「サンタクロースの遺骨」は本物かもしれない──英大学の分析結果から判明

サンタクロース伝説のもとになった人物、ミラのニコラオス。世界中に分散している彼の「遺骨」の一部をオックスフォード大学が鑑定したところ、年代から見て「本物」の可能性があると判明した。

TEXT BY MARA MAGISTRONI
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI

WIRED(IT)

 Saint Nicholas

ミラのニコラオス(聖ニコラオス)に基づく伝説的な存在としてオランダで有名なシンタクラースが、サンタクロースの原型になったとされる。写真はオランダの祭りでシンタクラースに扮した男性。PHOTO: GETTY IMAGES

サンタクロースを信じことがない人は手を挙げてほしい。わたしたちの子ども時代の神話は、たしかにつくり話だ。しかし、いくらかの真実もある。そしてオックスフォード大学から、その裏づけが届いた。

わたしたちは彼の遺骨、より正確には、この伝説のもとになった歴史的人物であるミラのニコラオス(聖ニコラオス、イタリアではバーリの聖ニコラ、ヨーロッパ北部ではサンタクロースとしてのほうが知られている)の遺骨を発見したかもしれないのだ。実際、放射性炭素年代測定によると、聖遺物の年代は紀元4世紀にさかのぼるようだ。まさにこの聖人の生きた時代である。

サンタクロース伝説の起源は、時間も場所もとても遠くにある。そこでは多分、彼を雪やトナカイとともに想像するのが難しいだろう。歴史学者たちによると、ミラのニコラオスは実際のところ、4世紀に現在のトルコのデムレ地域に生まれ、生涯を送った司教だ。とても愛され、驚くべき寛容さにより知られた人物だったようだ。このオーラは、のちの時代にも失われることなく、彼はキリスト教で最も尊敬される聖人の一人となった。

聖ニコラオスは紀元343年ころに、ディオクレティアヌス帝の迫害により亡くなったと考えられている。彼の遺骸は埋葬され、彼が生きた場所にずっと残されていた。1087年までのことだ。このとき、イタリア人の商人たちが遺骸を発掘して、南イタリアのバーリへと移した。このバーリの聖ニコラ大聖堂の祭壇の下の地下聖堂に、彼のものとされる聖遺物はずっと安置されている。

「遺骨」を放射性炭素年代測定で分析

しかし、聖ニコラオスの遺骨は、世界中に散らばっているようだ。バーリだけでなく、この聖人のものとされる聖遺物がヴェネツィアのリード島の聖ニコロ教会や、プライヴェート・コレクションのなかにある。

例えば、米イリノイ州モートン・グローヴにある、ベタニアの聖マルタ教会のデニス・オニール神父のコレクションなどがそうだ。ここは聖ニコラオスの恥骨を所有している。オックスフォード大学の聖遺物クラスターの研究者たちは、放射性炭素(C14)年代測定の技術を用いてこれを分析し、年代をまさに4世紀にまでさかのぼると特定した。

bone

PHOTOGRAPH COURTESY OF OXFORD RELICS CLUSTER

これが本物の聖ニコラオスの骨の一部であるかについては、科学は決して断言できないだろうと聖遺物クラスターの責任者ジョージ・カザンはコメントする。しかし、深く掘り下げるに値する興味深い側面がある。

例えば、過去にいくつかの研究が、聖ニコラオスのものとされるイタリアの2つのコレクション(バーリとヴェネツィアのもの)が相互補完的であることを確認した。しかしバーリでは、聖人の骨盤全体が保存されておらず、わずかに左上部(腸骨)があるだけだ。

骨盤をヴェネツィアに保存されている500以上の断片から見つけることができるかは明らかではない。これに対して、オニール神父所有の聖遺物は十分に大きな骨の断片だが、人間の骨盤の左恥骨(骨盤下部)に相当する。

同一人物のものだろうか? 現在の科学はこれを明らかにすることができると、カザンは主張する。「わたしたちは古遺伝学を用いて鑑定することができます。古代のDNAのテストです。これらは非常に遠い時代にさかのぼる聖遺物ですが、実際に本物かもしれません」

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