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「セクハラだとは思っていなかった」という言い訳。権力の持つ力に気が付かないことは罪だ。

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Photo by Marco FrontSoldier from Flickr

 

 先日、著名ブロガーであり作家のはあちゅうさんが電通社員時代に著名クリエイターである岸勇希氏から過去に受けたセクシュアル・ハラスメント、パワーハラスメントをBuzzFeedにて告発した(はあちゅうが著名クリエイターのセクハラとパワハラを証言 岸氏「謝罪します」)。BuzzFeedから質問状を受け取った岸氏は、記事が掲載される前に自身のブログで謝罪文を公開。事前に記者への連絡はなかったという(Buzz Feed様からの取材について)。

 はあちゅうさんは記事の中で、深夜に岸氏の家に何度も呼び出されたことや女性を紹介するように言われたことなどを訴えており、さらに”『俺に気に入られる絶好のチャンスなのに体も使えないわけ? その程度の覚悟でうちの会社入ったの? お前にそれだけの特技あるの? お前の特技が何か言ってみろ』”と性的な関係を要求されたとも証言している。岸氏はこの点について謝罪文の中で「深夜に呼び出したこと」や「威圧的な発言や追い込む言動」をしていることを認めているものの、「性的な関係を要求した」ことは否定している。

 岸氏は謝罪文の中で「当時は、私の認識や理解が未熟で、後輩への指導とハラスメントの境界が、正しく認識できていなかった」と書いていた。この謝罪文を読んでいると、セクハラやパワハラをする人間はそれがセクハラ・パワハラであることに気がついていないのではないかということを改めて思った。

権力の持つ力に気が付かないことは罪だ

 はあちゅうさんの報道をきっかけに、セクハラや性暴力を告発・被害者を支援する#metooをつけたツイートが広がりつつある。

 だが残念なことに、昔の上司からのセクハラ・パワハラを告発した人に対して「なんで今更」「後から言うなんてせこい。そのときにイヤだとはっきり言えばよかったのに」といった声も少なからずがあがっている。「自分でその会社を選んだんだろう」「嫌ならやめればいい」という意見も耳にする。しかし、それはあまりにも横暴ではないだろうか。

 今月4日、千葉県木更津市の暁星国際高校野球部の20代男性監督が「3分だけ癒して」などと言い寮の部員の布団に入るなどし、部員2人がセクハラ・パワハラだとして被害を訴えたという報道があった(暁星国際高の野球部監督「添い寝しよう」 部員が訴え)。監督はあくまでコミニュケーションのつもりであったと話しておりセクハラやパワハラだとの認識は否定している。

 ただの言い訳のようにも聞こえるが、監督は本当に、部員たちが嫌がっていることがわからなかったのかもしれない。もしかしたら部員たちも明確な拒否の態度をとっていなかった可能性もある。だが部員に「はっきりイヤだと言えばよかった」と言えるだろうか。

 子供の部員が大人の監督に逆らい、はっきりと否定の意思を示すというのは容易なことではない。本気で逆らえば激昂されるかもしれないし、部活で正当な評価をされなくなってしまったり、露骨な嫌がらせを受けるかもしれない。

 先生と生徒、監督と部員、大人と子どもに限らず、非対称な権力関係の中で、権力を持たない者が権力を持つ者に意見するのは困難なことだ。その中で我慢するしかない、笑ってやり過ごすしかない、そうしていればいつかはここから抜け出せるはずだとひたすらに耐え忍んでいるのかもしれない。

 権力を持つ者がその想像をしないこと、それは既に暴力だ。そして残念なことに権力を持つ者は自分の持っている力に鈍感な場合が往々にしてある。

 社会的な権力関係だけではない。例えば、男性と女性。男性は女性に比べて、体格や筋力が大きい場合が多い。女性から見て、大きな体格の男性はそれだけで脅威にもなり得ることがある。「男性は暴力的な生き物である」「鍛えられた体は悪いことだ」などと言うつもりはないし、「女性はか弱いのだから守れ」と言っているわけでもない。しかし、大きい身体や強い筋力というのはただそれだけで他者にとって脅威となる得るのだということは”知っておいてほしい”

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  • ISBN-139784087206968
  • 出版社集英社
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