東欧にあり、ロシアとEU諸国(ポーランド・リトアニア)に囲まれたベラルーシ。
現代に残るソ連としても知られ、旧ソ連の復活を願い、ロシアとソ連の憲法をベースに再度連邦を組むことを企んでいるというヨーロッパにして独自色を放つ国です。
そんなベラルーシに生まれ育ち、旧ソ連時代を生きたおっちゃん(職業: 運転手・建築)と1日行動し、様々な話を聞きました。
というわけで、おっちゃんの言葉をそのまま借りて、彼の口から出た日本への忠告を紹介します。
*過激な表現が含まれます。なるべくそのままの表現を紹介したいのでご了承ください。
目次 [表示]
1. 金正恩はアメリカの忠犬
このおっちゃんはとにかくアメリカや競争主義的な現代の風潮が嫌い。
そんな中、彼がいうのは金正恩はアメリカの忠犬だということ。
「いつもノイズを発し、それによってアメリカはアジアに拠点を作る理由を得ているし、武器を大量に作って日本に買わせる事ができる。」
アメリカの最大のビジネスパートナーは北朝鮮で、金ファミリーはアメリカから金をもらってるんじゃないか、って強く疑ってました。
「でも北朝鮮はノイズは出しても実際には行動する勇気も装備もない、そんなのは誰でも分かっている。北朝鮮人だってそんなの分かってた。」
とのこと(このおっちゃんナイジェリアで北朝鮮人とも仕事をした事がある)。
「アメリカの経済が厳しい時は、忠犬が吠える。そして今またアメリカの経済が上向きになってきてる、何度も繰り返されてきた歴史だろ?」と。
2. 原発は丘の上
「日本のエンジニアはなんで海沿いに原発を作ったんだ?」
「海水を冷却水で使えるというのはわかる、でもせめて標高50m、60mのところに立ててパイプライン立てるというアイデアは日本人にはないのか?」
「津波が来るくらい、海に囲まれた日本人が知らないわけがない。」
と断言していました。
「パイプを伸ばすほうがずっと安く上がるだろう。」と。
ちなみに彼、チェルノブイリの事故にベラルーシの国として巻き込まれてはいるものの、原発自体には反対はしていません。
「石油はそう遠くないうちに枯渇する」「現在は価格は落ち着いているが、アメリカや西側諸国によって値段が無理やり安定させられているだけだ。」
と。
一方、
「風力やソーラーパネルはコストパフォーマンスが悪すぎるし、発電量よりも維持管理費の方が金がかかる。」
「建設するのに使う電気のほうが発電量より食うしダメだあんなもんは。」
だそうです。
3. 移民はやめろ
ベラルーシを歩いていて感じるのは、その移民の少なさ。ほとんどいません。アジア人はもちろん、アラブ系、インド系、黒人、一切見かけませんでした。
そんな彼らはとにかく移民政策に反対。これは彼個人だけではなく、一般論として旧ソ連系、旧ユーゴスラビア系で見られる共通事項。
特に「貧しい」国からの移民には反対。
「彼らの目的は、移住し子供を産み、そこに家族を呼び寄せる、これが最終目標なんだと。決して自分の国に戻ることはない。」
「移民たちはどこへ行きたがる?ルーマニアか?ブルガリアか?違うドイツだ。彼らは金が欲しいだけ、その国の将来のことなんか考えてなんかいない。」
「平和を求めて難民、国に戻ったやつはいるか?平和なリトアニアに移住したがるやつはいるか?あいつらはドイツしか目がない。フランスでもなくドイツなんだ。」
「ドイツを見てみろ。あと50年もしたら全員カーリーヘアーに褐色肌だ、数に圧倒されて既に言論さえ統制されている。」
恐らく、こんなことをドイツで発言すれば罰金、日本でもヘイトだなんだと騒がれるんでしょうが、言ってることには同意せざるを得ない部分も多々。
4. 子供に金を使え
日本の人口が減少していることを話すと、人口を増やすのは簡単だとすぐに反論。
「政府は子供に金を使わねばいけない。」
「子供1人目には補助金、2人目にはもっと多い金、3人目には土地付きの家、国の繁栄のためなんだから当たり前だろう。」
日本では3人目で表彰?とかいうアイデアがありましたが、次元が違います。子供にかかる医療費、教育費は全て無料。
この国では子供にお金がかかる、という概念は通用しなさそうです。前提に、教育費や医療費などを親が負担するほどお金はない、という前提があるのも事実かもしれません。
5. ベジタリアンにはキャベツ
ベラルーシを始め東欧諸国ではとにかく肉料理が豊富。
ベラルーシではベジタリアンという概念はまだほとんどありません。
日本も旅行者がベジタリアンフードなかなか見つからないって困ってるの問題になってる、という話をしたところ
「キャベツでも食わせとけ」
6. エンジニア
このベラルーシ人、旧ソ連時代には建築業として、その後アフリカ諸国で仕事をした後現在はドライバーとして働いています。
そんな彼の愛車は25年もののトヨタの車。
一見ポンコツなのですが、「25年間まともに壊れたことはない。」「日本のクオリティは最高だ。」といっていました。
確かに全てがマニュアルの車なので、機械的に壊れない限り使えるので、そういう意味ではかなり丈夫そう。
「4~5年ですぐ壊れる中国車や韓国車は金を稼ぐために作っている。日本のエンジニアは本当に技術を追求している。最高だ。」
とのこと。
とは言っても、今の日本の製造業は残念ながらそこまでハイクオリティとも言えず、結構壊れるし、リコールもあるし、やはり技術力の低下は間違いないんだろうなぁ、というのが正直なところ。
7. 宗教に支配されるな
旧ソ連時代は宗教は弾圧のもと。
現在のベラルーシではローマ・カトリック教会やロシア正教、ユダヤ教など様々な教会がありますが、そのベラルーシ人は無宗教。
「宗教は戦争をうみ、人を殺す。聖書にはなんと書いてある?人を殺すな、と書いてある。」
「ナポレオンはキリスト教徒ではなかったのか?」
ちなみにベラルーシ西部の町はナポレオンに侵略された「ベレジナの戦い」という歴史があり、その際住民がナポレオン側と反対側にくっきり分かれたんだとか。
この戦いで多くのベラルーシ人が犠牲になり、さらにこの地域の分断によりその後のロシア帝国の支配下に戻った際には色々と問題が多発したんだそう。
日本はクリスマスを祝い、結婚式で教会に行き、葬式は神社でやるよ、と言ったら
「宗教を利用するのはいいことだ。決して宗教に支配されるな。」とのお言葉。
8. 人生何があるかわからない
旧ソ連を生き、その後の激動の時代を経験してきた彼。
まさに人生も波乱万丈でした。軍に遣え(徴兵?)、さらには建築業界で働くこと30年。
ソ連の崩壊とともに仕事もなくなり、気づけばナイジェリアやアルゼンチンの会社で働くことも。
それでも今は子供3人いて本当に幸せなんだとか。
「10年先のことなんか誰がわかるもんか。」
9. 金は目的じゃない
「金は人を殺す。」
「金はユダヤ人が作り上げた邪悪なものだ。」(これは多分偏見、というか嘘。)
「アメリカを見ろ。金に支配されて、金のために生きている。」
もうお気づきだと思うが、基本アメリカは嫌い。
「金がなくたって、政府から家を貰い、土地を貰い、家の近くで仕事をし、週末は子供とハンティングに行く。こんな幸せな生活はアメリカじゃできない。」
確かに、これは社会主義国家のいい一面として認めざるを得ないんだろうな、と実感。
ベラルーシ政府は超ロシア寄り(というかソ連寄り)。ロシアと再度連邦制を復活し、ロシア・ベラルーシ連邦社会主義共和国を作るのがヨーロッパ最後の独裁者と言われるルカシェンコ大統領の目論見。
そしてそんな立場を利用してか、ロシアにすり寄ってみてはEUを慌てさせ、ロシアとの関係が悪化した際にはEUに近づきロシアを慌てさせ、と絶妙なバランスを保ちながら融資や外貨を獲得しているのも事実。
よって最近までEUやアメリカの経済制裁を長いこと受け続けてきたものの、ベラルーシの街を見てもその気配は全く感じさせません。
社会主義国家の理想面と課題が見えた気がしました。
10. 医療費・教育は無料
「国民は国を守るために働いて生きている。国民を健康に保つのは政府の義務で、次の世代を担う若者を育てるのも国の義務。」
「従兄弟がアメリカで入院して5000ドルも一晩で請求された。こんな馬鹿なことがあるのか。ベラルーシならタダだ。」
確かに、医療費や教育を無料にするというのはとてもいいアイデア。現在は大学はほとんど無料(医学部等一部学部は一部負担)なんだとか。
財源の問題は多くありますが、確かにこれは目指すべき姿かもしれません。
最後に
いかがでしたか?色々賛否両論激しくあることは承知で、あえて旧ソ連時代を生きたベラルーシ人の言葉を紹介しました。
ちなみに、現在のベラルーシでは資本原理がしっかりと導入されており、市場はほとんど西側諸国と変わりありません。ただ、国営企業は非常に多く、確かに無駄が多いと感じることも多々。
例えば地下鉄。旧JRとまさに同じ構図で、切符はいちいち人が販売し、駅には過剰なまでの駅員配置がされていて明らかにみんな暇そう。
博物館では5人程度しかいない見学者に対して数百人規模でキュレーターが座っていたり、朝から夜まで365日開館していたり。そして例外なく暇なのでみんなスマホをいじりつつぼーっとしてるだけ。
国営企業の職員からは全く覇気が感じられませんでした。
そういう意味で、今回は社会主義国家のいい面悪い面を色々と見ることができたいい機会でした。
一つ言えるのは、日本の共産党や社民党など、いわゆる「左寄り」とされる政党とは全く異なるということ。
正直こういう政党のイメージから共産主義や社会主義の変な固定概念を持っていましたが、実際の旧ソ連の生き残りともいわれるベラルーシとは全く異なり、イメージが根底から覆されたのも事実。
非常に問題が多い国であることは事実ではありますが、それでも学べるところは多い国だと思ったのが正直な感想です。
コメントを残す