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いまを重ね、僕らは次の輝きへ。――ラブライブ!サンシャイン!! 2期12話 感想

2017-12-26 19:30:00 | ラブライブ!サンシャ...

#12 光の海



なにかに迷ったとき、それをはじめた「原点」に立ち返ることはとても大切な事です。なにかを成し遂げたい。そのために一生懸命走り続けていると、たくさんの世界が見えるようになりますが、同時に進めば進むほど「原点」との距離は遠くなっていく。


だからこそ、ここまでやってきたんだと思ったときほど「原点」を見つめ直すことが重要なのかもしれません。なにかを成し遂げたいと思ったのは何故なのか。そのときの気持ちを再確認するために。


「輝きたい!」――ひとりの少女の願いから、産声を上げた「ラブライブ!サンシャイン!!」という物語。高海千歌は、普通のままでいることが怖くて、未来に不安を抱えていたどこにでもいる少女でした。でもあの日、彼女にとって運命とも呼べる「輝き」に出逢って、彼女の青春は動き出します。


彼女たちがどこへ走り出そうとも、その「原点」は変わらない。上手く行くことばかりではなかった。辛い現実にも直面し、叶わなかった願いもある。けれど、それ以上に楽しかった。大切なこともたくさん知った。その活動を通して「明日」に向かっていく勇気ももらった。だから、彼女たちはここまで走ってきたことを笑顔で肯定できる。「スクールアイドル」という青春へ飛び込んでよかったって心から思える。



きっと、「ラブライブ!」という大会は、いえ、「ラブライブ!」という物語は、そんな少女たちの精一杯の青春を受け止めてくれる場なのです。μ'sやAqoursだけではなく、A-RISEやSaintSnowだけでもない。彼女たちと同じ時代を生きるものたちや、これから「羽根」を受け取るものたちをも含めて、ただの一度しかない「自分たちにしか生み出せない」ありったけの青春を映し出すための手段として、「ラブライブ!」という物語がそこにある。



これは、「憧れ」からはじまり、ついに「憧れ」の舞台へたどり着いた少女たちの物語。輝きに焦がれた9人の少女たちは、そのステージでいったいどんな自分たちを映し出すのでしょうか。





勝ちたい...?









東京へとやってきた彼女たちが一番最初に訪れた場所は神田明神でした。9人全員が明日に控えるアキバドームのことについて祈りを捧げますが、9人ともそれぞれ「自分の言葉」で願いを口にします。


言葉は違くても願うことは同じ。それは、同じく決勝前日にあの場所で祈りを捧げたμ'sと共通するものでありながら、その言葉を誰ひとりとして口にしなかったμ'sと、みんながひとりずつ想いを語るAqoursは対照的ですよね。


胸の中にある「心のメロディ」を信条にしていたμ'sと、「ユメを語る言葉から ユメを語る歌が生まれる」と言葉のチカラを歌にしてきたAqours。2つのグループは、ともに重なるところもありながら、その在り方はやはり違うのだということがここにも表れているのかもしれません。






Aqoursの応援をするために東京へとやってきた鹿角聖良も、「初めて会ったとき なんて弱々しいんだろうって思ってました でも今のみなさんを見て思います なんて頼もしいんだろうって」と語ります。


それもそのはず。初めてこの場所で彼女たちが出逢ったとき、まだ本当の意味でAqoursは始まっていなかった。μ'sに「憧れ」、μ'sのようになりたいと誰かの物語をなぞっていたあの頃の彼女たちは、自分たちの物語を本当の意味で生み出せていない、文字どおり「0」を象徴する存在でした。


確かに「憧れ」という感情はとても大切なものです。「あの人のようになりたい」という憧憬の想いが、前へと進む原動力になってくれる。μ'sだってそうだった。A-RISEという存在が、スクールアイドルの可能性を示し、μ’sを結成する動機を作った。いつだって憧れることから始まるのです。



でも、自分は自分以外の何者でもなかった。その誰かになることも出来なければ、その誰かのようになろうとすることにも意味がない。そのことに、彼女たちは気付きます。だからこそ、「わたしでいいんですよね」という答えを高海千歌は出すことが出来た。


誰かと比べることなく、自分たちは自分たちの想いのまま進めばいい。その答えを信じてここまで走ってこられた。自分たちらしさをきちんと獲得してきた彼女たちだから、いまはとても頼もしく思える。







"わたしたち ラブライブ!に優勝して

浦の星の名を残して それでいいんだよね"


しかし、かつて鹿角聖良に向けて問いかけた「勝ちたいですか...?」という質問が、ラブライブ!優勝を掲げる千歌たちの元に戻ってくることになります。そして、「誰のためのラブライブ!ですか...?」とも。


ラブライブ!に優勝したいと想っているのは自分たちだけではない。みんながそれぞれの物語を紡いで、この舞台までやってきた。そして、優勝するということは、誰かに勝つということ。勝者がいれば、そこにはやはり敗者がいるのです。


その現実から目を背けないのは彼女たちが負けを経験したことがあるからかもしれません。もちろん、負けてもなお輝けるステージがあることを彼女たちはこれまでの活動を通して知ってきた。Saint Aqours Snowの11人によって、あの日生み出された「輝き」はまさにそれを象徴するものでしょう。



それでも、優勝したいと思うのは誰のため...?浦の星のため...?もちろん、それもとても大切なこと。でも、それ以上に自分たちはなにがしたくてここまできたのだろう...?


その疑問ときちんと向き合うために、高海千歌はメンバーひとりひとりに「勝ちたい...?」という問いを投げかけていました。




それぞれの原点




ピアノ、読書、スクールアイドル、高い所、海、空、願い、輝きに出逢ったはじまりの場所。本番前に自分を見つめ直すための時間を取ろうと自由行動をすることになった9人は、それぞれが自分の「原点」に立ち返っていました。





"いまだから確かめたいことや 気持ちもあるんだけどね"


音ノ木坂は、かつてピアノが弾けなくなった梨子が距離を置いた場所です。音楽の才能を期待されて音ノ木坂に入学した彼女は、そのプレッシャーと闘い続けてきた。期待に応えるために練習をすればするほど、自分の音がわからなくなっていく。


かつての彼女は音ノ木坂という枠に囚われていました。しかし、その枠を飛び出し、新しい世界と高海千歌という新しい仲間に出逢うことで彼女は大切なことを思い出していく。


何のためにピアノを弾いているのか...?それは、期待に応えるためじゃなかった。ただ、自分が大好きだから、やりたいからピアノを弾く。それだけだった。それこそが自分の「原点」だった。



誰かのためではなく、「自分」のためでいい。その「気持ち」を取り戻せた桜内梨子だから、あの時、弾くことが出来なかった「海に還るもの」を弾くことが出来るようになった。


そして、それはたとえ音ノ木坂という場所であっても変わることはないのです。場所も枠も関係ない。その「気持ち」さえあればもう彼女は大好きなものを見失うことなく笑顔で向き合える。それを確かめることが出来た。






だからこそ、「勝ちたい」のです。ピアノから逃げてしまった彼女を救ってくれた千歌たちとの出逢いこそが彼女にとって何よりも奇跡だったから。


差し伸べられた手に触れたあの日の選択が間違ってなかったと胸を張ってそう思えるから。だから、みんなと走ってきたこの道で良かったのだと、証明するために勝ちたい。


かつて中途半端な気持ちでスクールアイドルをやることを躊躇っていた梨子。「スクールアイドルをやりたい!」。きちんと笑顔でピアノに向き合えた彼女が語るその言葉には彼女の心からの想いが詰まっているのです。




想いはひとつ




きっかけはみんな少しずつ違ったかもしれない。それでも、「勝ちたい」と想うその想いはみんなが同じでした。


浦の星のために勝たなければいけない。その想いは確かにある。でも、それ以上に「いまを全力で楽しみたい」。だから、優勝したい。誰かのためではなく、それぞれが自分自身の想いを叶えるために。



"だからいいんだよ いつもの千歌ちゃんで

未来のことに臆病にならなくて いいんだよ"


高海千歌の原点。はじまりのこの場所で「輝き」に出逢ったとき、彼女が感じた想い。それは、自分もやってみたい、輝きたい。それだけだった。他のことはなにひとつなくて、そこにあったのはただ自分の「やりたい」の気持ちだけでした。


それは他のみんなも同じです。千歌ちゃんと一緒になにかがしたい。外の世界への一歩を踏み出したい。宝物だった時間を取り戻したい。理由はそれぞれでも、全員が確かに自分の「やりたい」ことのためにスクールアイドルという道を選んだ。


それこそが彼女たちの「原点」です。誰かは関係ない。だから、未来のことや結果を恐れなくていい。他でもない自分たちがやりたいからやりたいことをやる。勝ちたいから、いまを全力で楽しむ。


自分たちの想いに従って進んでいく。あの日、海岸で出したその答えは間違っていなかった。それが、「勝ちたいですか...?」という問いに対する、千歌たちの答え。それが、彼女があの日出逢った「輝き」。







だから、もう大丈夫。自分の信じた道を迷うことなく進んでいける。「0」から「1」へ、「1」からその先へ自信を持って向かっていけるのです。


かつて、千歌は普通のままでいることを恐れていました。でも、普通のままでいいのです。「0」を「1」にして、一歩一歩進んできたから、「いま」がある。魔法は使えなくても、願うことはできる。空は飛べなくても一生懸命に走り出せる。そうやって、現実に立ち向かいながら、「いま」を重ねてきたからここまで来れたのだと、そう思えるから。


自分の想いに正直に動き出せば、世界は変わる。特別な力はなくても、走り出せば、まるで、雲の上にいるような舞台にだってたどり着ける。それを彼女たちは証明して見せた。


普通のままでも大丈夫。その想いは、1年前の高海千歌自身へのメッセージでもあったのです。





次の輝きへ






"新しい場所 探す時が来たよ 次の輝きへと 海を渡ろう"


「いま」の大切さを心に刻んだ彼女たちは、これから待ち受ける未来への想いを歌います。きっと「輝き」に終わりはないから。明日が終わらないように、空がどんなに遠くてもつながっているように、道がどこまでも続いているように、輝きはどこまでも広がっていく。


Aqoursがその活動を通して、見つけていく自分たちだけの最高の「輝き」。彼女たちがそこにどんな答えを見出すのか、それはまだわかりません。でも、その先にも、それぞれの未来、それぞれの「輝き」がある。決して、「輝き」は終わらないのです。







Aqoursにしか生み出せない「輝き」を象徴する青い羽根は、いま、広い世界へと飛んでいきました。そして、かつての高海千歌がそうであったように、その「輝き」に照らされた少女たちの物語がこの瞬間に「はじまり」を迎えるのでしょう。


羽根を受け取った少女たちが、今度は自分たちだけの羽根を飛ばしていく。先駆者たちがそうしてきたように、自分たちの想いを、スクールアイドルの可能性を、輝きを未来へとつなげていく。それこそがスクールアイドルを巣立っていく者たちが永遠に消えることなく未来へと残していける唯一のものだから。



あの日生まれた彼女たちの「物語」。その「物語」は、また新たな「物語」を生み出していくのです。


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