妹尾隆一郎の旅立った時の様子について


よくメールで「妹尾さんの最後はどんな様子でしたか?」
と聞かれましたのでホームページにその時の様子を書くことにしました。

入院した時から体をさすってあげると気持ちよさそうな顔をして
「幸せだなあ」と言って涙を流すことがよくありました。

17日の朝、血圧が90ほどでした。
看護師さんから「低いですね」と言われましたが、
健康な時はいつも朝はそれくらいでしたし、
本人もそれほど悪い様子ではなかったのでそんなに気にしないでいました。

何時間か経って血圧を測ったら60になっていました。
ちょっとダルそうな感じはあったのですが、ふつうに話が出来ました。

主治医の先生が私だけにそっと
「血圧が60になると普通はもうお話が出来なくなるんですけどね」
「会わせたい方がいたらすぐに連絡をして下さい」と言われましたので、
息子の泰隆さんと隆一郎さんの妹さんに連絡をしました。


少し経って妹さんが来てくれました。
その時も3人で普通に会話をしました。
その妹さんが私に
「ご飯を食べてないんでしょう?
私がついててあげるからご飯をゆっくり食べてらっしゃいね」
と言ってくれたのでお言葉に甘えて病院のレストランに食事をしに行きました。

帰ってくると、妹さんが
「お兄ちゃんがチュパチュパくれって言うの。分かるわけないわよね、
ティッシュを水に含ませて口に咥えさせたら
『違う!なんで分からないんだ!』と怒られたの」
と言っていました。
それを隆一郎さんも笑顔で聞いていました。
私が「サイダーでいいのね」と言いコップにサイダーを入れて
スポンジブラシに浸して口にもっていくと満足そうにチュパチュパしていました。

その後も話をするだけではなく携帯をいじりメールも電話もしていました。

ただ発信相手を探すのに苦労していました。
その様子を見た時はちょっとおかしいなと思いました。

お昼頃から少し息苦しそうになりました。
その後息子の泰隆さんとその叔父の富士彦さんがいらして、
苦しそうながらも話をする事が出来ていました。

泰隆さん達が帰った後、私の問いかけに応えなくなり、
私は一人だったのでとても不安になりました。

それから何時間か経ったら、まるで元気だった頃のように
腕を枕にして少し寝息を立てて穏やかに眠り始めました。

まるで、そのうち「あーよく寝た、腹減ったなあ」と言って、
起きてくるのではないかと思うほど気持ちよさそうに寝ていました。

それで低くなっていた血圧が上がっているのではないかと思い、
私の持っていた血圧計で測ってみましたがエラーになりました。

エラーになるのは最高血圧が54以下だと看護師さんから聞いていました。

ですから、「あぁ、やっぱり血圧は上がってないんだ」とがっかりしました。

少し経って、看護師さんが見に来てくださって
「声をかけてみてもいいんですよ」と言ってくれたのですが、
あまりにも気持ちよさそうなので、このまま眠らせてあげたいと私は言いました。
その後交代の看護師さんがいらして、大きな声で
「妹尾さん、妹尾さん、これから担当する看護師です」
と名前を言うと隆一郎さんは目を覚ましました。
キョロキョロと周りを見てまた目を閉じました。

何分か経ったでしょうか。
また看護師さんがきて
「90あった脈拍が60に今下がったので」
と様子を見にきました。

でも変わった様子はなく気持ちよさそうにねています。

それからどれくらいたったでしょうか。
急にパチっと目を開けて私の顔をじーーーーーーーーっと見つめました。
短かったかと思うのですがとても長く感じました。
そのあと静かに目を閉じてまた気持ちよさそうに眠り始めました。

気がつくと少し息が弱くなったような気がしたので
手を口のところに当ててみました。
するとたしかに息が弱くなっていました。
看護師さんに「息が弱くなったみたい」と言いました。
そうしたら次の息がもっと弱くなって思わず
「まだ死なないで!逝かないで!」「もう一度ハーモニカを吹いて!」
と強く呼びかけたのですが、もう息をすることはありませんでした。

看護師さんは私に
「気がすむまでお二人でいらして下さい」
と静かに病室を出て行きました。

苦しむことなく眠るように穏やかに息を引き取りました。

妹尾隆一郎は幸せな気持ちで旅立ってくれました。
そのように旅立ってくれたことは私も幸せです。

2017年 12月21日 妹尾 菊江