Unbootstrap - 自分(Linux)の足(ファイルシステム)を自分(稼働したまま)で撃つ(破壊する)ためのシェルスクリプト - Linux / Shell Script Advent Calendar 2017 - ダメ出し Blog

2017-12-24(Sun) [linux][unix][sh][shell] [更新履歴]

Linux Advent Calendar 2017Shell Script Advent Calendar 2017 兼用の 24日目の記事です。メリークリスマス! イブ!! 明日が誕生日です。今年も無事におひとりさまですよ。おいしいケーキたべたい。

今回は Linux 環境を生きたままケア^H^H殺すためのシェルスクリプト、Unbootstrap を紹介します。

Unbootstrap を使えば、リモートの Linux 環境に SSH 経由でログインした状態で ファイルシステム等のデータ破壊とマシン電源オフを安全(?)・確実(?)に行なうことができます。 「生きたまま殺す」「自分の脚を自分で撃つ」とはその喩えです、念の為。 コンソールログインなどの物理アクセスや、別 OS 環境のブートも不要です。

開発の経緯

私は 日本 Samba ユーザー会 (Samba-JP) のスタッフとしてユーザー会の各種サービスを稼働させているホストを維持・ 管理しているのですが、ある時あるホストマシンを引退させることになりました。 モノはリモートにある物理マシンです。OS は Debian だったかな? Ubuntu だったかな?

マシンの設置場所はユーザー会のスタッフ (当時。現在は故人)の前職場である (株)ファム の某ビル内にあり、ファムの方で電源断、 ストレージ (SATA HDD) のデータ破壊、マシンの破棄まで作業してくださるとのことでした。 その節はお世話になりました!

お言葉に甘えてそのまますべてお任せでもよかったのですが、 「リモートにあるコンソールにアクセスできないマシン上の Linux 環境のストレージを破壊する簡単な方法がないものか?」と思い立ち、 作ってみたのが Unbootstrap です。

稼働中のシステムのファイルシステム/スワップを破壊するとどうなる?

今回、マシンを引退するにあたり実現したいことは以下でした。

  1. 一時的なデータの破壊
    • メモリなどが該当します。
    • マシンの電源オフで破壊できます。
  2. 一時的ではあるが残されるデータの破壊
    • スワップファイル/デバイスが該当します。
    • dd(1) や shred(1) などで破壊できます。
  3. 恒久的なデータの破壊
    • ファイルシステムなどが該当します。
    • dd(1) や shred(1) などで破壊できます。

メモリは電源オフで簡単に消せますが、スワップファイル/デバイスやファイルシステムはどうでしょうか? 稼働中の Linux にログインして以下のコマンドラインを実行したとき、 どのようなことが起きるか想像してみてください。

$ lsblk --noheadings --list --scsi --output name \
  |sed 's|!|/|g' \
  |while read dev; do echo sudo dd if=/dev/urandom of=/dev/$dev; done

これを実行すると (上記例は echo を挟んでいるので実際は何も起きませんが、echo を外して実行すると) ファイルシステムやスワップ(を含むブロックデバイス)をランダムデータで上書きして破壊します。

使用中のファイルシステム/スワップデータが壊れると何が起きるでしょうか?

いずれにしても、システムを稼働したままファイルシステムなどを破壊すると、 途中で停止しまう恐れがあると考えられます。

Unboostrap は何をするのか

こんなことができます。

  1. メモリ上に tmpfs(5) のファイルシステムを作り、その中に Unbootstrap 環境を作る。データ破壊に必要な各種コマンドやデバイスファイルがコピーする。

  2. スワップファイル/デバイスをすべて無効化する。

  3. Unbootstrap 環境に chroot(2) してヘルパーシェルスクリプトを起動する。

  4. ヘルパーシェルスクリプトは以下の機能を提供する:

    • Unbootstrap 環境のプロセスを除くすべてのプロセスを停止する。 (SIGSTOP シグナル送信)
    • Unbootstrap 環境内でシェルを起動する。
    • マシンの電源を強制的にオフする。(poweroff --force)

現在のところ、ファイルシステムやスワップを自動的に検出・破壊する機能は 実装してありません。シェル内で lsblk(8), dd(1), shred(1) などを利用して手動で破壊する必要があります。

なお、init(1) プロセスはカーネルがシグナルをブロックするので停止できませんが、 調べた限りでは通常のファイルシステム上のファイルはオープンしていないので、 止めなくても問題なさそうです。ptrace(2) で一度アタッチするとシグナルがブロック されなくなるようなので、どうしても止めたい場合は事前に strace(1) などでアタッチしてみてください。

Unboostrap の使い方

リポジトリ内にデモ用に Vagrant による仮想マシン環境を用意してあるので、 ダウンロードしてみてください。

$ git clone https://github.com/fumiyas/unbootstrap.git
Cloning into 'unbootstrap'...
$ cd unbootstrap

vagrant を直接起動してもいいですが、Makefile にルールを書いておいたので、 それを利用してもいいでしょう。

最初に仮想マシンを起動 (Vagrant Box イメージが手元になければダウンロードも) して unbootstrap スクリプトをインストールします。

$ make vagrant.up
vagrant up
Bringing machine 'default' up with 'virtualbox' provider...
==> default: Box 'bento/debian-9.2' could not be found. Attempting to find and install...
...省略...
==> default: Running provisioner: file...
==> default: Running provisioner: shell...
    default: Running: inline script

仮想マシン内のシステム (Debian) に SSH ログインして root になります。

$ make vagrant.ssh
Linux debian-9 4.9.0-4-amd64 #1 SMP Debian 4.9.51-1 (2017-09-28) x86_64

The programs included with the Debian GNU/Linux system are free software;
the exact distribution terms for each program are described in the
individual files in /usr/share/doc/*/copyright.

Debian GNU/Linux comes with ABSOLUTELY NO WARRANTY, to the extent
permitted by applicable law.
vagrant@debian-9:~$ sudo -i
root@debian-9:~# 

unbootstrap を起動すると Unbootstrap 環境が自動的に構築され、 メニューが表示されます。

root@debian-9:~# unbootstrap
Creating Unbootstrap directory /tmp/unbootstrap.1220.tmp ...
Copying some files in /etc to /tmp/unbootstrap.1220.tmp/etc ...
Copying device files in /dev to /tmp/unbootstrap.1220.tmp/dev ...
Copying commands to /tmp/unbootstrap.1220.tmp/bin ...
Copying required libraries to /tmp/unbootstrap.1220.tmp/lib ...
Creating busybox commands in /tmp/unbootstrap.1220.tmp/bin ...
Entering Unbootstrap directory /tmp/unbootstrap.1220.tmp ...
Mounting /proc ...
Mounting /sys ...

Unbootstrap Menu:

  1 : Suspend all processes except Unbootstrap processes
  2 : Start /bin/sh in Unbootstrap environment
  3 : Force to poweroff
  4 : Force to reboot
  5 : Resume all suspended processes
  6 : Exit from Unbootstrap environment

Enter a number to do:

1 で Unbootstrap 環境以外のプロセスを停止した後、 2 でシェルを起動してファイルシステムなどを破壊して終了 (exit) して メニューに戻り、最後に 3 で強制電源オフする、という流れになります。

謝辞

現在の Samba-JP の各種サービスは、数名の有志と、 KDDI Cloud Core VPSさくらインターネット(株)さくらのVPSオープンソース・ソリューション・テクノロジ の提供でをお送りしております。

この度、マシンの老朽化のため、ファムに設置して頂いているホストマシン darwin.samba.gr.jp を退役させることになりました。長い間ありがとうございました。 ベアメタルの Intel Celeron (Coppermine) 566MHz、IDE HDE 20GB の古いマシンでした。


ところで、12月25日はクリスマスな上に、 OSS 界隈で地味に活躍されているふみやすさんの誕生日ですね!
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