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【コラム】”業界に思う事と未来”DETONATOR代表 江尻


DETONATOR代表の江尻です。

2017年の1年を振り返って感じたことを書いてみました。
来年はとても厳しい年になると思います。
世界の成長スピードに乗り遅れず、日本のシーンも良い方向に導く。
自分自身への戒めも含めての文章になります。

 

プロライセンス制度も含め、esports系の統一団体について、多くの意見が飛び交っています。

 高額賞金制=プロライセンス制度のような構図で語られていますが、それは競技性ゲームへの造詣が深くない方々が決めたこと。
なぜここまで現場の声に耳を傾けずに進めるのか、容易に想像がつきます。その点をどれだけ強く訴えても、状況は前には進まないでしょう。

 個人的に、「日本では“高額賞金制=プロライセンス制度”のような仕組みがないと高額賞金が出せない」と感じる情報の見せ方が怖いと感じます。現状の日本の法律でも高額賞金は問題ないという、専門家の意見もあります。

 ですので、様々な理由がある中での、オリンピックというビッグマーケットに団体を統一するための“理由付けの1つ”ではないかと考えています。いまある問題点を解決し、オリンピックを有意義なものにするためには統一団体が必要であると、その意義をうたってきたのではないか、と。

 それに対しては肯定も否定もしません。始められた皆さんが責任をもって運営をしてほしいと思っています。ただ、選手不在のまま物事を進めることだけはやめてほしいですね。彼らを大切にしてほしい。

 決まったことは仕方ないとして、新たな市場を作るためには、各個人が考える成熟したシーンになることが必要だと思います。

 私の高額賞金に対する考え方も明かしておきます。まず、高額賞金を出す意義を整理します。それは、イベントに価値があり、興行として成り立ち、協賛のスポンサー各社が納得する利益が見込めるから。この構造が強固であれば、大会を支援する・賞金を出すといった流れは問題なく続くでしょう。

 選手が生活するために高額な賞金が必要という考え方があります。たしかにその通りではありますが、もう一歩踏み込んで考えている選手や関係者がどれくらいいるのかが気になります。本当に重要なのは、高額賞金をもらえる価値がある選手かどうか。高額賞金を生む大会にどれだけ貢献できているかどうか、と言い換えてもいいかもしれません。賞金のひとり歩きは危険です。賞金が出る理由はもっと真摯に考えるべきです。

 いまの日本のゲームイベントの問題は、“興行として成り立たせにくいこと”です。コンサートや格闘技イベントなどはある程度の入場料があり、グッズ販売やその他のマネタイズ要素の元に興行として成り立っています。日本のゲームイベントでそれと同等レベルのことができればいいのですが、現状では難しいでしょう。

 ここで勘違いしないでほしいのは、イベントの規模の話ではないということ。規模が大きいから良くて、小さいと意味がないわけではありません。私が気にしているのは、“人(ファン)がわざわざ見に行きたいと思う選手の少なさ”です。選手が人を呼べる時代に入らないと、そもそも興行として成り立ちません。団体や組織がルールを決めて良い環境を作っても限界が来ると思います。

 今はゲームパブリッシャーがゲームのPR企画として大会費用を出していることが多いので、無料で参加(観戦)できるイベントがほとんどです。ですので、ゲームの人気が落ちれば、イベント規模が小さくなり賞金も無くなるでしょう。“興行”としての正しい姿とは違います。

 本来なら、あくまでも選手が主役。華やかな大会が開かれようとも、立派な外枠を作ろうとも、最前線で活動する選手がいなければ始まりません。その選手がくり広げる素晴らしい試合によって、どれだけの人を集められるのか。その一点が何よりも大切です。シンプルな話ですから、誰もがわかっているはず。見て見ぬふりはやめて、もうそろそろ、そういった部分について議論されても良いと思います。

 選手はゲストではありません。大会やイベントを成功に導くために、その一部となって何をするべきか、考える時期に来ているのではないでしょうか。自身と業界の未来を考えられる選手が集まれば、選手会を作ることも可能でしょう。大きな組織に選手側の意見を伝えられるくらいになるべきです。そして、選手の意志を理解してくれる大会組織といっしょに動けば良い。世間にゲーマーの価値を理解させるために必要な言動を心掛けてほしいものです。

 業界は違えども、小さな劇場からスタートしたAKBのような方々もいます。将来が不透明な芸能界でも努力を続け、彼女たちは高い知名度を得ました。努力を続けられることも大切な資質であると、改めて教えられます。

 esports業界には「これを続けても将来が不安だ」という風潮があります。私にはこれが疑問です。まだ成熟していないesportsという世界を生き抜いていこうというのに、努力と試行錯誤をしない人に輝かしい未来が来るはずはありません。私も何の保証もない中でビジネスができるように、必死に考えてスキルを身に着け、日々努力をしているつもりです。努力もせずに未来を不安がるのであれば、最初からプロの世界を目指すのは辞めた方がいいと思います。ひとりのゲーマーとして楽しくゲームをするのも、十分に素敵なことですから。

 プロの世界は弱肉強食。道が無ければ自分で切り開き、結果が出れば生き残れる。とてもシンプルです。年齢は関係ありません。続けた努力が実らないこともあります。確約されたプロの世界など存在しないのです。

 私は選手をサポートする立場です。プロとしてしっかり生きていけるようになってほしい。そのために、まずは“契約”や“お金を稼ぐ”という根本的な部分の教育が必要だと考えています。リスクは大きいが、相応の対価があるというのが、私の中での“プロ”の認識。果たして、その中でどれだけ勝負する覚悟が若いプレイヤーたちにあるのか。

 プレイヤーに関わるお金と言えば大会賞金です。「高額賞金を出せれば業界が盛り上がる」という考えには賛否があるでしょうが、賞金があるから活性化するというより、それだけの価値を持った選手がいるという認識に持っていければ、もう少し理解が深まったのではないかと思います。

 正直な話、高額賞金は見る側からしたら何の意味もありません。一部のトッププレイヤーが恩恵を得るだけです。それは観戦者の熱狂につながらない。だからこそ、賞金ではなく“人”にフォーカスするべきなんです。

 たとえば、M-1グランプリも初期こそ賞金1000万円が話題になりましたが、いまはそこにはほとんどフィーチャーされません。結果の対価が賞金なんです。ネタが面白くて日本中を笑わせたから、賞金よりも芸人さんたちに注目が集まるのです。

 ゲームイベントも基本は変わりません。自分たちの試合でどれだけの人を魅了して感動させられるか。その対価が賞金であれば誰も文句も言わないし、高額であるに越したことはありません。

 気持ち無き大会に感動はありません。ゲームの試合で観客の感情を揺さぶろうというのですから、もっと人の気持ちを大切にするべきでしょう。業界が発展し、スポンサー、ゲーム、選手が次のステップに進むために、ファンや来場者のために何ができるかをもう一度見直す必要があります。

 このように、2018年は根本を見つめ直し、危機感を持って活動していきたいと思っている日々です。
企業様やファンの方々に理解を得られるよう、何をすべきかを今まで同様に考えます。

 プロ野球は野球で、Jリーグはサッカーでスポーツビジネスをしています。私どもプロゲーミングチームは、ゲームでビジネスをしているのです。規模や組織形態はまだまだ足元にも及びませんが、今できることを必死にやっています。

 多くの方のサポートのおかげで、ゼロからようやくここまでたどり着けました。ですが、まだまだです。これからもゲームをビジネスとして、また、”ゲームを通して人は育つ”を信じて実践していくのみです。

 そして、我々の活動は“ファン”あってこそ成り立つものであると心に刻みながら活動を続けます。

 日本のシーンが少しでも良い方向に向かうことを祈りながら...。

2017年12月25日

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