「龍造寺家文書」の「龍造寺家政申状土代」に裏書きされていた、国内現存最古とみられる南北朝時代の刀剣書「銘尽(龍造寺本)」=佐賀県立図書館所蔵

鎌倉時代に作られた、山城国の刀工国行の銘がある「太刀 朱銘 国行」(鍋島報效会所蔵)。佐賀藩二代藩主、鍋島光茂が所持していたと伝えられる。

 佐賀県立図書館が所蔵する県重要文化財「龍造寺家文書」から、国内現存最古とみられる南北朝時代の刀剣書「銘尽(めいづくし)(龍造寺本(りゅうぞうじぼん))」が発見された。九州産業大学基礎教育センターの吉原弘道准教授の研究で明らかになり、県が25日公表した。平安時代末から鎌倉時代ごろの刀工約280人が収録され、代表作や系図などが墨書で記されている。中世における刀剣書の成立過程や刀工の実像を探る貴重な資料となる。

 発見された刀剣書「銘尽(龍造寺本)」は、龍造寺家文書にある、訴状の下書きにあたる2通(各縦約33センチ、横約95センチ)の「龍造寺家政申状土代(もうしじょうどだい)」に裏書きされていた。

 南北朝時代の観応2(1351)年、九州の一大勢力だった足利直冬(ただふゆ)かその関係者が所持していた刀剣書を借用し、龍造寺家の惣領だった家政か周辺の人物が書き写したものと推定される。当時紙は貴重で、不要となった文書の裏を利用することは珍しくなかったという。

 これまで現存最古とされていたのは、江戸時代後期に発見された、応永30(1423)年書写の「銘尽(観智院(かんちいん)本)」(国重要文化財)。以後、約200年間、観智院本より古い刀剣書は発見されていなかった。龍造寺本の方が、刀工に関する情報などが古かったため、最古の刀剣書と考えられる。

 吉原氏は太宰府天満宮文化研究所の研究員として、日本刀の調査や保存に関わった刀剣書の専門家。10年ほど前、写真で龍造寺家文書を見た時、裏に書かれていた刀の名前を偶然、見つけた。全国の中世刀剣書を網羅的に調査し比較することで、内容が明らかになった。吉原氏は「南北朝時代、刀工の名鑑のようなものを地方の武士が見せてもらって写したという文化的な交流があったことが分かったのも貴重な発見」と語る。

 刀剣書は、県立博物館で26日から来年2月4日まで、記述のある刀工の銘がある刀剣とともに展示する。入場無料。