二〇一八年度予算案の防衛費は五兆一千九百十一億円と過去最大となった。北朝鮮や中国の脅威を理由とするが、際限なく膨張することはないのか。防衛力整備に「節度」を取り戻さねばならない。
防衛費は冷戦終結後、減少傾向にあったが、政権復帰した安倍晋三首相の下で編成した一三年度以降、六年連続で増額、過去最大の更新も四年間続く。厳しい財政状況の中での防衛費の優遇である。
政府が防衛費増額の理由とするのが、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮や、海洋進出の動きを強める中国への対応強化だ。
日本と周辺地域の平和と安全を守るため、情勢変化に応じて防衛力の適正水準を常に検討することは必要だが、単に予算を増やせばいいというものでもあるまい。
国民の命を守るための防衛力整備が地域の軍拡競争を加速し、逆に脅威が高まる「安全保障のジレンマ」に陥っては本末転倒だ。
他国の脅威を利用して防衛力の整備を一気に進めるような姿勢は厳に慎まなければならない。
防衛費の増額が続くのは高額の米国製武器購入も要因だろう。
垂直離着陸輸送機MV22オスプレイやF35A戦闘機、無人偵察機グローバルホークは高額の上、米国が価格や納期の設定に主導権を持つ有償軍事援助(FMS)調達に基づいて導入されている。
政府は地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」二基と戦闘機に搭載して艦船や地上の目標を攻撃する巡航ミサイルの導入を決めた。一八年度は初期費用のみを計上したが、いずれもFMSでの導入が想定される。
当初、一基八百億円と見込んでいたイージス・アショアは、一千億円を超えるとの指摘もある。
一二年度に千三百八十億円だったFMS調達は安倍内閣の下で急増し、一八年度は四千百二億円に上る。米国に促されても不要不急の防衛装備品は購入せず、必要であっても適正価格での購入に努めるようクギを刺しておきたい。
政府は中期防衛力整備計画で一四年度から五年間の防衛費総額を、米軍再編経費などを除き二十三兆九千七百億円程度と定めるが、当初予算だけで二十四兆円を超える。毎年約二千億円の補正予算を加えればさらに増える。
防衛省は、為替変動などの要因を除けば中期防の枠内と説明するが、防衛費は適正な範囲内に収まっているのか。防衛力の在り方や米国製武器調達の妥当性を含め、国会での徹底議論が必要だろう。
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