2017年12月25日

ビデオゲーム史における五大傑作について

色々な意見の違いは当然あれど、ある程度公平に考えれば「スペースインベーダー」「テトリス」「ストII」の三タイトルはおそらく確定する筈で、後は重視する軸によって「なんでそれを入れるんだ」「いやそれよりこっちの方がふさわしいだろ」「それが入るなら何故こっちが入らないんだ」という話になるのかなー、という風に考えています。

条件としては、

・そのゲーム単体でセールス的に大きな成功を収めている
・ゲーム業界、ないしゲームジャンルに多大な影響をもたらしている
・多数の追随ゲームが存在する
・ゲームシステム、ゲーム表現などで革新的な試みを成功させている

これくらいの条件で考えてみるとどうなるのかなー、と。

で、まず第一に「スペースインベーダー」が来ることはおそらく議論の余地がないと思うんです。セールス的には言うに及ばず、まだ「ゲームセンター」という業態が存在しなかった日本に多数の「インベーダーハウス」を出現させ、純正品・コピー品を合わせるとわずか1年半で50万台を売上げてみせた。STGというゲームジャンルどころか、日本におけるゲーム業界それ自体を作ってしまった。1978年、「スペースインベーダー」のコピーを作るところから始まった会社がどれだけあるか、というのは有名な話だと思います。少なくとも、日本のゲーム業界に大きな影響を与えたゲーム、という点で言えばぶっちぎりの一位ではないかと。(参照:https://storys.jp/story/24591)

ゲームシステム的にも、「攻撃してくる複数の敵を撃ち落とす」というのは後の様々なSTGジャンルの始祖となりましたし、直接の追随ゲームも「ギャラクシアン」「シェリフ」「ムーンクレスタ」などを始め有名作がゴロゴロあります。コピータイトルの多さも指摘不要で、「STGというジャンルはスペースインベーダーから始まった」と言ってしまっても特に問題はないんじゃないかと。


一方テトリスは。セールス的には、PC版の次に発売されたファミコン版が181万本、ゲームボーイ版が空前絶後の424万本という数字は言うに及ばず、定番ゲームとしてあらゆるプラットフォームでのセールスメーカーとなっております。ゲーセンでサラリーマンを大量捕獲した、という点でもスペースインベーダーに比肩しています。

ゲームシステム的には、「それまでは、解き方を見つければ基本的には終わり、という「消費物」だったパズルゲームを「完全リサイクル製品」に変えてしまった」という点で、パズルゲームというジャンルにおいて恐るべき革新をやってのけていると思います。手前味噌ですが以下記事でも以前書きました。(参照:http://mubou.seesaa.net/article/9919709.html)

「落ち物パズル」というジャンルをたった一作で定番ジャンルに変えてしまった点、「コラムス」や「ぷよぷよ」などの数知れない有名追随ゲームを生み出している点でも文句のつけようがありません。


ストIIはというと。セールス的には、アーケードでの販売台数は正確なところがちょっと分かりませんでしたが、SFC版の国内288万本、世界累計630万本という数字は、アーケードからの移植作であることを考えれば十分驚愕すべき数字です。(参照:Wikipedia)勿論、「ダッシュ」や「ターボ」などのマイナーチェンジ版を含めて、出す移植出す移植片っ端からキラータイトルになったところも今更指摘する必要がないところです。

ゲームシステム的には、「対戦格闘」というフォーマットがそれまでになかった訳ではないのですが、6ボタンを固定採用した点、上下ガードとそれに伴う駆け引きの存在、意図しないところで生み出されたとはいえコマンドキャンセルの存在など、諸要素ひっくるめての革新性には文句をつけられないところでしょう。ゲームジャンルとしても、ストII以降のゲーム業界の動向を考えれば、「対戦格闘というジャンルの直接の祖」と言ってしまってもそこまでは怒られなさそうです。追随者の多さはもはや言及不要でしょう。


と、ここまで考えると、少なくとも「スペースインベーダー」「テトリス」「ストII」の三作については、どんなアプローチをとってもちょっと外すことができなさそうだ、と言えると思います。公平に考えれば、「ビデオゲームにおける五大傑作」というテーマにおいて、この三作品をリストから除外することは出来ない、ということです。

勿論、ただ「傑作」「歴史作」と言うだけならゲーム業界には星の数程あるわけで、あとはどの軸を優先するか、どの軸を理由に排除するかという、軽く戦争が起きそうな話になります。論者の好みが入る余地も当然あるでしょう。

セールス的な成功は前提として、例えばFPSというジャンルに与えた影響を考えて「DOOM」が挙がっても、音ゲーというジャンルを作った「ビートマニア」が挙がっても、スクロールアクションの金字塔「スーパーマリオブラザーズ」が挙がっても、戦術級シミュレーションの大定番「大戦略」が挙がっても、それ程違和感はありません。

ただ、STG、対戦格闘、パズルゲームという3つのジャンルについて言えば、「ゲームジャンルを通した業界への影響」という点で上記3作品を上回ることが出来るかどうか、という視点がどうしても入ってしまう為、他のジャンルよりもややタイトルを挙げることが困難になるかも知れません。

私自身の意見を言えば。

歴史作という点で言えば、スペースインベーダー以上に「PONG」や「スペースウォー!」を挙げる人がいる可能性は高いでしょう。セールス的には、スペースウォー!はそもそも現在考えるような流通に載っていないので別枠として、PONGについては移植作を含めたセールスもかなりの規模です。ただ、色々資料を漁ってみると、少なくとも当時のアーケード販売台数は8000台~12000台くらいというところ、コピー製品を合わせても10万台に届かないかも知れない、という点では、スペースインベーダーなどには一歩を譲るかも知れません。(参照:Wikipedia)


RPGというジャンルではどうでしょうか?話をコンシューマーに限ってしまえば「ドラクエ」や「FF」あるいは「ポケモン」の名前も挙がるかも知れませんが、そもそもRPGというジャンルに与えた影響、ビデオゲーム外の始祖となるD&Dからの流れなどを考えれば、第一にあがりそうなのは「Wizardry」や「ウルティマ」「rogue」などのタイトルではないかと思います。

個人的には、特に「Wizardry」の名前は優先してあげたいところで、初代のappleII版が24,000本という数字は、移植版も含めて考えればセールス的には十分成功と言えるでしょう。後の様々なRPGが「Wizardry」の影響を受けている点、RPGどころか様々なアクションゲーム、アドベンチャーゲームにまでWizardryの文法に準拠したダンジョンが登場していることを考えれば、ジャンルに与える影響もまず文句のないところ。「ディープダンジョン」「女神転生」などを始めとする追随者の多さも言うまでもありません。


さて、PC畑でのもう一つの代表的ジャンル、アドベンチャーゲームから一タイトル挙げるとしたら何になるでしょうか。これについては様々な意見や評価があると思いますが、アドベンチャーゲームの歴史において、もっとも影響力が高かったパラダイムシフトが「コマンド入力の導入」だった、という点についてはおそらくそれ程異論が出ないのではないかと思っています。これによって、それまで「色んなコマンドをテキスト総当たりで入力する」ゲームジャンルだったアドベンチャーゲームが、キーボード必須のゲームではなくなった。これ、さり気なく物凄いゲームシステムの革新だったと思うんですよ。

そのシステム一つで、のちの「AVG」というゲームジャンルの作品全てを塗り替えてしまい、うっかりするとRPGにまで多大な影響を与えてしまった。当然のことながら、追随者の多さも想像を絶しています。ジャンルとして、セールス的な規模で言うと先に挙げた作品よりやや小粒になってしまうのは仕方ないところ。

そこから考えると、アドベンチャーゲーム枠として挙げるべきは、PC-6001で初めてコマンド入力方式を導入した、堀井雄二氏の「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ」になるのかな、と思います。



ということで、私の視点で「ビデオゲーム史における五大傑作」を挙げるとすれば、

スペースインベーダー
テトリス
ストリートファイターII
Wizardry
オホーツクに消ゆ

になる、という話でした。


皆さんが考える「五大傑作」は何でしょうか?ちょっとした思考実験として、軽く考えてみて頂けると。

今日書きたいことはそれくらいです。











posted by しんざき at 17:37 | Comment(2) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「史」がどこまでなのかにもよりますが、現代史では、つい5年くらい前に「パズドラ」という歴史的転換点があったように思います。
Posted by TAG at 2017年12月25日 17:46
DOOMは確実に入ると思います。ウルフェンシュタイン、としても良いかと思いますが。
この両ゲームで使用された技術は、現代の、3Dを基調とするゲームプログラミング技術の基礎になっているものなので、技術的な重要度で言うと間違いなく最重要ですし、セールス面、ジャンルの創出という面、どちらで見ても超重要です。

3Dアクションゲームというフォーマットを作った、と言われているマリオ64とゼルダ時オカも捨て置けませんが、セールス的に少し弱いかもしれません。ゲームのメカニクスや技術面でのフォロワーという面では強烈なのですが。

ポンの流れで言うと、アルカノイドの重要性は捨て置けませんが、これは直接の後継であるインベーダーに喰われている印象があるので、次点でしょうか。

技術面としてはフォロワーという面が多い印象になりそうですが、オープンワールド全盛の呼び水となったGTA、主にGTA3は重要なタイトルとして挙げても良いと思います。GTAシリーズはセールス的にも非常に重要ですので。
Posted by at 2017年12月25日 17:48
3D化が分水嶺の一つになるとは思いますが、その軸だとなかなか定まりませんね。ジャンルを一つ作るぐらいのインパクトがないと
Posted by muramasa at 2017年12月25日 18:02
ドラクエ3だろ
Posted by at 2017年12月25日 18:19
3Dゲームにおける「ロックオン」の発明は時のオカリナのZ注目だと思っているのですが、いかがでしょうか。これによって後の3Dアクションは大きく変わったかなと。
Posted by at 2017年12月25日 18:27
>3Dゲームにおける「ロックオン」の発明は時のオカリナのZ注目だと思っているのですが

ちょくちょく話題に出ますが、なんでこんなにZ注目ばかり話題になるのかが今ひとつ理解できません。

同様のシステムだと思われるロックマンDASHのロックオンの方が先に出ているし、
(時オカ 1998年発売、ロックマンDASH 1997年発売)
どの辺が衝撃的なシステムなんでしょ?
Posted by at 2017年12月25日 18:51
Z注目はカメラワークの問題解決や、敵の動く順番を決める仕組み(視界内の敵から優先順で攻撃する、視界外の敵は視界内に移動して来て攻撃する、など)に重要な解決法とされていて、その後の3Dアクションゲームへの大きな影響があります。
ロックオンの発明自体はロックマンDASHどころか、もっと昔からある仕組みですね。

時オカはその他にも、謎解きの3D性や、特殊アクションのAボタンへの集約など、後発への影響が色々あるんですが、説明のしやすさでZ注目が取りざたにされがちなのだと思います。
Posted by at 2017年12月25日 19:14
パズドラは売れたかも知れないけど忘れ去られるゲームだよね。ソシャゲという括りなら国内では怪盗ロワイアルの方がインパクトあったでしょ。
あと世界で見たら始祖という事でPON、面数的なゲームという事でロードランナーはあるかな。
Posted by ぽ at 2017年12月25日 19:39
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