幻のゲーム画面、解禁。日本ファルコムのPC最後の傑作『ツヴァイ2』は、初期は『イース』だった!
本日12月24日はクリスマスイブですが、日本ファルコムファンにとっては、とある作品の誕生日でもあります。
そう、日本ファルコムのPCソフト『ツヴァイ2 プラス』(2009年12月24日)は本日で8周年を迎えます!(オリジナル版の『ツヴァイ2』は2008年9月25日発売)
いまや『閃の軌跡』や『イース』、『東亰ザナドゥ』など、コンシューマゲームメーカーとして有名な日本ファルコムですが、そもそもはPCゲームメーカーとして人気を集めていました。
(僕みたいなおっさんゲーマーは、日本ファルコムと聞くと『ソーサリアン』とか『ドラゴンスレイヤー』とか『英雄伝説』とかを思い出しちゃいます)
そんな日本ファルコムにとって、PCでの最後のパッケージゲームとなったのが、『ツヴァイ2』でした。なつかしい……!
『ツヴァイ2』はタイプの異なるふたりの主人公を操作するアクションや迫力のボス戦、豊富なやり込み要素でファルコムファンをうならせた超傑作です。
が、コンシューマに移植されなかったこともあり、今ではプレイするのが大変……と思っていたのですが、じつはひかりTVゲームというクラウドゲームサービスで遊べることを、ご存知でしょうか?
これだけ完成度が高いゲームを今でも気軽に遊べる環境があるなんて、素敵! ぜひ、『ツヴァイ2 プラス』発売8周年にこぎつけてインタビューに行きたい! という編集のそめやんさんの職権濫用……もとい、熱意によって、本当にインタビューが実現しました!
そんなわけで、当時『ツヴァイ2』のディレクターを務めた近藤季洋社長にお話を聞いてきました。
日本ファルコムゲーム開発にかける情熱に関する話をはじめ、当初は『イース』シリーズとして開発されていた(!)という衝撃の裏話も聞けましたよ!(文:カワチ)
『イース』の最新作としてスタートした『ツヴァイ2』
ーー『ツヴァイ2』ですが、元々はプラットフォームがPCのパッケージのみだったため、長らく「隠れた名作」というイメージが強かった印象があります。
近藤:『ツヴァイ2』は弊社が最後に出したPCのパッケージゲームということで、私としてはとても思い入れが深いタイトルです。
ーー当時はどのゲーム会社もコンシューマに力を入れていましたね。
近藤:『ツヴァイ2』が発売する3〜4年前ぐらいから、ほとんどのPCゲームメーカーさんもコンシューマが中心となり、ほぼ私たちだけがPCゲームを販売しているような状況でした(苦笑)。
ーーPCゲームはコンシューマに比べるとスペックが高く、リッチなゲームが多かったですよね。『ぐるみん』もそうでしたが、『ツヴァイ2』のアニメ的な3D表現にはとても驚かされました。
近藤:トゥーンシェーディング的な見せ方をできるツールを自社開発して、かなりのクオリティで仕上げました。
PSPの『イースSEVEN』などでも3D演出を使っていましたが、PSPの解像度的にはあえてローポリゴンで見せたほうがしっくりくるので、なかなか披露する機会がありませんでしたね。
そんなわけで『ツヴァイ2』は、グラフィック的にもゲーム内容的にも、おかげさまでユーザーさんからの評価はすごく高かったです。
ただ、当時はPCゲーム市場が縮小していた時期で、PCゲームを置くスペースがない店舗ばかりという状況でした。
『ツヴァイ2』を発売したときに、ちょうど私は社長になったのですが、会議で「社長、もうPCのパッケージのゲームは終わりにしましょう」と言われたことを覚えています(苦笑)。
そのため、今回こうしてこの作品が、もう一度日の目を見ることは、個人的にはとてもうれしいです。
ーー前置きが長くなってしまいましたが、本日はよろしくお願いいたします! さて、そもそものところの質問ですが、近藤さんは『ツヴァイ2』にはどのように関わっていたのでしょうか?
近藤:ディレクターでした。チームからあがってくるものをチェックしてゲームの内容を決めたり、スケジュールの管理をしたりすることが主な仕事でした。
当時はプロジェクトマネージャーだったので、『ツヴァイ2』に限らず、すべての作品のスケジュールを管理していました。その流れでクオリティのチェックも行うようになっていったんです。
ーー『ツヴァイ2』はどういった経緯で作られたゲームだったのでしょうか? 初代はほんわかした世界観でしたが、『2』は冒険がメインで驚きました。
近藤:じつは『ツヴァイ2』は紆余曲折のあった作品で、じつは『イース』シリーズの新作として開発されていたタイトルでした。
ーーえ? さらっとおっしゃいましたが、めちゃくちゃ爆弾発言では!?
近藤:社外に発表するのは、これが初めてです(笑)。
『イース』の新作としてゲーム画面までできていたのですが、かなり発想が自由な制作メンバーだったため、『イース』の世界観にそぐわない部分が出てきたんですよ。
でも、アイディア自体はすごくおもしろいので、それを捨てるのはもったいないな、と。
彼らの力を最大限に生かすのであれば『イース』シリーズではなく『ツヴァイ』がいいのではないかと思い、大きな方針転換をしたんです。
ーーもともとは『イース』としてスタートしたんですね。
近藤:はい。もともとは『イースSEVEN』として開発を進めていましたが、『ツヴァイ2』と『イースSEVEN』は別のゲームになりました。
▼キャラの頭身などは『イースSEVEN』に踏襲されたようにも見えますが、緑の髪の女性など、見たことがないキャラも?
ーー『ツヴァイ2』は2008年の発売でしたが、その翌年には『イースSEVEN』が発売されていますね。
近藤:タイトルを変えることでショックを受けるスタッフもいると思いましたが、彼らの自由な発想は『ツヴァイ』のほうが生かせると思ったんです。
『ツヴァイ2』に搭載されている「ガジェット」のようなシステムは『イース』では難しいですが、『ツヴァイ』であれば可能だと思ったんですよね。
ーーなるほど。だから『ツヴァイ2』は魔法や機械が混同した自由な世界なんですね。
近藤:はい。トラップもコミカルで見た目も派手でした。ああいったものを『イース』に搭載していたら、シリーズファンから怒られていたと思います(笑)。
ーー確かに(笑)。
近藤:初代の『ツヴァイ』はアクションとしては詰めの甘い部分がありましたが、『2』はスタッフが『イース』のノウハウを勉強したこともあり、クオリティが格段に上がりましたね。
また、当時は社内で3Dのゲームを作っているのが『ツヴァイ2』のチームだけだったので、そのプライドでクオリティが上がっていったのだと思います。
ーー『ツヴァイ2』の3Dアクションの技術やノウハウは『那由多の軌跡』や『東亰ザナドゥ』へと引き継がれていくのでしょうか。
近藤:そうですね。『那由多の軌跡』は『ツヴァイ2』の血が色濃く出ていますね。『東亰ザナドゥ』は、『イース』シリーズと『軌跡』シリーズのよさを継いだ作品というイメージです。
ーー確かに『那由多の軌跡』はテーマパーク感が強かったです。
近藤:『那由多の軌跡』は最初のボスが3段階も変化するんですよね(笑)。
この作品は「全部がラスボス」というコンセプトで、「だから、最初が肝心なんです」とスタッフに説得されたとはいえ、さすがにやりすぎた気がしますね(笑)。
画面からクリエイターの情熱が伝わる作品
ーー『ツヴァイ2』を制作していて大変だったことはなんですか?
近藤:次々に飛び出してくるチームのアイディアをまとめるのが大変でした。
とにかくアイディアはどんどん出てくるものの、それをどうやって組み込むのか、どこに配置するのか考えていないことが多いんですよ(苦笑)。
ーー確かに『ツヴァイ2』は要素がもりだくさんで、やり込み要素も多かったです。
近藤:たくさんのアイディアは、どれもすごくおもしろかったので、ボツにすることはありませんでした。
相談に乗りながら、どうやって実装するのか、打ち合わせで詰めていきましたね。
ただ、「博物館の展示室」を入れるのかどうかはスケジュールなどの兼ね合いからすごく迷いました。あんなに豊富なコレクション要素をアクションRPGでやるのは前例がなかったので、スケジュール的に厳しい部分はありましたが、逆に他の作品にはないことなのでは類を見ないなと思って入れることにしました。
ーー村人のプロフィールが段階的に埋まっていく仕様も『ツヴァイ2』あたりから生まれましたよね。
近藤:今では『軌跡』シリーズなどにも標準で搭載していますが、本格的に導入を始めたのは『ツヴァイ2』からだったと思います。
博物館もそうなんですが、放っておくと、いつの間にか勝手に仕様を増やしているといいますか、「作ってみました」と事後報告をされることが多かったんですよね(苦笑)。
ただ、それも情熱からくるものなんですよね。自分が「こういったものを遊びたいんだ」というものを搭載してくるわけですから。
弊社はずっと内製でゲームを作っているので、今でもそういった傾向はありますが、PCゲームを開発していたころは本当に個人のモチベーションや頑張りで、いくらでもゲームを作り込むことができました。
ーーゲームの規模が大きくなると、どうしてもチーム単位での分業が必要になる部分もあるかと思います。
近藤:『ツヴァイ2』は、そういったPC時代の「個人単位の熱意」がまだまだ残っている時期だったこともあり、スタッフが「入れたい」と考えて作ってきたものは、なるべく実装できるように協力しましたね。
当時は仕様書なんてなかったので、作業のスピードも早かったです。
仕様書を書く時間があれば、その時間でプログラムを作っている。とにかく情熱がダイレクトで、制作者の熱気が画面から伝わってきた時代の作品ですね。
ーーそういう熱意が詰まっているからか、今遊んでも十分に楽しいタイトルですよね。
近藤:シナリオも『イース』と『軌跡』を担当した人たちが短時間ながら集結してくれたので、ドラマチックでクオリティが高かったです。
また、そもそも『ツヴァイ』の1作目は、入社3年目ぐらいのグラフィッカーが中心で立ち上がったプロジェクトでした。
「それまでのファルコムを壊して新しいものを作る!」という志が強かったので、チャレンジスピリッツが詰まっているといいますか、いい意味で従来の日本ファルコム作品とは毛色が違う部分があるシリーズでした。
初代『ツヴァイ』の時に印象的だったのは、手書きのイラストに簡単にコリジョン(当たり判定)を設定できる独自ツールを開発したことです。
これにより、今後はグラフィッカーだけでアクションゲームのマップを作れるというプレゼンを受けたときには、本当に驚きましたね。従来はグラフィッカーが作ったグラフィックに、別のチームがコリジョンを設定するという流れが普通でしたので。
ちなみに『ツヴァイ2』でメインプログラムを担当したのも、若手のプログラマでした。とにかく熱意があり、「これがやりたい」というものがあると次の日には作ってくるんです。
まだ新人だったので、プログラムのソースに荒い部分もあったりしましたが、そういう熱意に支えられながら作られたシリーズですね、『ツヴァイ』というシリーズは。
キャラクターやストーリーに関する思い出
ーー妹と生き別れた熱い性格の主人公のラグナや、ヒロインである吸血鬼の娘・アルウェンといった登場人物も印象的でした。思い出に残っているキャラクターはいますか?
近藤:やはり主人公のふたりですね。本作は続編であるものの、チャレンジャブルなスタッフが集まっていたので「新しい主人公で作りたいよね」という話になりました。
●『ツヴァイ2』プロローグ
愛機トリスタン号を駆る若きトレジャーハンター・ラグナは、ハンター協会からの運搬依頼で、浮遊島イルバードを目指していた。
しかし到着直前、突如現れた2匹の翼竜がトリスタンを襲う。
翼竜たちと激しいドッグファイトを繰り広げ、なんとか撃退しようとするも、不意を突かれて愛機を撃墜されてしまう。
そのとき、浮遊島イルバードの一角へと落ちていくトリスタン号を眺める1人の少女がいた。彼女は背中にある漆黒の翼を広げ、墜落したラグナの元へ飛び立った。
ラグナが彼女の「下僕」としてふさわしいかを確かめるために・・・
世界観については、「地上がない浮遊島だけの世界」=「飛行機で行き来する世界」という部分をベースに、主人公のラグナが飛行機乗りということが決まりました、
そして、初代『ツヴァイ』で残された六魔王などの設定も取り込みながら、吸血鬼一族のアルウェンがラグナと「血の契約」を結ぶという設定も決まっていき、世界観を固めていった流れです。
▼主人公のラグナ(声優:野島健児)。愛機「トリスタン号」で旅する若きトレジャーハンター。行方不明の妹を探しています。
▼最高位の魔族である吸血鬼一族の姫君で、ムーンブリア城の主であるアルウェン(声優:ゆかな)。瀕死のラグナを救うために「血の契約」を結び、行動を共にすることに。
▼アルウェンに仕える使い魔の妖精・ルウ(声優:今野宏美)。ゲームシステム的にも、いろいろと冒険をサポートしてくれます!
あとはサブキャラクターもいろいろなキャラクターがいましたね。自分もそうですが、おそらくゲームを遊んだ方ならギャランドゥのエクササイズはずっと思い出に残ると思いますし(笑)
▼ミラクルでマッチョな謎の覆面超人・ギャランドゥ。声優が若本規夫さんという時点で、なんとなくキャラの方向性が想像できるはず(笑)。ゲーム中では、何度もマッスルなエクササイズを見せてくれます!
ーー「餓狼狩り」の異名を持つ賞金稼ぎ(バウンティハンター)のオデッサ(声優:安井絵里)や、かつて吸血鬼を封じた王族の末裔的なお嬢様フィオナ(声優:山口繭)など、本当にキャラが魅力的でした!
近藤:フィオナなんかは、今考えると『軌跡』シリーズに登場しそうなキャラですね。主人公たち以外のサブキャラクターも本当に個性的で、『軌跡』シリーズの物語が好きな方にも楽しんでもらえると思います。
ーーペンギンやカッパといったキャラクターもいましたね。
近藤:カッパはミニゲームに登場するんですけど、むかつくキャラクターでした(苦笑)。
ただ、ミニゲームがおもしろすぎて、ちょっとしたテストプレイのつもりが3時間ぐらいプレイしてしまいました(笑)。
ーーミニゲームもクオリティが高かったですね。
近藤:『ツヴァイ2』は『イース』としての制作から方向転換して1年ぐらいで作りましたが、とても濃密な時間だったため、これだけのクオリティのものが作れたのだと思います。
『ツヴァイ2』は弊社の他のタイトルと比べると、本当に自由な作風で、いい意味で行儀のいいタイトルではないので、ぜひ若い方にこそプレイしてもらいたいですね。
ーー海外での評価はいかがですか?
近藤:北米市場で『イースVIII』の評価が高いので、アクションゲームが好きなユーザーさんと『ツヴァイ2』の相性はよいかもしれませんね。
海外ではSteamで『ツヴァイ2』の配信をスタートしたので、どういった感想をいただけるのか楽しみですね。
▼個人的には『軌跡』のストーリーが好きな人にも、『イース』シリーズのアクション性が好きな人にもおすすめの、いわば日本ファルコム作品の到達点の1つとも呼べる傑作です。もちろん、音楽も神曲! もし本作を知らなかった人は、ぜひ一度PVをご覧いただき、ワクワクしてほしいです!
ーーそういったタイトルが、「ひかりTVゲーム」のようなクラウドゲームサービスでよみがえるのはうれしいですね。
近藤:そうですね。パッケージが手に取りづらくなってしまったり、動作環境がなくなったりしてしまったタイトルが復活するのは、我々としてもありがたいです。
ぜひ、この機会に遊んでみてもらえるとうれしいですね。
▼ペットを連れ歩けるなど、とにかく楽しいゲームシステムが盛りだくさん!
ーー個人的には『ダイナソア リザレクション』や『モナークモナーク』、『ブランディッシュ4 -眠れる神の塔-』や『ザナドゥネクスト』なんかもひかりTVゲームで遊べるようになったら、思い残すことはありません!
近藤:マウスクラッシャーと呼ばれた『ブランディッシュ』みたいに、PCでのマウス操作を前提としたゲームなどは、クラウドゲームサービスへの移植でも難しいかもしれませんが、そういったなつかしのタイトルがなんらかの形で遊べる環境があると、ゲームの作り手としては本当にうれしいですね。
余談ですが、実は『ザナドゥネクスト』の続編は、一時開発していたんですよ。でも、あまりに一品モノのダンジョンやトラップばかりで、開発スケジュールがあまりにかかりすぎるので、発表前に開発中止となりました。
ーーなんと! あの、例えばの話ですけど、クラウドファウンディングなどでお金が集まれば、往年のPCゲームの続編が発売される可能性なんかも!?
近藤:そこは開発費の問題というよりも、開発リソースの問題や開発チームのモチベーションなどによるところが大きいので、クラウドファウンディングでは難しいでしょうね。
弊社の場合は社内開発が基本ということもあり、開発チームのリソース的な問題も多いものですから。
ただ、最新作に限らず、少し昔の作品であっても、我々が作ってきた作品に対して反響や感想をいただけること自体は本当にうれしいですし、モチベーションにつながる部分があります。
もしこの機会に『ツヴァイ2』を遊んで、おもしろいと感じていただけたら、ぜひ感想をいただけるとうれしいですね。
ひかりTVゲームとは?
「ひかりTVゲーム」はNTTぷららが提供する、日本初のテレビ向けクラウドゲームです。
ゲーム専用機やソフトのインストールは不要で、手軽ですぐに楽しむことができるのが特長です。月額540円(税込)で、70タイトル以上のゲームが遊び放題で提供されていますよ!
→詳細はこちら:ひかりTVゲーム公式サイト
【ひかりTVゲームで遊べる主な日本ファルコム作品】
・ツヴァイ2 プラス
・イース Ⅰ&Ⅱクロニクルズ イースⅠ
・イース Ⅰ&Ⅱクロニクルズ イースⅡ
・イースVI~ナピシュテムの匣~
・イース~フェルガナの誓い~
・英雄伝説 空の軌跡FC
・英雄伝説 空の軌跡SC
・英雄伝説 空の軌跡the3rd
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