ITmedia Mobileは12月上旬、2017年を代表するスマートフォンを決定する「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2017」の審査会を開催しました。
選考対象となるスマホは2016年12月から2017年12月10日までに発売した機種で、最終選考に残ったのは以下の10機種です(発売日順に掲載)。
2017年の選考委員は、1年を通じて携帯電話業界を取材してきた石川温氏、石野純也氏、太田百合子氏、佐野正弘氏、島徹氏、すずまり氏、房野麻子氏、村元正剛氏、山根康宏氏、らいら氏(五十音順)の10人と、ITmedia Mobile編集部(2人で1人扱い)です。
審査に先立ち、選考委員がそれぞれ5機種ずつノミネート候補を挙げました。各委員が推薦した5機種は、以下の通りです。
選考委員(五十音順、敬称略) | 機種 |
---|---|
石川温 | iPhone X、Apple Watch Series 3、Mate 10 Pro、Galaxy Note8、AQUOS sense |
石野純也 | Galaxy Note8、iPhone X、AQUOS sense、HUAWEI Mate 10 Pro、Apple Watch Series 3 |
太田百合子 | Galaxy S8、iPhone X、HUAWEI Mate 10 Pro、Xperia XZ1、MONO(MO-01K) |
佐野正弘 | iPhone X、Galaxy S8、Xperia XZ Compact、AQUOS R、MONO(MO-01J) |
島徹 | Galaxy S8、iPhone 8 Plus、GRANBEAT、HUAWEI P10 lite、HUAWEI Mate 10 Pro |
すずまり | HUAWEI Mate 10 Pro、HUAWEI P10 Plus、Galaxy Note8、iPhone X、Moto X4 |
房野麻子 | Galaxy Note8、Galaxy S8、Mate 10 Pro、iPhone X、AQUOS sense |
村元正剛 | iPhone X、Galaxy Note 8、HUAWEI P10 lite、Moto X4、AQUOS R |
山根康宏 | iPhone X、Galaxy Note8、Huawei Mate 10 Pro、Huawei P10、Moto X4 |
らいら | iPhone X、Apple Watch Series 3、TONE m17、Galaxy Note 8、HUAWEI Mate 10 Pro |
ITmedia Mobile編集部 | iPhone X、Galaxy Note8、HUAWEI Mate 10 Pro、AQUOS R、HUAWEI P10 lite |
審査会ではまず、委員の皆さんに推薦した機種とその理由を語っていただきました。この記事では、山根氏、石野氏、石川氏、佐野氏、房野氏、すずまり氏(発言順)のコメントをご紹介します。
山根氏 まず「iPhone X」は予想を裏切らない注目した通りのスペックでしたね。新しいUIも積んで、今までの緩やかなiPhoneの進化と比べると、急激な進化を遂げ、来年以降も楽しみです。
次に挙げた「Galaxy Note8」は、昨年の「Galaxy Note7」のバッテリー問題というショックがありながら、最高のペン端末というのをゼロから作り直しました。これまでもGalaxy Noteシリーズを使ってきましたが、NoteユーザーとしてNote8は最高に使いやすいと評価しています。
「HUAWEI Mate 10 Pro」はAI搭載の新しいチップセット「Kirin 970」を自ら開発し、それを搭載して製品化した頑張りを評価しています。こういうチップセットはこれから主流になりそうですよね。カメラも昨年のP9で「ファーウェイ=カメラ」というイメージができましたが、さらにその印象を深めたと思います。
「Moto X4」はデザインが垢抜けてモトローラっぽくないのがこれまでになく、候補に入れてみました。当初は合体式のスマートフォンを今年も出してくれた点を評価して「Moto Z2 Play」を挙げるつもりでしたが、Moto X4に変えています。
石野氏 「iPhone X」と「Galaxy Note8」をまず挙げましたが、これは順当といえるのではないでしょうか。どちらもスマートフォンの入力インタフェースの革新と思っている……というとちょっとポエムっぽいですけど(笑)。
iPhone XはTrueDepthカメラで顔の動きを完全に追随してくれるので、今後はアプリの対応次第で顔の動きでスクロールしたり、「うなずいたらOK」といった操作ができるようになったりするのではないでしょうか。将来の可能性をすごく感じます。
Appleは保守的な技術を保守的に採り入れて完成度を高めた端末を作っていく会社ですが、今年は流行しはじめた縦長ディスプレイを取り入れて、他社では見られないTrueDepthカメラを搭載し、チャレンジ精神が感じられます。その点を買いたいですね。「iPhone Xで次の10年を」と言っているだけあり、初代iPhoneのような、他にないものを取りれています。
Galaxy Note8も、日本市場にNote5が無かったこともあり、(GALAXY Note Edgeから)3年も待ったことになります。使ってみるとやっぱりNoteだな、という安心感がありますね。「Apple Pencil」を使った後だと若干遅延が気になりますが、ペンも書きやすいと思います。iPhone XとGalaxy Note8は別格と言えるでしょう。
次に「HUAWEI Mate 10 Pro」ですが、これは山根さんと同じく、NPUを搭載して機械学習に特化させた点を評価しています。ただ(Qualcommの)SnapdragonやAppleも同じようなことをやっているんですよね。ですから、どちらかというと、新しいというよりもマーケティング的にAIを強く打ち出した点に注目しました。Leica(ライカ)と共同開発したカメラもやはりキレイです。
「Apple Watch Series 3」も挙げていますが、これはスマートフォンの本流からは外れているとは思うものの、OSを搭載し、アプリケーションでカスタマイズができ、電話や通信も単独でできることを考えると“Phone”なのかな、と。Apple Watch単体でも電話としてなんとか使えますからね。腕時計に電話機能を入れたのはAppleが初めてではなく、SamsungやHuaweiのスマートウォッチにもありましたが、eSIMに対応し世界中のキャリアを巻き込めたこと、LTEのカテゴリー1に対応しIoT向けの規格を取り込んで省電力性を高めたことで、実用性がある点を評価しています。あのサイズで電話ができるのは、かつての「premini」みたいで夢がありますよね。
最後に「AQUOS sense」ですが、今年は「docomo with」をはじめ、大手キャリアのMVNOへの逆襲の1年でした。その象徴がdocomo withです。その中で一番売れたのは現段階だと「Galaxy Feel」ですが、Samsungであれば、このスペックで安く売ることも可能だろう、と。逆にシャープのAQUOS senseにこれだけ機能を入れて3万円で売る、というのは相当な経営判断があったはず。その点を評価し、最終的にGalaxy FeelからAQUOS senseにノミネート候補を変更しています。
石川氏 ここ数年iPhoneの進化が小さく飽きてきたところに、「iPhone X」がこれだけの大きな進化を持ってきました。「ホームボタンがない」というのは今年のトレンドだと思うけれど、その操作をOSレベルから工夫しています。ここまで使い勝手が良いのは評価に値します。Android勢ではそこまでできないので、Appleの強みが発揮されていると思いますね。
さらに私も「Apple Watch Series 3」を候補に入れましたが、これは日本の3キャリアで同じような仕組みを入れ、オンラインでアプリから契約ができる、新しい契約スタイルを評価したからです。家電量販店で買ってiPhoneから契約できる――これからのIoT機器との付き合い方、新しい使い勝手を提案してきたのが面白いですね。
「HUAWEI Mate 10 Pro」を挙げたのは、2017年はHuaweiの勢いを感じたから。このタイミングでAIと言えたのもうまい。実際に持ってみると質感も高い。侮れませんね。
「Galaxy Note8」はGalaxy S8と迷いましたね。S8あってのNote8ですから。ともかくSamsungは相当やるな、というのがこの2機種で感じたこと。今年のトレンドにも乗っています。Apple、Huawei、Samsungが2017年に中心となった3メーカーだと思います。
ただGalaxy S8は最終的にGalaxy Note8に絞り、S8の代わりに「AQUOS sense」を候補に入れました。キャリア主導でSIMロックばりばりのメーカーが、docomo withをはじめとする安い端末を出してきました。その象徴としてAQUOS senseを入れたいと思います。
2017年は「iPhone 8」や「ZenFone」シリーズがノミネート候補に挙がらなかった。また、最終ノミネート機種の中に、従来は常連だった「Xperia」シリーズが含まれず、審査員から驚きの声も上がった。
この点について選考委員にこの点を聞いてみたところ、iPhone 8は売れ行きは好調なものの、iPhone 8 Plus/Xとのカメラの差が評価を落とした原因となったようだ。
逆にXperiaシリーズはカメラが評価されたものの、「(業界で多く使われる)ソニー製カメラセンサーのリファレンスモデルのよう」という指摘をはじめ、「いつまでも(デザインテイストが)変わらない」「(トレンドになりつつある)縦長ディスプレイへの対応ができていない」「来年(2018年)に期待する」といった声も聞かれた。
ASUSに関しても2016年までの端末は評価が高かったものの、その特徴である「バランスの良さ」が他社でも当たり前になり、Huaweiのような“イチオシ”がないことが評価を落としたようだ。
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