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2017-12-28
■[読書] 2017年の本
去年の「2016年の本」では経済学の本を多くあげましたが、今年はどちらかというと政治学の本の当たり年。読み応えのある本が数多くありました。
一方、小説に関しては、小さい子どものいる影響で今年も冊数は読めず。ただ、去年よりも面白い小説に出会えたような気はします。
というわけで、小説以外の本の新刊を読んだ順に6冊、さらにやや古めの本を1冊あげ、小説に関しては順位をつけて5冊紹介したいと思います。
なお、新書に関しては別のブログで「2017年の新書」をまとめています。
- 小説以外の本
トーマス・シェリング『ミクロ動機とマクロ行動』
ミクロ動機とマクロ行動 トーマス シェリング Thomas Schelling 勁草書房 2016-11-29 by G-Tools |
2005年にノーベル経済学賞を受賞し、昨年の12月に95歳で亡くなったトーマス・シェリングが、さまざまな身近な事例を、単純な「算術」とゲームの理論を始めとする経済学のいくつかの知見で読み解いた本。
「なぜ、教室の前の席が爆心地のように空いてしまうのか?」、「研究会や読書会が続かないのはなぜなのか?」、「なぜ人種ごとに居住地域が分かれていくのか?」、「スキーのリフトの列を解消させるためにリフトの速度を上げても無駄なのはなぜか?」、そんなさまざまな疑問にシェリングが答えていきます。
さらに最後には「なぜ広島・長崎以降、核兵器が使用されなかったのか?」という問題を扱ったノーベル賞受賞講演「驚くべき60年 ー 広島の遺産」も収録されており、日常の問題と国際政治の問題が接続されています。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20170117/p1
現代日本の官僚制 曽我 謙悟 東京大学出版会 2016-12-24 by G-Tools |
もし、「『現代日本の官僚制』というタイトルの本を書け」と命令されたら、どのような構成を考えるでしょうか?
おそらく、多くの人は明治期における官僚制のはじまりや55年体制下における官僚の動きなどを追いつつ、90年代後半の橋本行革などによって日本の官僚制がいかなる変化を遂げたのかということを分析する、といったスタイルを考えると思います。
ところが、この本はまったく違います。政治制度が官僚制に与える影響を数理モデルを使って構築し仮説を提示、さらに国際比較や日本の実態を通してその仮説が妥当かどうかを検討します。仮説の中には日本の実態と乖離したものもあるのですが、著者は仮説を棄却するのではなく、そのズレを日本の官僚制の歴史を見ていくことで埋めていくのです。
かなりハードな内容ですが、議論は非常に刺激的で、日本の官僚制を考える上で、今後長く参照されつづけていく本と言えるでしょう。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20170201/p1
石油の呪い――国家の発展経路はいかに決定されるか マイケル・L ロス 松尾 昌樹 吉田書店 2017-02-03 by G-Tools |
経済学を少しかじったことのある人なら、石油の存在がかえって経済成長を妨げる「オランダ病」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。原油の輸出が通貨高をもたらし、その他の産業の競争力を削ぐという現象です。
しかし、「石油の呪い」は、こうした経済的側面だけにとどまらず、政治的な側面にも負の影響を与えるのです。本書によれば、1980年以降、産油国は非産油国に比べて民主化が進展せず、より秘密主義的になっています。また、途上国の産油国に限れば、女性の雇用や政治的な進出が進まない傾向が見られ、暴力的な反乱に苦しむ傾向にあります。こうした石油のもたらす政治的な負の側面を、計量分析を駆使しながら明らかにしたのがこの本です。
政治学と開発経済学を股にかけるような議論は面白いですし、中東の女性の地位の低さはイスラームの影響ではなく石油の影響である、など重要な知見を含んだ本です。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20170302/p1
福祉政治史: 格差に抗するデモクラシー 田中 拓道 勁草書房 2017-02-14 by G-Tools |
「福祉国家」というと、少し古臭いイメージもあるかもしれませんが、スウェーデンなどの北欧諸国はさまざまな改革を行いつつ、充実した福祉と経済的パフォーマンスを両立させていますし、ドイツやフランスなどでも福祉の改革が行われてきました。一方、少子高齢化と財政難の中、日本では効果的な福祉改革は行われているとはいい難い状況です。
「このような状況はなぜ生まれたのか?」、「そもそもそれぞれの国の福祉制度はなぜ違っているのか?」、こうした疑問に答えるために、各国の福祉制度の歴史を説き起こし、90年代以降、どのような改革が、なぜ行われたのかということを分析したのがこの本になります。主にとり上げているのは日本、アメリカ、イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランスの6カ国。これらの国の福祉制度をタテ(歴史)とヨコ(国際比較)から分析しようとしたかなり野心的な構成で、今後の福祉国家や日本の福祉を考えていく上で一つの見取り図を与えてくれる内容になっています。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20170409/p1
山口一男『働き方の男女不平等』
働き方の男女不平等 理論と実証分析 山口 一男 日本経済新聞出版社 2017-05-25 by G-Tools |
1980年代にポストモダニズムが議論されていた日本社会の特性の一部は、実は現代でも未だ近代社会とも呼べない特性を有しているといえる。重要な業績である大卒か否かより、生まれが男性であるか女性であるかが、課長以上の管理職になる可能性の大きな決定要因なのである。(70p)
日本において女性の給与が男性よりも低く、女性の管理職は少ないです。この理由としては、「女性の方が勤続年数が短いから」、「最近はずいぶん詰まってきたとはいえ、男性の学歴が女性よりも高いから」といったものがよくあげられています。
これはもちろんまったくの間違いではないのですが、この本では、統計分析を使って、そうした学歴や勤続年数などで説明できる部分と説明できない部分に分解し、学歴や勤続年数でも説明できない、つまり生まれつきの性差でしか説明できない部分が残ることを明らかにしています。しかも、学歴や就業経験などの人的資本特性、さらに就業時間などの要因を加味しても男女の管理職差の40%程度しか説明しておらず、管理職差の約60%は男女差によるものだというのです。
テクニカルで難しい部分のある本なのですが、働き方における男女不平等についてある程度専門的に語っていくためには外せない本になっていくと思います。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20170727/p1
分裂と統合の日本政治 - 統治機構改革と政党システムの変容 砂原 庸介 千倉書房 2017-07-10 by G-Tools |
今年は衆議院の総選挙があったわけですが、注目を浴びたのは与党の勝利という選挙結果よりも、民進党の自爆的崩壊と希望の党の爆死、立憲民主党の健闘といったものでした。
「なぜ野党は自壊していってしまうのか?」、この疑問に選挙制度や地方分権改革の視点から答えたのがこの本になります。衆議院に関しては90年代の選挙制度改革において2大政党制を志向する小選挙区比例代表並立制が導入されましたが、参議院や地方議会の選挙制度はそのままでした。この選挙制度のズレが地方政治で民主党のような政党が伸び切れない原因であり、また、地方分権改革によって力をつけた首長がつくった政党も民主党と競合しました。このような「野党が育ちにくい土壌」をさまざまな分析によって示したタイムリーな本です。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20170808/p1
ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5) ポール・ピアソン 粕谷 祐子 勁草書房 2010-04-15 by G-Tools |
政治学において経済学生まれの合理的選択論が幅を利かせる中で、「歴史は重要である」との主張を行った本。政治上の選択が過去の積み重ねに依存しているという「経路依存」の考えを打ち出した本として有名なのですが、それとともに政治と経済の違いを強調しています。
基本的には政治学やその方法論に興味がある人に向けた本なのでしょうが、「政治」あるいは「歴史」について考えてみたい人にとってもいろいろと面白い論点が提示されている本だと思います。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20170825/p1
1位 ウィリアム・トレヴァー『ふたつの人生』
ふたつの人生 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション) ウィリアム トレヴァー William Trevor 国書刊行会 2017-10-25 by G-Tools |
「ツルゲーネフを読む声」と「ウンブリアのわたしの家」という2つの中編が収録されているけど、なんといっても「ツルゲーネフを読む声」。
年上の夫と独身の姉に囲まれて窮屈な結婚生活を送るメアリー・ルイーズと、病気のために外の世界をほとんど経験できなメアリー・ルイーズのいとこのロバート。この二人が出会い、そして惹かれ合います。
この物語の道具立てやストーリーの展開の仕方は平凡です。もちろん、本人たちのとっては特別な恋ですが、小説の筋立てとしては陳腐なものと言っていいでしょう。ところが、何を語り何を語らないのか、そして語る場合のディティールの積み重ねいおいてトレヴァーの筆は抜群の冴えを見せます。
さらに物語が進行するに連れて、平凡だったメアリー・ルイーズが一種の凄みを帯びてきます。平凡な人間が特別な記憶を手に入れたとき、人はそれをどのように守っていくのか、それは人をどのように変えていくのか。トレヴァーが描き出すのはその行く末です。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20171227/p1
2位 パク・ミンギュ『ピンポン』
ピンポン (エクス・リブリス) パク・ミンギュ 斎藤 真理子 白水社 2017-05-27 by G-Tools |
「痛い」のにポップ。これは素晴らしい文体であり、小説だと思います。
いじめられている中学生男子が卓球に出会う話ということで、読む前は松本大洋の『ピンポン』を少しイメージしましたが、この小説はスポーツとかそういうことを飛び越えて「人類」にまで話が及ぶもっと全然ぶっ飛んだお話。それでいて男子中学生の「痛み」がしっかりと伝わってくる。異常なまでにメタ的な視点を導入したりしつつも、最後まで男子中学生の肉体的感覚が失われないというのがこの小説の優れた点の1つです。ちょっと舞城王太郎の初期の作品を思い出させますね。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20170729/p1
母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) ケン リュウ 牧野 千穂 早川書房 2017-04-20 by G-Tools |
中国に生まれ現在はアメリカで執筆活動をしているSF作家ケン・リュウの短篇集。とにかく多彩な作家で、テクノロジーを家族などのドラマに絡めた表題作の「母の記憶に」、「存在」、「残されし者」といった作品も魅力的なのですが、今作で特に光っているのが、中国をはじめとする東アジア圏への批評的な眼差し。
特に、清による揚州大虐殺を背景にした「草を結びて環を銜えん」と「訴訟師と猿の王」という2つの作品では、天安門事件の扱いをはじめとする中国の現在の社会状況に鋭い批評的な眼差しを投げかけていると思います。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20170708/p1
ジャック・グラス伝: 宇宙的殺人者 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) アダム ロバーツ Adam Roberts 早川書房 2017-08-24 by G-Tools |
イギリスのSF作家が放つピカレスクロマン?、それとも本格推理小説?、それともトンデモSF?
なかなか説明しがたい小説なのですが、小惑星に開けた穴の中に放り込まれた刑期11年の7人の囚人たちがサバイバルを繰り広げる第1部の「箱の中」は息苦しくなるような展開。そして、最後の主人公ジャック・グラスによる映像化不可能な鮮やかな逃走劇。ここは見事という他ないです。
紹介記事はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20171123/p1
5位 オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』
すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫) オルダス・ハクスリー 水戸部功 早川書房 2017-01-07 by G-Tools |
1932年にオルダス・ハクスリーによって書かれたディストピア小説の新訳。同じディストピア小説の『一九八四年』が人々を抑圧する社会を描いたのに対して、この『すばらしい新世界』はむしろ人々の欲望が肯定されている世界を描いており、この2つのディストピア小説の違いは以前からよく言及されていました。しかし、解説で大森望が言っているように実際に読んだことのある人は少ない小説でもありました。
ところが、今回読んでみたら面白い!アイディアだけでなく、小説の書き方としても面白いですし、何よりも登場人物のダメさ加減が面白い。
ディストピアに楔を打ち込むために後半に「野人」のジョンが登場するのですが、これがまためんどくさい。ジョンはシェイクスピアのセリフを引用しまくるのですが、これがまたうざいです。
ディストピア小説でありながら、善悪二元論的な展開から完全に離れているのがこの小説の面白いところ。世界設定よりも、小説の展開のしかたが「新しい」と思います。
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