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「2018年に私たちが楽しみにしている一番の出来事はつみたてNISAのスタートだ」 2017年も残すところ、あと1週間足らずとなりました。来る18年、私たちが楽しみにしている一番の出来事が、積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)のスタートです。
積み立て投資する場合に年間40万円を上限として最長20年間、運用益や分配金に対する約20%の税金が非課税になるという画期的な内容です。金融庁の「国民の安定的な資産形成を実現しなくてはならない」という問題意識が制度発足の背景にあります。16年に導入が決まり、17年は準備期間として私自身も奔走した1年でした。
■つみたてNISAは長い目で日本のためになる
つみたてNISAは毎年、枠いっぱいの40万円を投資して20年間続けた場合、最大800万円までの元本に対する利益が非課税になります。例えば、運用して10万円の利益が出たとしましょう。通常は約20%が課税されるので、手元に残るのは8万円程度。これがつみたてNISAなら、まるまる10万円が手元に残るのです。
また、金融庁はつみたてNISAの対象として低コストの投資信託を選定しました。これまで業界で売れ筋だった毎月分配型や手数料が高い投信は、つみたてNISAの対象外です。長期投資に向かないと考えられる商品が排除されたことで、つみたてNISAを利用する人が安心して商品を選べる環境が整ったといえるでしょう。
これに対し、業界では「手数料が安く利益が出ない」など、様々な意見があります。しかしながら、私はこの制度の積極的な推進に貢献したいと考えています。長い目で見て日本のためになることだと信じているからです。
そもそも私は「資本市場を通じて社会に貢献する」ことを経営理念として自分の会社を創業しました。前回のコラム「伝えたい ワクワクして楽しい投資文化」でも述べましたが、投資とは未来を信じることです。夢を描く、未来を信じる、というプロセスが「投資文化」です。投資文化を日本に根付かせるチャンスとして、つみたてNISAにとても期待しています。
ところで、つみたてNISAが目指す長期投資は誰のためのものでしょう? 「長期投資って若い人のためのものでしょう」とよくいわれます。確かにつみたてNISAは、若年の資産形成層に長期投資を定着させ、投資へのポジティブなイメージを持ってもらうのが大きな狙いです。しかし、強調したいのは長期投資が必要なのは若年層に限った話ではないということです。
厚生労働省の16年のデータによれば、日本人の平均寿命は男性で80歳超、女性では87歳超です。今や女性の半数は90歳、男性の半数は84歳まで生きるようになりました。「人生100年時代」は現実のものになりつつあります。
「自分はそんなに長生きしないだろう」と思うかもしれませんが、人の寿命はわかりません。今60歳の人なら30~40年、70歳の人なら20~30年くらいは人生が続くかもしれないと考えておいたほうがいいでしょう。
そう考えると、まだまだ人生の先は長いのですから、お金を現預金にして抱え込むのはもったいないことです。持っている時間を生かし、長期投資を始めるのはごく自然なことではないでしょうか。つみたてNISAはその力強い手助けになってくれるはずです。
高齢の方の中には「資産をちょうど使い切って一生を終えたい」という人がいますが、寿命がわからない以上、これは不可能です。それに「自分の資産を使い切ろう」と思うと、長生きが怖くなってしまいます。
■18年は老いも若きも投資する「つみたて元年」に
つみたてNISAは「日本に住む20歳以上」の人なら誰でも利用できます。若い人はもちろん、例えば80歳からでも長期投資することができるのです。人生100年時代、何歳からでも投資デューできるのがつみたてNISAの素晴らしいところです。
また、払い出し制限がなくいつでも引き出せるのも利点です。税制メリットのある制度にはiDeCo(個人型確定拠出年金)もありますが、iDeCoは60歳以上の人は加入できません。また、60歳まで引き出せないことを考えると、対象者の広さや自由度の高さという点でつみたてNISAに軍配が上がるといえます。
つみたてNISAは途中売却が可能なので、リタイア世代が「お金を長期投資しながら必要な分を取り崩して使っていく」ということもできます。
18年は日本人にとって、現役世代もリタイア世代もこぞってつみたてNISAを利用する「つみたて元年」となることを願っています。皆さま、良いお年をお迎えください。
藤野英人
レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者。1966年生まれ。早稲田大学法学部卒。90年野村投資顧問(当時)に入社。ジャーディンフレミング投資顧問(当時)とゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。15年10月社長就任。明治大学非常勤講師なども務める。
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