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Atlassianに学ぶ、大規模なUXチームにおける採用プロセス

Jerry Cao

JerryはUXPinのコンテンツストラテジストです。過去に、Braftonでのクライアント向けのコンテンツ戦略、広告代理店のDBB San Franciscoでの経験があります。

この記事はUXPinからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Building UX Teams at Scale: Inside Atlassian’s Bespoke Hiring Process (2017-08-25)

「アトラス」という言葉を聞くと、世界を肩の上に乗せたギリシャ神話の巨人を思い浮かべるかもしれません。

ソフトウェア開発企業のAtlassian社は、12のプロダクトと2,200人の従業員、そして9万の顧客をもつ企業として、確かにその由来にかなっています。

San FranciscoにあるAtlassianのオフィス

この規模に適したデザインチームを作るというのは簡単ではありません。さらに、B2B企業が直面する複雑さが加わります。まずはこの挑戦すべてを心から称賛するべきでしょう。

Atlassianは、エンジニア主導のB2B企業という型を壊しています。今回は彼らがどのように今をときめくデザイン文化やベストプラクティスを構築したのかを探るために、同社のデザインチームから以下の3人に話を伺いました。

  • Karen Cross氏:デザインチーフ(市場開拓および収益体制)
  • Amanda Sampson氏:人事主任、デザイン
  • Liam Greig氏:デザインマネージャー(Confluence担当)

左から、Karen Cross氏、Amanda Sampson氏、Liam Greig氏。

彼らはインタビューの中で、世界中から優秀なデザイナーを見つけて雇い、養成するための秘訣を教えてくれました。

正しいチームサイズと構成

2012年当時、Atlassianでデザインを実践するのは一握りの人たちだけでした。デザインには一貫性がなく、たとえばドロップダウンメニューだけで48種類もありました。しかし、競合企業の優れたデザインの長所を認識したことで、Atlassianはデザイン手法の構築を始めました。

デザインのフィードバックセッションの様子。中央がLiam Greig氏。

最初に雇用された社員の中に、現在デザインチーフを務めるJürgen Spangl氏がいました。ユーザー体験を統一するべきだという彼の主張が実現されたことで、Atlassianは数年の間に、人材の数とデザインプロセスの成熟度の双方において進歩を遂げました。

今では、デザイン組織には200人近くのスタッフがいて、強力なデザインシステムも保有しています。Atlassianのデザインチームは成長に合わせて、2018年も20~30人を雇用するそうです。

Atlassianシドニー支社のデザインスペースでのブレインストーミングの風景

Liam氏は次のように述べました。

「私たちはただ何となくデザインチームを拡大しようとしているのではありません。プロダクト管理と開発を補えるように、チームを拡大しているのです。」

Atlassianのデザイン組織は現在5つの部門にわかれています。

  • 情報体験:プロダクトのコンテンツとインターフェイスのコピー、技術のドキュメントを作成する
  • ユーザーリサーチ:ユーザーのニーズを調査、検証する
  • プロダクトデザイン:プロダクトを改良し、新プロダクトを開発する
  • クリエイティブチーム:インタラクティブなマーケティングプロジェクトを作成する
  • デザインオペレーション:適切なツールやプロセス、ビジョンを導入してデザインチームを成功に導く

加えて、プロダクトに関わる3職種の連携を維持するために、Atlassianはガイドラインとして以下の比率を用いています。

デザイナー:プロダクトマネージャー:エンジニア=1:1:10

もちろんこの割合は絶対的でなく、プロジェクトやチームメンバーのスキルに応じて変化します。

ジェネラリストかスペシャリストか

Atlassianは伝説級の天才を追い求めるようなことはせず、5つの部門をカバーするためにT字型人材を雇用しています。チームメンバーは1つのデザイン分野を専門とする一方で(Tの縦線)、ほかの分野も補填することができます(Tの横線)。

T字型デザイナーの雇用は、バランスの取れたクロスファンクショナルなデザインチームには理想的です。この仕組みはAtlassianのキャリア開発プロセスと完璧に調和しています。新しい社員は通常、1つのプロダクトに対して最低1年以上取り組んでスキルを磨きます。それ以降、デザイナーは複数の異なるプロダクトをまたいで仕事できるようになるのです。

Atlassianでは、T字型人材の採用にあたって、どのように候補者の人物像を作っているのでしょうか? デザインチーフのKaren Cross氏は、以下のようなデザインスキルのマトリクスを作りました。この図は今では、世界中のAtlassianにおいて雇用やキャリア開発の際に使用されています。

しかし、コーディングスキルについてはどうしているのでしょうか? Atlassianではコーディングについてはどのように捉えられているのでしょうか? 答えは、場合によりけりです。

BitbucketのデザインチームリーダーであるLiam Greig氏は次のように述べます。

「コーディングは決して苦しいものでないですが、必須のものでもありません。T字型デザイナーに話を戻しますと、私たちがT字型人材に何を求めているのかが関係しているのです。さらに重要なことは、どのような人材にコーディングスキルが必要なのかを理解することです。」

異なるデザインの役割には、異なるレベルのスキルが要求されるのです。デザイン部門の人事、Amanda Sampson氏もこれに同意します。

「プロトタイピングを作る人やグロースデザイナーを雇用するなら、その人はコーディングスキルを備えているべきです。そうすれば、迅速にデザイン、コーディング、そして体験の伝達まですることができます。一方、ほとんどのデザイナーに対しては、どのようにエンジニアと仕事をし、技術的制約がある中でどのように働くのかを私たちは重視しています。」

入念に作成された採用プロセス

適切なT字型デザイナーを見つけるために、Atlassianは決してありきたりな採用プロセスを採りません。エンジニアやプロダクトチームと同じプロセスを用いるのではなく、デザインチームでは独自に4段階のプロセスを作成しました。

1. 第一段階評価

採用プロセスは、候補者の履歴書やポートフォリオを見ることから始めます。Amanda氏は採用担当者としてデザイナーの気持ちを理解するために、General Assemblyで授業を受けました。彼女が言うには、過去に正式な教育過程でデザインを学んだかどうかは、候補者が思っているほど重要ではないそうです。

彼女が特に関心を持っているのは、候補者がどのようにビジネスの課題を解決するのかという点です。自分の仕事をどのようにプレゼンするのか、課題やユーザーグループをどのように理解したのか、そして自分のデザインの中で成功したものとそうでないものを区別できるのかが大切だと言います。これらの能力は、必ずしも教育によって身に着けられるものではないからです。

2. 最初の電話面談

従来の適性審査に近いものですが、2人の採用担当の内1人が20~30分間候補者と電話で会話します。採用担当者は、職務の内容や期待していること、勤務地などを説明します。候補者も、これまでの経験と期待することを簡潔に伝えます。

3. オンライン面接によるポートフォリオと経験の見直し

この段階から、採用プロセスはより詳細なレベルに突入します。

Karen氏やLiam氏のような採用責任者と候補者は、45分~1時間のビデオ面接で会話をします。そして候補者のポートフォリオからいくつかのプロジェクトを取り上げて、そのプロセスや意思決定について掘り進めます。

この段階について、Liam氏は次のように主張します。

「機能だけを流し見してはいけません。なぜその決断を下したのでしょうか? なぜカルーセルを使ったのでしょうか? 調査で見つけたインサイトとデザインの判断は結び付くでしょうか? 適切にデザインできるだけは不十分です。候補者はなぜそれが正しいものなのかを理解し、説明できなければなりません。」

4. 実地面接

オンライン面接に合格した候補者は、Atlassianの世界中にあるオフィスのいずれかに招かれて、半日間の実地面接を受けます。

Atlassianのシドニー支社

チームメンバーとの1対1での会話が一通り終了したら、インタラクティブなデザインの演習が始まります。この架空の演習は1時間半から2時間で行われ、デザインプロセスの収束と発散を反映した2つのセッションにわかれています。

  • 第1セッション:候補者はAtlassianの社員2~3人とロールプレイングをし、コラボレーションスキル(自身の有無や割り振る能力、リーダーシップなど)とアイデアをまとめる能力を測ります。
  • 第2セッション:候補者は、まとまったコンセプトを1人で作成する時間が与えられます。最終的な成果物は、ワイヤーフレームになることもあれば、忠実度の高いモックアップになることもあります。完成したら、候補者は第1セッションで一緒だった社員に作品を提出します。

第2セッションが単独作業であることで、内向的な候補者も不快に思うことなく、ソフトスキルとハードスキルを測定することができます。このフォーマットは、スペシャリストよりもバランスの取れたデザイナーを重視するAtlassianの方針を表したものです。

Liam氏は言います。

「第1セッションで候補者に手ごたえを感じられないと、残念な気持ちで部屋を去りますが、第2セッションが終わってから戻ってみると、その仕事ぶりに驚かされることがあります。このフォーマットではデザイナーのスキルすべてが明らかになるので、候補者を頭ごなしに評価するのを防ぐことができます。」

インタラクティブな演習のあと、候補者は複数の社員と価値観についての面接に呼ばれます。この面接の目的は、Atlassianの企業価値に従ってカルチャーフィットできるかを判定することです。Liam氏はさらに続けます。

「カルチャーフィットとは、ドラマ『Star Trek』のBorgのように、私たちのやり方に全員を同化させることではありません。同じ価値観をシェアするに留まらず、チームの成長に応じて文化を流動的にしようというものです。」

「現在の環境で何が不満ですか?」という質問と、それに続く「それを変えるためにどんな行動を起こしましたか?」という質問によって、ソリューションを見つけようと尽力している人に対して、チームプレーができず、今にも辞めそうな人に光を当てることができます。

Amanda氏は言います。

「IT業界においてカルチャーという言葉はバズワードになっています。私たちはAtlassianのコアにある価値観を明示し、それに応じて面接することで、『カルチャーフィット』という言葉をわかりやすく説明しています。その人の経験や考え方、態度が私たちの価値観に共鳴するかを判断するために、話を掘り下げるのです。」

価値観についての面接が終わったら、採用プロセスは終了です。しかし、ロジスティクスを解決したり、採用プロセスに出席できなかった遠くのチームメンバーが関わったりするために、追加で面接が何回か必要になることもあります。

オンボーディング体験をデザインする

採用プロセスと同じように、内定後のオンボーディングも丁寧に設計されています。

Atlassianのオンボーディングは、以下の3つのパートにわかれています。

  • 入社前:内定をもらうのとほとんど同じ時期に、新入社員向けのパッケージが自宅に届けられます。中には、世界的企業の一員であることを表すパスポートホルダーなどの雑貨が入っています。また、デザインチームの新入社員にはほかにも贈り物として、『Designing at Atlassian』という、デザインチームMediumの記事を書籍化したものが届きます。
  • 1週目:Atlassianでは、メンターが「バディ」になって新入社員を研修するシステムを導入しています。通常このメンターは、新入社員が所属するチームにいない人物であり、ここでも新入社員の専門を広げることをうながします。
  • 90日ごとの定期チェック:マネージャーは新入社員と定期的に会って、企業のミッションやプロダクト、価値観、顧客、ワークフローなどを議論します。このチェックを通してマネージャーは新入社員の進捗を評価し、新入社員が目標や期待することを議論するための土台を与えます。

長期的なキャリア開発:2経路モデル

キャリアコースとして、デザイナーはクリエイティブの専門家とデザインチームのリーダーのどちらかを選択をします。この2経路モデルでは、企業内で同じ給料と地位が与えられるので、デザイナーは純粋に自分の関心とスキルに応じてキャリアを追及することができます。また経路を移動するのも自由です。

Atlassianのデザインチームにおけるキャリア開発の道のり

一体感と知識の共有をうながすために、Atlassianでは毎年デザイン部門の組織が集結し、デザインウィークを開催しています。この企業内会議の期間中に、チームはケーススタディからベストプラクティスを共有し、全員でレクリエーションに参加します。

2017年のAtlassianデザインウィーク

結論

優れたプロダクトには優秀なデザイナーが必要です。そして優秀なデザイナーを惹きつけるためには、優れた採用プロセスが必要です。

デザインの変革は、何百人ものデザイナーを雇えば良いという単純なものではありません。ほかのチームとのバランスを損なうことなく採用を行い、正しいデザインの能力を成長させるためには、入念にプロセスを組む必要があります。

これはプロダクトをデザインするのと同じことです。エンドユーザーの体験を考慮し、それぞれの決定によって生じる結果を考えてください。そして、何度も進化し、反復する備えをしましょう。

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