオモロなくなる。
そやから噺家は命削ってオモロイ事やり続けなアカンのや。
わしは一人でもようけお客さんを笑わしたい。
そのためやったら何もかんも犠牲にしたって構へん。
団吾師匠は怖いくらいに落語への想いがあるお人でした。
うち何も分からへんのにいろいろ言うてホンマにすんまへんでした。
もうええんや。
ストライキを終了します!ホンマに!?お前らの才能を信じてるっちゅう大将の言葉ホンマに響いたわ。
新しい芸ピカピカになるまで磨いたで。
わいとキースのどつき万歳や!あうっ!わてはうしろ面を極める。
どやろ?よろしゅう頼んます。
いや〜!やった〜!あっ!団吾師匠!し〜っ!すんまへん。
団吾師匠来てまへんか?あっ裏から飛び出していかはりましたで。
あの〜何とかいう女子はんとこ行く言うてな。
あ〜そうそう。
ホンマかいなかなんなあ!頼むでホンマ。
しゃあないな。
おおきに助かったわ。
よしよし。
よしよし。
(戸が開く音)ああ言い忘れたんや。
ここはオモロイ高座をやりよるわ。
けったいな女子もおるしな。
ここに出たる言うてんねん。
ありがとうございます!ありがとうございます!へ?契約金1万でええわ。
今すぐ欲しいねん。
入っといで!いやいや…。
今すぐ耳そろえて払たって。
おおきに!1万1万…1万て?当代一の人気落語家月の井団吾を大看板に迎えた事で北村笑店はますます大繁盛。
寄席の数を3つに増やし勢いに乗っていました。
3軒分で72組。
掛け持ちしてもろうてなんとか回してるんやけど。
オチャラケ派から誰が来るかは寺ギンの胸三寸や。
俺が自由に動かせる芸人がもっとおったら5軒10軒と寄席増やしてもやってけんのにな。
そんな中…。
曲芸の佐助がケガしたそうです。
その佐助んとこに借金取りに行ってくれるか。
取りっぱぐれたら大損や。
佐助の女房のお富さんやな。
今月の支払い待ってもらえまへんやろか。
お願いします!金を貸してほしい?子どもが4人もおって食べるんが精いっぱいで。
勝手に寺ギンさんとこの芸人に金を貸す訳にはいかんのや。
待っとくれやす。
これ少ないけど。
おおきに。
お前らうちの芸人に金恵んでやったらしいやないか。
どういう事や!子ども4人も抱えて大変そうや思て…。
芸人に金渡してそのうち引き抜こうちゅう奴らがこのごろ多いんや。
うちはそないなつもりは…。
てんが勝手にお金を渡した事はお詫びします。
ただ正直お宅の芸人さんら見てるとそうしとうなるんもよう分かるんです。
あ?なんぼ高座に出たかて三度の飯も満足に食えん…そのせいか芸がぞんざいになって俺も番組作りに困っとります。
もうちょっと芸人さんらを気遣うてやってもらえませんやろか。
あんたも随分立派になったもんやな。
これからはあんたんとこ見習うて芸人には優しゅうするわ。
何ですて!?寺ギンさんとこの芸人が4組急に来られんようになったて。
4組も?もしもし。
刺身食うた言うとったかなぁ。
食あたりや。
腹痛い言うてるもん無理じいできへんやろ。
芸人には優しゅうせんとな。
やっぱり北村笑店で芸人抱えよ。
どうぞやっとくれやす。
ただ一つお願いがあります。
芸人さんのお給金を月給制にはできまへんやろか?月給制?芸人さんはみんな先の見通しがきかん暮らしに心細い思いしてはるんです。
太夫元やるんやったら芸人さんとその家族を一生面倒見るつもりでやらせてもらいたいんです。
ここに皆さんの名前を書いた封筒があります。
月給袋や。
わてが月給取りか!?ひゃ〜。
よう頑張らはった月には特別の報奨金も出ます。
報奨金!?この噂は瞬く間に広がり…。
月給払て芸人雇うやと?ふざけたまねしよって。
席主〜!席主!
(藤吉)おお…。
わいらも雇うてもらわれへんやろか。
はい?月給で働きたいんです。
何してんねや!こないな事寺ギンさんに見つかったらどないなる思てんねん!はよ帰れ!今すぐ月給制やめて寺ギンさんに謝れ。
芸人らが来たい言うんは自由やろ。
アホか!お前らがやってんのは引き抜きや!そない怖い顔せんといて。
おおきにな心配してくれて。
けどこれが新しい時代のうちらのやり方や。
そして数日後。
どういうこっちゃ?もうあと少しで開演やのに。
アカン…電話出えへん。
また寺ギンの仕業や。
うちに芸人出してくれてるほかの太夫元さんに手ぇ回したんや。
そんなひどい事…。
松島も玉造もうち以外の芸人一人も来てまへん。
今日は松島に芸人集めてここと玉造は休みにする。
京都と神戸の芸人も寺ギンが手ぇ回しとったわ。
このまま2軒の休業を続けたらふたつきで運転資金がのうなります。
3席のうち2席は売らなアカンようになります。
うちも月給にしたらどないですやろ。
みんな本音は向こうに移りたがってます。
そんな事したら芸人が甘えよる。
借金返さなアカンと思うから必死で芸をやるんとちゃうのか。
このごろの寺ギンさんちょっと変やないですか。
何やと?生きてる人間笑かして救ってやるのがあんたのしたい事やなかったんですか。
今のあんたは芸人をモノ扱いするだけのただのなまぐさ坊主やないか!わしが変わったんやない。
お前に人を見る目がなかっただけや。
そんな役立たずもういらん。
クビや!
(戸が開く音)ごめんおるか。
困ってるんやろ。
わしがここ買い取ったるで。
売るんやったら今やで。
(藤吉)どういうこっちゃ。
戦でも始める気ぃか。
こいつらの事ここで雇うて下さい!
(一同)お願いします!オチャラケ派の芸人150人全員北村笑店に来たい言うてます。
お前ら何寝ぼけた事言うてんねや!こんな事してただで済むと思とんのか!みんな覚悟決めてここに来たんです。
たとえこの先どないなっても北村笑店に世話になろうてみんなで決めましてん!
(一同)お願いします!ありがたい。
こんなに…。
お前らが積み上げてきた信用や。
忘れた訳やないな。
借金の証文や!この金きっちり返すまでお前らはわしのもんや。
「わしのもん」て…芸人は物やないで!大切な家族です。
家族言うんやったらこいつらの借金2,500円親のあんたが払てくれんのか。
よろしおす。
皆北村笑店で肩代わりさしてもらいます。
そんな金あれへんやろ。
うちに任しとくれやす。
(拍手と歓声)気ぃは確かか!?こいつらの借金まで背負たらお前らも共倒れや!いや〜こら祭りでっか?それとも大阪夏の陣…いや春の陣でっか。
師匠…。
そんなとこに…。
何かあった時のためと思て。
なんぼあるんや?締めて2,511円50銭。
これで芸人さんたちの借金きっちりお支払い致します。
でかしたてん!へえ!わしがカレーうどんを頂いたのが6年前。
その時と同じ着物ですな。
あ…。
そこまで始末なさってなぁ。
そんな大事な銭で見ず知らずの芸人の借金肩代わりするやなんて…。
やめときなはれ!見ず知らずやおへん。
疲れた時苦しい時家族にお薬をあげるのは当たり前。
そう思てるんです。
伝統派の噺家一同53名北村笑店でお世話になりたいんやけどどないでっか。
もちろんです!おおきにありがとうございます!そんな殺生な…。
あんたも昔の気持ちを思い出してみたらどないや。
仲ようやり直しまへんか。
うちは寺ギンさんにもわろてほしいんです。
笑いは作る人がわろてんとお客さんが笑われしまへんさかい。
ああもうどうにでもせえ!わしの持ってるもん全部お前らに譲ったるわ。
おおきに風太。
番頭として働いてくれへん?番頭?俺いっぺんだけでも番頭さんて呼ばれてみたかった。
受けてくれるか。
よろしゅう頼んます!よろしゅうお願いします。
番頭さん。
へえ!そうして寺ギンはお坊さんに戻り諸国行脚に旅立ちました。
200人以上の芸人を抱え寄席の数を一気に10軒にまで増やした北村笑店は日本の演芸史上初となる寄席のチェーン化に乗り出しました。
そしてついに大阪一の繁華街千日前に新たな本拠地となる南地風鳥亭を開業したのです。
ご贔屓ご鞭撻のほど…。
(2人)御願い申し上げ奉りまする。
(拍手と歓声)大正10年北村笑店は会社の事務所を南地風鳥亭に移し藤吉は代表取締役兼総席主に。
てんは取締役経理になっていました。
神戸に行ってたんや。
神戸?ああ。
新しい仕掛けや。
考えでもあるんか?「安来節」や。
本場の踊り手を連れてきたら大阪でもはやりまっせ!やってみる価値はある。
おお。
早速島根に踊り手を探しに来たてんと藤吉。
ここに集まってもろたみんなは合格者や。
(あや)キャ〜!大阪だが!こうして4人の踊り手が大阪にやって来ました。
一番年長やし都がみんなの代表いう事でええか?
(都)頑張ります。
よっしゃ。
(拍手)この子らの芸名は何や?安来節乙女組いうんはどうですやろ。
ええなぁ。
何か困った事があったらうちらに相談してな。
うちはあんたらの大阪のお母ちゃんやさかい。
(4人)よろしくお願いしますお母ちゃん!
(拍手)よろしゅうお願いします。
(なつ)私認めんけん。
あんたが乙女組の代表ちゅう事。
そんな中稽古を始めた乙女組ですが…。
また。
できちょらんのはとわだけだが。
大事なんは団結力や。
1週間後初高座に立たしたる!命がけでやってみい!
(4人)はい。
その後も練習を重ねるものの…。
痛いが!何す〜かね!
(都)なつあややめ〜だが。
(なつ)指図す〜だないわね。
(とわ)許してごしない。
私が悪いが。
やめろ!やめろ!いっつもいっつもケンカしてあんたらもう…。
ほ〜らどじょう鍋え。
みんなで一緒にごはん食べて仲ようやり直しや。
本当にうまいわ〜。
懐かしがね〜。
どないしたん?鍋食べたら暑なって。
冷ましてきますけんね。
おねえちゃんどっか痛いんか?どじょう鍋食べたらなお母ちゃんに会いたなっての。
あら?隼也は?隼也!とわ!1人欠けたら初高座に間に合わんが。
あんたがいじめ〜けん。
てん!隼也ととわがおらんようになったて…。
すんまへん。
てんは事務所戻って電話番してくれ。
あんたらは寮に戻っとき。
隼也?とわか!?あっ!それでは皆様来年もどうぞ…。
(3人)よろしゅうお願い致します。
2017/12/29(金) 08:00〜09:30
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説「わろてんか」総集編(前編)[解][字]

10月から放送が始まった連続テレビ小説「わろてんか」。その前半の第1週から第13週までの見どころを凝縮して一挙放送します。てんと藤吉の愛と笑いの軌跡をもう一度。

詳細情報
番組内容
10月から放送が始まった連続テレビ小説「わろてんか」。その前半の第1週から第13週までの見どころをぎゅぎゅっと凝縮して一挙放送します。放送を見てきた方はこれまでの名場面をもう一度お楽しみいただけますし、見逃した方もこれを見れば1月4日からの放送についていけること間違いなし。てんと藤吉の愛と笑いの軌跡を振り返って、2018年も一緒にわろてんか?
出演者
【出演】葵わかな,松坂桃李,濱田岳,千葉雄大,広瀬アリス,徳永えり,大野拓朗,前野朋哉,枝元萌,堀田真由,兵動大樹,内場勝則,藤井隆,新井美羽,鈴木福,大後寿々花,北村有起哉,波岡一喜,中村ゆりほか
原作・脚本
【作】吉田智子

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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