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高円寺の人気天ぷら専門店・天すけ店主に聞く

ランチタイム時はいつも行列が絶えない屈指の人気天ぷら専門店「天すけ」。美味しい天ぷらをリーズナブルに食べられる、玉子天ぷら注文時には店主・栗原延幸さんのユニークなパフォーマンスを楽しめるなどといった理由から、日本各地からだけでなく、今では多くの外国人観光客もこちらを目的地として高円寺にやってくるそうです。今回は、そんなあれこれを仕掛ける栗原さんを訪ねてインタビューを実施。杉並でも圧倒的な人気と知名度を誇るこの店の魅力は何なのか、探ってきました。

玉子ランチ(1,300円)

阿佐ヶ谷生まれ、天ぷらは大衆育ち

―本日はお忙しいところありがとうございます。早速ですが、まず栗原さんご自身のことからお聞かせいただきたいと思います。杉並が地元だそうですね。

栗原:生まれは阿佐谷南です。まだ中央線も高架になっていない頃です。高円寺駅と阿佐ケ谷駅の間の線路沿い、今、杉並学院がありますよね。その近くに実家があります。学校は杉並第六小学校、阿佐ヶ谷中学校を出ています。

―もう本当にこのあたりですね(笑)。

栗原:そうですね。その頃はまだ自然も多く残っていて、土手になっているところを駆け回ったりしていましたよ。

―天ぷらの道に進もうと決めたきっかけは何だったのでしょうか?

栗原:実家が神保町・九段下界隈で魚屋をやっていたのですが、その近くに「いもや」さんという天ぷら屋さんがあるんです。

―あ、知っています。今もあの辺にありますよね。

栗原:ええ。子供の頃にそこを見ていると、いつもたくさんの人が並んでいたんです。それで、天ぷら屋さんってすごいなと思っていました。学校を出てから飲食の道に入っていろいろやったんですけれども、そういう記憶もあって天ぷら専門店に落ち着きました。

―どこでどのような修行時代を過ごされたのでしょうか?

栗原:もともと“大衆育ち”です。新宿にある「つな八」さんはご存知ですか?

―はい。

栗原:「つな八」さんは新宿系と渋谷系とふたつに分かれていまして、私は渋谷系の数店で修業させていただきました。それが天ぷら専門店の始まりということです。最後は渋谷109に入っていた店の店長まで務めました。

—なるほど。まずは最初の店で店長さんを任されるようになったのですね。

栗原:そうです。そしてその後に、銀座の「天國(てんくに)」さんに移りました。

—こちらも老舗の名店ですよね。そのころの様子を少し教えてください。

栗原:天ぷらは「揚げかた」と「わき鍋」というふうに役割が分かれています。それぞれ鍋の右と左に分かれまして。「揚げかた」というのは、天種に衣をつけて鍋に軽く投入していく仕事です。「わき鍋」はその隣で、天ぷらを裏返したり揚がり加減を見極めたりしながら、お客様に提供する仕事です。「わき鍋」を経験してからでないと「揚げかた」にはなれないんですが、そういう下働きを経験していました。

—そうして専門性を段階的に学んでいくのですね。修行の期間はどれくらいだったのでしょうか?

栗原:「つな八」さんと合わせたら10年くらいでしょうか。その前も飲食の経験がありますけれども、専門店としてはそれくらいです。

—そして満を持して、この「天すけ」をオープンされたわけですね。

栗原:はい。店のオープンは1987年6月20日、36歳のときです。

—店名の由来は何でしょうか?

栗原:天ぷら屋は「天國」さんのように、頭に「天」をつける店が多いんですよ。「天一」さんとか「天政」さんもそうだし、いろいろありますよね。私もそれに倣いつつ、でも街の定食屋さんのような気軽に天ぷらを楽しめる専門店ということをコンセプトにしていましたから、「すけ」という気軽な感じのする言葉を選びました。ひらがなにすると、さらに気軽な印象があるでしょう。

—たしかにそうですね。可愛らしい印象も受けます。それで出店場所は高円寺を選んだわけですが、これはやはり地の利がある、などといった理由からでしょうか?

栗原:いや、それがたまたまなのです。いろいろ物件を探して東京じゅうを歩いて回っていたんですけれども、まだバブルの終わり頃でしたからどこも高かったんです。そうして地元に帰ってきてみたら、ちょうどこの場所が空いていました。すぐそばに流行っているとんかつ屋さんやラーメン屋さんがあって、どちらも伺ったことがあったのでお値段も味も知っていましたし、挟まれる感じでちょうど良さそうでした。大衆的な価格設定でやりたいという自分の思いとも合いそうだなということで、すぐに決めてしまいました。

—場所を見つけてからスムーズに決められたのですね。

栗原:やはり予算の問題が大きいですけれどね。でもここに出店してよかったですよ。高円寺はとても人情味がある街ですし、店のコンセプトともよく合っていると感じています。

—スタッフ構成はどんな感じなのでしょうか?

栗原:子供が三人いて、全員男なのですが、みな手伝ってくれています。

—おお、純然たる家族経営なのですね。

栗原:そうですね、息子たちも杉六、阿佐中出身です。

玉子の殻投げパフォーマンスの誕生

—いいですね(笑)。では続いてメニューについて教えてください。例えばネットでブロッコリーの天ぷらが珍しい、美味しいといった感想が書かれているのを見かけましたが、他の天ぷら屋さんにはないこうしたメニューも豊富に扱っていますよね。

栗原:天ぷらは、実は定番以外のものでも自由に楽しんでいただけるものなんじゃないかと思っています。えのきチーズやあん肝豆腐といったちょっと珍しいオリジナルメニューもご用意しています。

—仕入れの工夫などはありますか?

栗原:やはり、なるべく高くならないように、というのを基本に置いていますね。先ほど申し上げたように実家が魚屋で、今は私の弟が継いでいるのですが、そういうつながりから仕入れたりしています。

—なるほど、それは大きいですね。

栗原:そうですね。店はもうないのですが、神保町・九段下エリアを車で回っています。

—そういうルートで良質で安価なものが入手できるのですね。

栗原:はい。

—そして、ダントツ人気の玉子ランチ。やはりこれを始められたきっかけというのをお聞きしたいです。

栗原:玉子の天ぷらはオープンしたときから単品で始めていました。揚げ玉子ご飯を一杯飲んだあとの〆として始めて、だんだん人気になってきた感じです。

—なるほど。

栗原:天ぷら屋って、だいたい飲んだあとの〆はかき揚げで、それを丼にしたり天茶漬けにしたりして食べるのが常です。そんな中、他になにか手軽に〆のご飯にできるものはないかと揚げ玉子にたどり着いたのですが、最初は馴染みがなかったからか、全然出ませんでした。

—たしかに他の店では見ませんしね。難しいっていうのもありますよね。

栗原:まさにそうで、まず、お客様は何だろうと思いますよね。質問してくれる方はまだいいんですが、何も聞かないでただ見過ごしちゃう方がほとんど。でも店を軌道に乗せるためにも、何かをヒットさせたかったんです。いろいろ試行錯誤して、メニューもたくさん作って季節のものをやったりしてきたわけですが、そんな中でこの玉子をヒットさせてみたいなと思ったのですね。で、馴染みがないところでヒットさせるにはどうしたらいいか考えて、今みたいなパフォーマンスをやって人の目をひくようにしたんです。そうしたらテレビでも紹介されるようになったので、出るたびに新しい動きを考えて取り入れてきました。

—ちょっとずつ進化してきたのですね(笑)。

栗原:で、隣の方が食べていると、「こっちも玉子ください」というふうになってきて。

—今のパフォーマンスは何だ? もう一回見てみたいぞ、となるのかもしれませんね。それで、玉子天ぷらがお昼の定食に組み込まれてきたのはいつごろですか?

栗原:高円寺に「ヴァル研究所」さんという「駅すぱあと」などで有名なITの会社があって、そこで働いている方たちがランチタイムにたくさん来てくれていました。もう、社食じゃないかと思うくらいに。それで、玉子を必ず追加してくれる役職の方があるとき「玉子を昼の定食にしてメニューに入れちゃうほうがいいんじゃない?」と提案してくれたんですよ。それはいいなと思って、少し考えて玉子ランチというネーミングでどうでしょう、となりました。ちょうど、たまごっちがブームでした(笑)。

—あ、そういうダジャレ的な側面もあるんですね(笑)。とすると1997〜98年頃でしょうか。お店がオープンして10年くらいの頃ですね。

栗原:そうです。社長もよく来てくださって、とても気に入ってくれて。ありがたかったですよ。

—そしてパフォーマンスもランチに登場するようになった。

栗原:まあ、今ほど大胆じゃないですけれどね。今はだんだんパフォーマンスを大きくしていって、この空間全体、壁も目いっぱい使っています。

—玉子の殻が壁をポンポンッとつたって消えていきます(笑)。軌道を描いて。

栗原:そう、ふたつの壁にぶつかるアクションを「ツークッション」と呼んでいます(笑)。ただ、カウンターの座る場所によって「ツークッション」が見えるお客様とそうでないお客様がいますので、見えない場合は申し訳ないので玉子を2個いっぺんに割って別のアクションを見ていただくなどしています。

—エンターテイナーですね(笑)。そして最後に、歌舞伎の見得を切るような動きがあります。

栗原:そうですね、外国人のお客様も多いですから、日本の代表的な文化をお見せしたいなと(笑)。

—とすると、最初は外国人観光客向けに始めたのですか?

栗原:いや、これも最初はテレビの取材です。ハリセンボンさんが高円寺を紹介するといった企画だったので、何か面白おかしくやってみようと思って、歌舞伎の見得を切ってみました。そうしたらそれが大ウケしまして。

—おお。そうだったのですか。

栗原:それから実際に芝居を観に行くようになりました。やっぱり市川海老蔵さんはすごかったですよ。幕がバーっと降りきるまでずっと、「にらみ」というんですか、決め顔のままでしたね。そういうのを観て、鏡に向かって練習してきました。

—あのパフォーマンスのためにそこまでしているんですか(笑)! それはすごいなあ。

栗原:このカウンターをひとつの舞台、ステージだと思って、お客様に五感で楽しんでいただきたいんです。まず天ぷらを揚げている音。それからゴマの香り。そしてもちろん味。食感。最後に視覚ですが、あまり訴えるものはないんですよね。天ぷら屋は静かな動きですから。そこで、こうしたパフォーマンスをしてみようと思いついたわけです。

外国人にも開かれた店へ

—なるほど。そうしたパフォーマンスがお客を呼び込むようなことにつながっていると思いますが、でもそれは直接的な要因ではないですよね。

栗原:やはり最初はお値段ですよね。「てんや」さんみたいに手軽にワンコインで食べられる定食屋さんとしてスタートしたので、お客様がどんどんリピーターになってくれたんです。そのリピーターが増え始めた頃からでしょうか、週末には必ず行列ができるようになりました。その方たちが大人になって、その方たちの子供も来るようになって、というふうにもなりました。もう30年経ちますから、三代続けて来てくださる方もいらっしゃいます。長くやっていて良かったなあと思いますよ。

—そうした人気を維持するにもご苦労が絶えないだろうとお察しします。

栗原:カウンターのこちら側でしっかり仕事をしていないと、すぐにバレてしまいます。たとえお客様は何も言葉を発さなくても、ちゃんと見てわかっている。だからビシっと接して、気持ち良く召し上がっていただく。基本的なことですよ。そして料理を提供しているあいだは何もしゃべらなくても、最後には二言三言くらい声をおかけする。

—気持ち良く召し上がっていただくというのをお聞きして、天すけを紹介しているWEBサイトの記事の中で、栗原さんが「揚げ玉子ご飯は/黄身と笑顔がこぼれます」とおっしゃっていたのを思い出しました。

栗原:そうですね(笑)。さっきも言ったとおりお客様は何も言わなくても、特に若い方なんてね、本当に頬張った瞬間に「にこっ」と笑みがこぼれるんですよ。そういう、すごく幸せな感じで食べてくださる姿を見ると、この仕事をしていて良かったなと思いますよ。

—何と言ってもここでしか食べられないですからね。

栗原:ええ、生卵を全卵で天ぷらにしているところはあまりないですからね。

—まあ、元祖ですよね。

栗原:そうですね、元祖だと思います。それプラスで、一連のパフォーマンス。当然、そんなことを合わせてやってるところとなるとウチくらいですから、是非いらしていただいて楽しんでいただきたいですね。日本のお客様だけでなく、特に外国の方には喜ばれますしね。

—そうそう、外国人観光客が並んでいるのもよく見かけます。高円寺自体でも多くなってきていますが、増え始めたのはいつ頃からですか?

栗原:前からちょこちょこといらしていますが、最近すごく増えていますよね。それで、そういう方たちはやっぱりちゃんと調べてから来ています。いちど来た方がブログに書いているのを見て、とか。それから、イギリス系の評判の良いメディア『Time Out』が以前このあたりのマップを作って、そこにウチも入れていただいたこともありました。

—我々のプロジェクトで『Time Out』とコラボして作らせていただいたものですね。ありがとうございます。

栗原:『Time Out』の場合ですと、イギリスだけではなくニュージーランドやオーストラリアの方もそれを見て来てくださっているように思います。アメリカや他のヨーロッパの方は、またちょっと違う感じですね。東南アジアや韓国の方の多くもインターネットで見て、来てくださっていますね。

—本当にワールドワイドですね。“tensuke koenji”と検索してみても、英語のページで結構紹介されているなという印象を受けます。

栗原:おかげさまで。そういう方たちは雨だろうが何だろうが必ず待ってくれるので、行列ができている中に何組かいらっしゃるんですね。

—そうですよね。本当にここは杉並を海外にアピールできるトップクラスの観光資源です。

栗原:ありがとうございます。三男と私は英会話のレッスンを受けたりもしています。やっぱり一言でもわかる言葉でやりとりできるとすごく緊密になるんですよね。

—そこまで努力されているとは。

栗原:今は韓国のお客様が多いので、私はハングルも勉強し始めました。お待たせいたしました、いらっしゃいませといった言葉やメニューに関する単語くらいはわかっておきたいなと思いまして。中国語も、単語を少しずつ。このように英語だけではないその国々の言葉もちょっと話せると、もっとお客様との距離が近くなりますからね。

—いやはや、すごいですね。そうすると、「ここの店員は我々の言葉を理解しているぞ」ということも含めてブログやSNSなどで紹介されますものね。美味しいだけでなく、話が通じるから頼みやすいぞ、と。

栗原:やはりオリンピックに向けていろいろ盛り上がっていますし、受け入れる側も万全にしておかないと。

手段であり目的であるパフォーマンス

—お客さんの層としては、地元の方とそうした外国人含めた外から来られる方と、だいたい割合としてはどれくらいですか?

栗原:うーん、やはり外から来る方のほうが断然多いと思いますよ。逆に、このエリアで働いていてここでランチを摂ろうと思うと、長くは待てないですからね。

—確かにそうですよね…。

栗原:たまに暇なときもあるんですよ。そういうとき常連の方などがパッと入ってきてくれて、久しぶりに来たよ、いやいやいつもご迷惑をおかけしていて、なんてやりとりすることもあります。地元で食べたいと思う方はそういう形で食べに来ていただいていますね。

—行列の長さは雨の日でも影響しないそうですが。

栗原:本当に申し訳ないですが、皆さんちゃんと待ってくださいますよね。ありがたいです。

—ほとんどのお客が玉子ランチですか。

栗原:ほかの定食もありますけれど、まあ、玉子ランチが出ますね。

—そのオーダーひとつひとつに対して、パフォーマンスもやるわけですよね。

栗原:もちろんやります。おひとりの方でも4名様でも…。ただ、以前テレビの取材でも、「これだけ並ぶし混んでいるし、そういうことをいちいちやって大変じゃないですか」と言う方もいましたけれど、一方で「いや違うよ、それをやっているからお客さんが並んでいるんだよ」とおっしゃる方もいました。パフォーマンスをやるのが普通になっていましたから、そうした対照的な言葉を受け止めて、改めてしっかりやらなきゃなと思いましたよ。

—なるほど。パフォーマンス目的に並んでいるお客さんもいるだろうということに気付いた方がいらしたのですね。

栗原:するどいですよね。

—そうして取材が入ることも本当に多いでしょうし、普通のお客さんとして有名な方が来たりすることもあると思いますが。

栗原:有名なグルメレポーターの方とか、本当にさまざまなお客様が来てくださいます。そうすると自分自身も磨かれていきますよね。最初は取材を受けるときも緊張して全然しゃべれなかったですからね。

—普通そうですよね。話をするのが仕事じゃないですから。

栗原:でも慣れもありますしね。一応、自分の出た番組を録画して後で見直したりして、次に備えたりしようと思ってやっています。だんだんしゃべれるようにはなってきたかな。

—そこまでされているんだ(笑)。歌舞伎のポーズと同じですね。

好きなことを大切に現役を続ける

—独自性の高いメニュー、ユーモア溢れるパフォーマンス、財布に優しい価格設定、そして外国人観光客まで対応するホスピタリティ。そうした要素が相まってワンアンドオンリーの「天すけ」ができているのだなと、これまでお話を伺っていて感じました。そんなお店の今後について、考えていらっしゃることは何かありますか?

栗原:天ぷらって自分の目の行き届くこれくらいの規模がちょうど良いんです。揚げたてを食べていただくというのが一番の醍醐味なので、やはり自分の目の届く範囲にしておきたい。テーブルを増やすとかお店を大きくしようとか思っていません。

—店舗を増やしていくことなども今まで考えたことはないですか?

栗原:まあ、私ももう年なんで、二代目にバトン渡したらわからないけれど。今までもこれからも、一生懸命天ぷらを揚げるのが私の天職です。

—かっこいいなあ。でも、年だなんて。36歳のときに店を始められてもう30年だから…。

栗原:今、66です。

—すごくお若く見えます。お顔もつやつやして。何か秘訣というか、気をつけていることなどはありますか?

栗原:健康面ですか? まず食後は30分くらいウォーキングするようにしています。できれば2回したいんですけれど、1回は必ずしていますね。馬橋公園のところをグルッと回って30分くらい。あと精神的な気分転換で、カラオケに行きますね。一人で近くのカラオケ店に行って、ランキングバトルとかやっています。なかなか3位までに入れないんですけれどね(笑)。歌は必ず新しい曲を覚えながらやっています。

—へー。面白い方向に話が進みましたが(笑)、そこで今の歌を歌われるんですか?

栗原:ええ、演歌もありますけれども。今の歌と言っても現代の若者の歌はダメですよ。自分がもうちょっと若かった時代の歌ですね。

—ちなみに十八番は?

栗原:今得意なのは、DEENというグループの「このまま君だけを奪い去りたい」。あれは点数行きますよ(笑)。

—それ、アラフォー世代のヒット曲ですね(笑)。

栗原:あと、たまに飲みに行って歌うときもあります。そういうときは、やはり同年代の来生たかおさんや五木ひろしさんの歌が、気持ちが入りますね。

—(笑)。仕事帰りに行かれるんですか?

栗原:一人カラオケは休憩時間です。ランチの時間が終わって1時間歌って、準備して、それで夜まで営業です。仕事の後はお酒を飲みます。大好物です。

—お仕事が終わるのは?

栗原:今は息子に任せていますけれど、最終的には23時半とか24時とかですかね。

—ああ、やっぱりそんなに遅いんですね。

栗原:営業時間が22時までですから。

—閉店までは必ずいらっしゃるんですね。

栗原:はい、私は揚げきるまではね。お客様がお帰りになった後に帰ります。

—大変ですね。

栗原:飲食店というのは1日フルですから。仕込みから何からね。フルに1日働かなきゃならないです。

—定休日も1日だけですよね。それも休んだ気がしないだろうし。

栗原:まあ、慣れですよ。でも年に2、3回は1泊旅行していますよ。ひとりで気楽に、沖縄でも北海道でもどこでも1泊で行きます。今年の3月には函館の朝市に行って、海鮮丼食べてきました。

—常に自分のお店にフィードバックさせるとか、やはりそういうのを意識されていますか?

栗原:必ず食べるところを決めて行きますね。こないだの夏休みは博多に行ったんですよ。福岡空港の横に、いつもすごい行列ができている「ひらお」さんという天ぷら屋さんがあって、そこに初めて行ってきました。福岡のお客様なんかが見えると、そこの話が出るんです。だからずっと、一回は行かなくちゃいけないなと思っていて。

—今なお研究して味を磨くためにあちこち訪れているんですね。

栗原:まあ、好きなんですね。旅行も好きだし、そういうところに行くのも好きだし。定休日も、必ずどこか話題になっているお店に食べに行くようにしています。店を続けているうちは、やっていきたいですね。

常連客からプレゼントされたという栗原さんのイラスト。

天すけ
住所 杉並区高円寺北3-22-7
電話 03-3223-8505
営業時間 12:00~14:00 18:00~22:00
定休日 月曜(祝日の場合は翌日の火曜)
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