半径300メートルのIT:あなたのメールも“完コピ”される――JALすらハマった「ビジネスメール詐欺」の恐ろしさ (1/2)

偽メールにだまされ、3億8000万円ものお金を失ってしまった日本航空。まさに“企業版オレオレ詐欺”とも言うべきものですが、やりとりをほぼ“完コピ”したメールを見抜くのは、皆さんの想像をはるかに上回る難しさなのです。

» 2017年12月26日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]

 年の瀬の忙しいタイミングを見計らったのか、震え上がるような事件が起こりました。日本航空(JAL)が「偽メールにだまされ」、3億8000万円もの被害を受けたというニュースです。

 この問題は本当に深刻なもので、セキュリティ業界では「ついに日本でも起きたか」という受け止め方が一般的です。ついうっかりというレベルの話ではなく、「ダブルチェックなどを徹底している、日本航空ほどの企業ですらだまされてしまう」と受け止めるべきでしょう。この魔の手は、あなたのすぐ近くにまで来ているのです。

photo トレンドマイクロの調査では、2017年9月調査時点で13.4%の組織がビジネスメール詐欺を受診している

オレオレ詐欺の企業版? 「ビジネスメール詐欺」の恐ろしさとは

 今回のような事件の背景には、ビジネスの中でやりとりされるメールを使った「ビジネスメール詐欺」(BECとも呼ばれる)があります。ビジネスメール詐欺とは私たちがよく受け取るような「サングラス激安!」という単純なものではなく、あらかじめ企業のネットワーク内に侵入し、やりとりされるメールの内容や宛先を研究し尽くした上で、取引に関するメールがやりとりされた瞬間に送られる「詐欺メール」です。

 もちろん、文面はネイティブな日本語を使っている上に、内容によっては書き手のクセなどもきっちりコピーしてきます。特に今回のケースでは、メールアドレスも「本物とほぼ見分けがつかない状態だった」(JAL広報部)とのこと。忙しい時に、この“ほぼ完全コピー”の詐欺メールを“偽物”だと判断できるでしょうか? 正直に言って、私には自信がありません。

※JALへの取材をもとに、一部内容を変更いたしました。(12/26 13:40)

photo ビジネスメール詐欺のステップは、マルウェア感染などを通じ「企業のメールを盗み見る」ことから始まり、それを元に「なりすまし」が行われる(出典:トレンドマイクロ)
photo メールの本文は、盗み見た「本物」をベースにして作られるため、文面だけでなく文脈にもそった「なりすましメール」が送られる(出典:トレンドマイクロ)

 今回は取引において「振込先を変更する」ことがトリガーとなり、偽の口座情報にまんまとだまされてしまいました。NHKニュースによると、サインなども記されていたとのことです。その概略や具体的な手法は、まだ明らかになっていなかったものの、既に海外ではビジネスメール詐欺における被害が報告されており、遅かれ早かれ、日本でも甚大な被害が出るだろうと予期されていました。

 ビジネスメール詐欺は、これまでの迷惑メールとは比べものにならないレベルで、サイバーとも言い切れない直球の“詐欺”を行うものです。決して「だまされた人の注意力が足りないから起きる」わけではありません。先日取り上げた講演でも述べられていましたが、「事故を起こした人を責めない」ことが重要なのだと思います。

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