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【社説】

学校での働き方 先生のやる気を支えよ

 子の健やかな成長を願えばこそ、先生には元気で頑張ってほしい。世の親たちのそんな思いにも応える働き方改革を切望する。中央教育審議会が方策の中間まとめにこぎ着けた。ピッチを上げねば。

 文部科学省の最新調査では、「過労死ライン」と呼ばれる月八十時間超の残業をする公立校の先生は小学校で三割、中学校で六割に上る。学校はさながら“ブラック企業”の様相を呈している。

 中間まとめは、勤務時間の上限の目安を示す指針をつくるよう文科省に求めた。過酷な現状を見ればもっともだ。

 時間外労働の上限を、原則として月四十五時間かつ年三百六十時間と法定化する動きがある。文科省はそれを参考に数値目標を検討し、改善効果を狙うらしい。

 社会環境の変化に対応するためとはいえ、学校の許容範囲を顧みることなく業務を増やしてきた一義的な責任は文科省にある。その反省に立ち、先生の業務量を一元管理する部署が必要だと、中間まとめが促したのも理にかなう。

 ただ、残念ながら、先生の勤務条件の土台である公立校教職員給与特別措置法(給特法)の見直しには踏み込まなかった。長時間労働の温床と批判されてきた。

 先生は自発性や創造性が期待され、勤務時間は区切れない。だから、残業代を出さない代わり月給の4%を一律に上乗せする。時間外勤務は原則的に課さないが、臨時、緊急時の場合は手当抜きで命じる。ざっとそんな仕組みだ。

 勤務時間の把握意識が薄れ、サービス残業の増大を招きやすい構造になっている。月給の4%上乗せは、月約八時間という五十年前の残業時間を根拠にしていて、実態から懸け離れている。

 同じ仕事を手がける国立校や私立校は、労働法制上は民間企業と同列に扱われる。公立校の先生は公務員として身分を保障されているが、労働者としての権利は蔑(ないがし)ろにされているというほかない。

 文科省がつくる指針は対症療法でしかない。給特法の改廃はもとより、柔軟な働き方を可能とする年間変形労働時間制の導入といった法的手当てが欠かせない。抜本見直しは待ったなしだ。

 中間まとめは、学校や先生の負担軽減策として教育委員会や自治体、地域住民らとの役割分担を示した。登下校の見守りや給食費の徴収、校内清掃、部活動の指導などを学校外に委ねるのは賢明だ。

 先生が意欲とやりがいを持てるよう周りも進んで支えたい。

 

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