早いもので、トランプ政権登場に始まった2017年は、瞬く間に過ぎてゆき、2018年の戌年に移ろうとしている。
2017年の世界は、トランプ政権発足によって、大きく変化した。周知のようにトランプ大統領は、就任早々、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)から脱退し、メキシコとの壁を築くと宣言し、中東移民の制限も行った。夏になると地球温暖化防止の新たな枠組みであるパリ協定から脱退し、秋になるとユネスコ(国連教育科学文化機関)からも脱退した。
そして冬になると、エルサレムをイスラエルの首都に認定し、イスラム社会は大騒動になった。その間、北朝鮮の核ミサイル問題を巡って金正恩政権との角逐はエスカレートし、東アジアは不安定化した。
こうしてみると、2017年は、トランプ大統領という「怪物」が暴れ回った一年だったと言える。
これに対し、2018年に最も注目すべきなのは、習近平主席率いる「巨竜」かもしれない。巨竜・中国は、アメリカと並ぶ「世界のもう一つの基軸」となるべく、前進を続けると見られるからだ。
習近平総書記は、2017年10月の第19回中国共産党大会と、翌11月のトランプ大統領訪中を成功させたことで、「ユーラシアの覇者」となる決意を新たにした。
なぜ「ユーラシアの覇者」かと言えば、習近平政権は発足当初の2012年、短期目標として、共産党創建100周年の2021年までに、「アジアの覇者」にならんとしていた。だが5年を経て、当初思い描いていたよりもスムーズに実現できそうな見通しがついた。
そこで今度は、中期目標として2035年までに、「ユーラシアの覇者」になろうとしている。習近平主席はこの時まで自ら政権を担う決意でいるように見受けられる最後は建国100周年までに「世界の覇者」を目指すのだが、まずは「ツキディデスの罠」を避けるためにも、アメリカを除く「ユーラシアの覇者」を目指そうということだ。
そのため、2018年は、「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)という習近平政権の外交スキームを使って、どんどん「攻め」に転じる年になるだろう。アメリカは秋の中間選挙で内向きになり、ロシアも春の大統領選挙で内向きになる。EUもBrexitやドイツの政局不安などで、やはり内向きだ。そんな中、中国は外交攻勢を強めるチャンスなのである。
習近平政権は、自信と余裕が生まれたことから、対日関係の改善にも乗り出した。換言すれば、過去一世紀半近くとは真逆の「中国が上で日本が下」という、新たな日中関係の構築を目指し始めたのだ。
12月1日には、北京に世界300近い政党幹部たちを一堂に集めて、「中国共産党と世界政党幹部対話会」を開いた。そこで習近平総書記は長い演説を行い、次の2点を主張した。
第一に、中国が主導する「一帯一路」によって、ユーラシア大陸に人類の運命共同体がもたらされるということだ。習総書記はこう述べた。
「2013年に、私は初めて人類は運命共同体であると提唱した。その時以降、嬉しいことに、中国と世界各国との友好的な提携を不断に開拓、発展させている。そして、人類は運命共同体であるという理念が、ますます多数の支持と賛同を得て、私の提唱したことが理念から行動へと移り行くさまを見ている。
私が提起した『一帯一路』はまさに、人類が運命共同体であるという理念を実践することなのだ。この4年来、『一帯一路』は、関係各国が共同で実現する発展の巨大な提携プラットフォームとなってきた。
細々とした支流も、集まれば大海に流れるのであり、点々たる星々も、集まれば銀河の輝きを見せるのだ。私は、おのおのが人類の運命共同体の理念を樹立し、計画を立ててそれを実践し、一歩一歩たゆまぬ努力を続ければ、人類の運命共同体の目標は、必ずや実現できるのだ」
もう一点は、中国はアメリカや前世紀のソ連と違って、他国に対して自国の制度の強要はしないということである。習総書記はこう述べた。
「中国共産党は、中国人民の幸福を謀る政党であり、人類を進歩させる事業に奮闘する政党である。中国共産党は世界最大の政党だが、大なる者は大なる者にふさわしい様子というものがある。
つまり中国共産党の行動の一切は、中国人民に幸福を謀るためであり、中華民族の復興を謀るためであり、人類の平和と発展を謀るためである。われわれは自分のやるべきことをうまくやれば、それはすなわち人類の運命共同体作りに貢献することなのだ。
われわれは外国のモデルを『輸入』しない。同時に、中国のモデルを『輸出』もしない。そして他国が中国のやり方を『コピー』することも求めない。
第一に、中国共産党は一貫して世界の平和と安寧に貢献する。第二に、一貫して世界共同体の発展に貢献する。第三に、世界の文明交流に貢献する」
習総書記は、このように非常に慎重な物言いで、中国に対する世界の警戒感を解こうとしたのだった。中国は恐い国ではないから、安心してついて来なさいというわけだ。