先に謝っておきます。
あまり気持ちのいい話題ではありません。
ごめんなさい。

今日、こんなニュースが回ってきました。
まずは読んでみてください。
このニュースを見たかなりの関係者から、「これ、西野が絡んでんの?」という質問をいただきました。

というのも、今年10月に幻冬舎さんから出した『革命のファンファーレ』で、同様の企画を書いていたからです。
こちら↓
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次代の出版サービス『おとぎ出版』

 

数年前、同じ事務所の後輩芸人から「事務所が、僕らの単独ライブのDVDを出してくれないんです」という相談を受けた。

 そこそこ人気のあるコンビで、ファンが「DVD化」の署名運動に奔走し、400筆ほどの署名を集めたが、吉本興業は首を縦に振らなかった。

首を縦に振らなかった理由が気になったので、訊いてみたところ、DVD3000枚ぐらい売れないとモトがとれないんです」と吉本社員。

 

つまり、3000枚以上の売れ行きが見込めないヤツにはDVDリリースさせるわけにはいかない、というわけだ。

なるほど。しかし、ここで少し気になった。

 

DVDが一枚3000円だとして、3000枚となると、3000×3000枚で、900万円。

3000枚のDVDを制作するのに、はたして900万円もかかるのだろうか?

 

気になったので、すぐに工場に電話。

DVDを3000枚刷って、盤(パッケージ)にするのに、おいくらかかるのですか?」と工場のオジサンに訊いてみたところ、「27万円」という驚きの答えが返ってきた。

 

ん?

 

900万円近くかかるんじゃなかったの?

撮影と編集を自前でやってしまえば、27万円あれば、3000DVDを作ることができるの?

残りの873万円は、どこに消えた?

 

調べたところ、残りは、作者からお客さんの手に届くまでの『流通』にゴッソリと持っていかれていることが分かった。

ちょっと待った。

27万円であれば、13000円で売ったとすれば、90枚でペイだ。

90枚であれば、そもそも流通に乗せなくとも、手売りで届けることができるじゃないか。

 

つまり、「流通に乗せる」というところから話をスタートさせてしまうから、その若手コンビは単独ライブのDVD作ることができなかったわけだ。

 

なるほど、これは面白い。

すぐさま、僕のトークライブ『西野亮廣独演会』のDVDを流通に乗せることをやめ、会場のみでの販売に切り替えた。

流通に乗せないことで発生した大きな売り上げは、海外公演の開催費用に充てている。2015年の独演会のニューヨーク公演は、これにより入場無料での開催が実現した。

そもそもの問題であった後輩芸人の単独ライブのDVD化を完全に後回しにして、まずは自分の活動に反映させているところが実に西野らしい。

 

可能性を殺させない

 

さてだ。

 

今、あらゆる分野で同様の問題が起きている。

「本を出版したい」という声がたくさんあるのに、出版社は首を縦に振らない。

『取次』というものを介しているから、数千冊〜1万冊売れないとモトがとれないからだ。

結果、数千冊〜1万冊売れる見込みがある作品しか出版社は受け入れない。

 

しかし、作品を届けたい人がいて、その作品を求めている人がいるのに、その作品が届かないのは、やっぱり不自然だ。

数万人に届く作品があってもいいし、数百人に届く作品があってもいいじゃないか。

 

僕は、これからの出版は種類用意した方がいいと思っている。

取次を通した"マス向け"の出版と、取次を通さない"ニッチ向け"の出版だ。

 

さっそく友人に声をかけ、『おとぎ出版』という出版サービスの開発をスタートさせた。

『おとぎ出版』は、ニッチ向け(個人作家のため)の出版サービス。

 

仕組みはこうだ。

本を出したい人が、クラウドファンディングで、その本の買い手を事前に募り、100人の買い手が見つかった時点で、出版が決定。

おとぎ出版が、その本のデータを受け取り、製本し、買い手に届ける。

取り次ぎを介していないので、作家印税は通常10以下のところを、おとぎ出版の作家印税は33%。

本の権利は100%作家に譲渡する。

作家は、その本と実績を持って、大手出版社に売り込んで、今度は大手出版社からマス向けの本を出してもいい。

 

僕らがやるのは、マス向けの出版までの"橋渡し"で、とにもかくにも出版のハードルを下げ、これまで首を切られていた作家、作品に光を当てる。

そこから次世代のスターが生まれるかもしれない。

それこそ、YouTubeのように。

 

ニッチ向けの出版は、受注生産&産地直送でいい。

この形は、ゆくゆくはCDなどにもトレースしていける。

 

人は承認欲求の塊だ。

しかし、これまで極々一部の人間の欲求しか満たされてこなかった。

そろそろ、皆の欲求が満たされてもいい時期だ。

 『おとぎ出版』で国民総クリエイター時代の扉を開けきる。

 

革命です。

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結論を言うと、今回の幻冬舎さんとCAMPFIREさんの企画に僕は絡んでいません。
このことはニュースで知りました。

前々から、幻冬舎の見城さんや箕輪さんや、CAMPIREの家入さんには『おとぎ出版』の相談をしていたので、今回、一言もなかったのは、かなり複雑な気持ちです。
女々しくて気持ちが悪いですが、寂しい気持ちもあります。
「一声かけてくれよ」というやつです。

「企画をパクりやがって!」といった程度の低い言い分ではなく(マジでそんなのはどうでもいい!)、
サービス選びも、出版社選びも、個人的には家入さんや見城さんの応援の気持ちでやっていたので、こうして一度でも不義理を働かれると、今後、二の足を踏んでしまいます。

とりあえず、またこういうことがあるのも嫌なので幻冬舎さんからは二度と“ビジネス書は”出しません。

幻冬舎さんとCAMPFIREさんとの今後の向き合い方については、決して感情的にはならず、慎重に考えていこうと思います。

ただ、こうやって出版業界が盛り上がることは大賛成です。
引き続き頑張ります。


西野亮廣