はあちゅうオフィシャルブログより
今月17日、ブロガーで作家のはあちゅう氏が、過去に著名クリエイターから受けたセクシュアル・ハラスメント被害をBuzzFeedで証言した(はあちゅうが著名クリエイターのセクハラとパワハラを証言 岸氏「謝罪します」)。その反響は非常に大きなもので、今年10月にハリウッドの大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタイン氏が複数の女性からセクハラ・性暴力加害の告発を受けたことをきっかけに活発化した、「#metoo」を付記するツイートが日本でより広まる契機ともなっている。
一方、セクハラや性暴力の被害者に対し、心無い言葉を浴びせたり、告発を無効化しようとする人びとがいる。加害者を非難するよりも、被害者のあら捜しが始まってしまうのである。はあちゅう氏に対しても「なぜ今になって証言するのか」といった誹謗中傷の声が上がっているのだが、こうした動きの中で特に注目されているものがある。はあちゅう氏による「童貞いじり」の問題だ。
この問題は、これまでツイッターなどでたびたび「童貞いじり」を行ってきたはあちゅう氏に対して、「セクハラではないか」という非難の声が上がっている、というものだ。はあちゅう氏の告発を無効化するために「童貞いじり」を“利用”しているように見える人びともいるのだが、被害者や告発者が過去にどのような言動を行っていたとしても、被害の事実がなくなるわけでも、深刻さが薄まるわけでもない。「はあちゅう氏のセクハラ被害」と「童貞いじり」はそれぞれ独立した問題であり、こうした人びとに与することは望ましくない。
しかし、だからといって「童貞いじり」には一切問題がない、ということでもない。むしろ「セクハラ」と「童貞いじり」は、「男らしさ/女らしさ」といった性規範の話としてあわせて考えられるものなのではないだろうか。
「童貞いじり」一連の流れ
前述の通り、はあちゅう氏は以前より「童貞」についての発言を繰り返してきた。2014年頃から「童貞いじり」の頻度が高くなり、2017年12月2日には、永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン「チェリー」にて、同媒体編集長・霜田明寛氏と「はあちゅう『童貞をバカにしてる』に反論“オトナ童貞”徹底論争」を公開している。タイトルからもわかる通り、この記事(対談の様子は動画で公開)は、童貞発言への批判に、はあちゅう氏が応えるものとなっている。
一部報道では、はあちゅう氏のセクハラ被害証言を機に「童貞いじり」批判が起きたとされているが、BuzzFeedの記事は12月17日に公開されているものであり、批判と応答はそれ以前から行われていた。決して告発の無効化のためだけに批判されている、というわけではない。
12月19日、はあちゅう氏は自身のブログで、「童貞いじり」発言について、「『オトナ童貞』をコンセプトに掲げたメディアを運営している友人や童貞をブランディングに利用している友人と『童貞は誇ってよいブランドである』『童貞のおかげで今がある』『今の時代童貞がかっこいい』という話題をよくしており、その単語に愛着と親近感がある環境の中にいたために差別意識なく使っていましたが、ツイッターでご指摘を受けたように童貞=社会的弱者という言葉のニュアンスがあること、また、そのように受け止めてしまう人が多いことに対しての意識がありませんでした」とする謝罪を公開。
2日後の21日には、「童貞に関しての件もそろそろ終わりにしようと思いますが、2014、15年、の友人へのエアリプ含むツイートがこのタイミングでまとめられ、言及すれば謝罪しろ、謝罪すれば活動やめろ、もう地獄なので最初から無視したらよかったかなと(少なくとも今ではなかった)ちょっと後悔しています。この件も以上!」とツイート。
翌22日に、謝罪の撤回と該当記事を削除し、「やっぱ気持ちが弱くなってる時になんかやったらダメだわ…。あまりにもわーーっと大量に誹謗中傷がきたから、納得いかないけど、とりあえず謝って済まそうみたいな心境だった。私らしくなかった。どう考えても表現とセクハラは違う。堂々としていなくては」ともツイートしていた。
以上が、「童貞いじり」に関する主な出来事だ。