習近平氏にとって充実な1年、目立たず影響力強める

  • 中間層の不満を高めず、北朝鮮への軍事行動を回避-改革も継続か
  • トランプ大統領のツイートに対しては「戦略的冷静さ」
習近平氏、豚の餌やりから国家主席へ-中国最高権力者の横顔

中国の習近平国家主席にとって2017年は充実した1年だった。トランプ米大統領のツイートに世界がくぎ付けとなっている間に、習氏は国内外で目立たずに影響力を強めることができた。

  来年は成果が試される年になる。習氏が直面する18年の主な課題を5つ挙げる。

1.中間層の不満防止

  17年の中国経済は底堅く推移し、年間ベースで前年水準を上回る成長率となる勢いだ。ただ、エコノミストらは来年の景気減速を見込んでおり、米金利上昇で中国のレバレッジ削減に向けた取り組みも難しくなりそうだ。

  習氏にとって来年の最大の課題は「潜在的な経済の問題に直面する中で人気を維持すること」だと、カリフォルニア大学サンディエゴ校21世紀中国センターのスーザン・シャーク議長は話す。

  ミドルクラスの不満を高める恐れがある問題には、景気のほかに大気汚染や教育の質、インターネットの検閲などが含まれる。共産党総書記でもある習氏は10月の党大会で、これまでで最も強い指導者の一人としての地位を固めたが、出稼ぎ労働者の立ち退きや冬に暖房なしで生活を余儀なくされている貧しい農村部の住民などの社会問題は、状況がすぐに暗転し得ることを示した。

2.北朝鮮問題

  習主席にとって外交面で最大の頭痛の種は北朝鮮だ。金正恩朝鮮労働党委員長は、米本土に届く核弾頭搭載ミサイルを発射する能力の獲得にさらに近づきつつあり、トランプ大統領は金委員長を止めるためなら戦争もいとわない可能性を示唆している。中国は北朝鮮に対する制裁をこれまでにない水準まで強化し、トランプ氏の圧力に対応しているが、習氏が軍事行動を食い止めることができるかはまだ分からない。

3.トランプ氏巡るアジアの懸念

  トランプ大統領は敵味方に関係なく、対アジアの貿易赤字を減らそうと取り組んでおり、中国にとってはアジア各国との緊張関係を和らげるチャンスが到来した。中国は今年、ミャンマーとシンガポール、ベトナム、フィリピンとの関係改善を進めた。

  ただ、中国には強く出過ぎるリスクがある。地政学的な目標達成に向けた経済的な抑圧はいかなる形であっても最近の関係改善に水を差す恐れがある。米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備を巡る問題で、中国が韓国行きの団体旅行を再び禁じるとの報道もある。中国は来年、南シナ海の行動規範を骨抜きにするため、東南アジア諸国に対する経済的影響力を利用する誘惑に駆られるかもしれない。

4.戦略的冷静さ

  トランプ大統領のツイートに対して中国が示す「戦略的冷静さ」は効果を発揮しているもようだ。貿易戦争に発展するとの悲観的な予測は実現せず、習主席とトランプ大統領はフロリダやハンブルク、北京でそれぞれ開いた会談で友好的な言葉を交わした。トランプ氏は今月、中国を世界での米国の影響力に挑戦する「修正主義国家」と呼んだが、中国の反応は抑制的だった。

  来年は北朝鮮の脅威が増大し、米国の対中貿易赤字は拡大が見込まれる。火種の一つになりそうなのは、中国の知的財産権侵害疑惑に対する米国による調査の結果、関税引き上げなど懲罰的措置が講じられる可能性だ。

5.改革継続

  来年は、中国を世界の経済大国へと押し上げた改革開放から40年の節目となる。習氏は10月下旬に始まった党総書記2期目で、銀行や証券会社の外資保有制限の緩和など幾つかのビッグバン措置を早くも打ち出した。

  1期目の大半を通じ、習氏が市場型の改革を志向している人物なのか、経済ナショナリストなのかを巡り議論が白熱した。現在は1強体制を固めた習氏が、世界2位の経済大国である中国の開放をどの程度進めるのかを世界に示すだけとなっている。

  調査会社トリビアム・チャイナの共同創業者トレイ・マカーバー氏は「改革で国家主導の経済はより効率的になるかもしれないが、必ずしも自由化が進むわけではない」と語った。

原題:China’s Xi Had a Great 2017. Five Key Challenges Await Next Year(抜粋)

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