前回の記事で、ラ・ラ・ランドが期待通りの良作だったら、今回の映画は観なかったかもしれない。
昨年のアカデミー賞で総なめと思われたラ・ラ・ランドから作品賞と助演男優賞を奪って衝撃を与えたムーンライトの感想である。
政治的に、総なめを回避する力が働いた事は当然想像できるが、それでも作品賞を与えるにふさわしい何かがあるはずと思われ、ラ・ラ・ランドに大きな不満を感じた以上観ないわけにはいかなくなった。
幸い、まだTポイントは残っており躊躇せずGYAO!ストアのボタンを押した。
余談だが、どうも以前何気なく押してしまったバナーのクリックくじに当たってしまいTカードを持っていないのにポイントが付いたようだ。しかも12/25日までの期間限定である。クリスマスプレゼントとして有難く消費させていただく。
結論から書くと、自分にはムーンライトの方がラ・ラ・ランドより全然好みの映画だった。共感する場面も多く、心に深く染みいった。
また、作品賞を取らなければ、日本などではラ・ラ・ランドの陰に隠れ注目されることもなく終わった可能性もあり、今回の受賞は正しい判断、そして画期的な受賞だったと思う。
というのは、両者はアメリカ社会の陰と陽を象徴しており、多くの人は明るい夢を見たがるが、目を逸らしたがる暗部にこそ解決しがたい根深い問題があると思うからだ。
そして、アメリカの問題という他人事でなく、この日本でも同様の問題はあり、多くの人がそれに苦しんでいるにも関わらず、目を向けようとしない、気付かないふりをして、更には苦しむ人を見下して生きているからである。
以下詳しく説明しよう。
ムーンライトの主人公を単純に表現すると
- 黒人
- 母は娼婦で麻薬中毒者
- 自身も後に麻薬の売人となる
- 母子家庭
- いじめられた少年時代
- 友人は一人だけ
- 孤独である
- ゲイ?
といった具合である。
このように並べるとアメリカならではの問題で、「こんな暗い作品が、ラ・ラ・ランドと賞を争うなんて、アメリカ社会は病んでいる」などと、他人事のように感想を漏らすかもしれないし、実際この映画のレビューで最低点の☆一つでそう書くレビューワーもいる。
だが少し設定をいじくると
- 在日もしくは同和者
- 母は娼婦で薬物中毒者
- 自身もヤクザになる
- 母子家庭
- いじめられた少年時代
- 友人は一人だけ
- 孤独である
- ゲイ?
であり、上の3つの項目はともかく、赤字にした部分は日本でも結構ありそうなパターンであり、アメリカの黒人+ドラッグ問題と、特殊化して目を背けてしまうのは、読みが浅い。
更にいうと、ゲイの項目に疑問符を付けたのは、彼がゲイなのは、いじめられて心を許せる同年代の者が友人ただ一人であり、身近な女子が母親でしかも娼婦という環境が原因と思われるからである。女子と交流できる環境があればゲイでなかった可能性もあるだろう。もちろん、それでもゲイの範疇に含まれるのだろうが、最初からゲイだったかどうかは怪しい存在である。
ゲイに疑問符を付けたついで、この項目にパターンを加えるなら、はあちゅう氏のセクハラ問題で絶賛炎上中の「童貞」のパターンもありうるだろう。
ムーンライトの主人公には同性の友人がいて性のはけ口は彼に向かったが、全くリアルな友人もいなくて童貞というのは、この日本では珍しい事ではない。
ともかく、リア充の人間が抱きそうなファンタジーであったラ・ラ・ランドより、いじめを経験した非モテにとっては、ムーンライトの方が全然共感できるし、単純かつ強いメッセージを感じたのである。
なお、このムーンライトのストーリーで問題の解決とか希望が示された訳ではないが、だからといって価値が低いとは思わない。
先ず、黒人問題やドラッグ問題、LGBT問題を他人事とか遠い世界の話と考え、蔑む事があってはならないのであって、リアルで身近な問題として多くの共感を勝ち取る必要があったのだと思う。
それがムーンライトの第一義であり、それに成功した作品だと思うのだ。
そういう意味で、自分は強くこれを推したいのであるが……
上でも触れたが、視聴後にYahoo!映画のレビューをみると、意外と☆一つのレビューワーが多く、暗いとか気持ち悪いとか、アメリカは病んでいるといった、メッセージを汲み取らない他人事の感想が多くて、ガッカリしたのである。
自分などは散々辛酸をなめているので、この映画に共感できたが、結局、何不自由なく生きてきたようなリア充層には、何一つ届かないのではないか?
そうした無力感を感じてしまった。
あなたが、アカデミー作品賞を選ぶ立場なら、ラ・ラ・ランドとムーンライト、果たしてどちらを選ぶだろうか?