うま味調味料って危険なの?
こんにちは。ヒッサンです。
料理の味を決めるのってなかなか大変ですよね?
塩を入れたら辛すぎたり、砂糖って感じでもなかったり…。
さあ、そんなときには「うま味」をプラスしてみると良いかもしれません!
今ではたくさんの種類の「うま味調味料」なんてものが出回っています。
「味の素」なんかが有名ですよね。あの白い粉をパパっと料理にかけるだけでビシッと味が決まっておいしくなってくれます。
でも、「危険性があるんじゃないの?」、「何か害のあるものが入ってるんじゃないの?」なんていう不安があるのも事実。
今でこそ「うま味調味料」という名前でしたが、もともと「化学調味料」という名前で販売され、なんだか怪しげに聞こえてしまいますよね。
今回はそんな「うま味調味料」の名誉挽回をさせてください!
なんだかよくわからないものに対する不安は、ホントのことを知ればスッキリ解決。
みなさんが抱くであろう不安に対して、それぞれ順番に説明していくので、よーく読んでくださいね。
ちなみに今回の記事はこちらの記事の続きになります。合わせて読めば、もっと理解が深まるはずですよ!
目次
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〇 工業的に作られてるんだから、体に悪そう…。
うま味調味料というと、その成分として「グルタミン酸ナトリウム」が有名です。
他にも色々と含んでいたりしますが、基本的にはこれが多いでしょう。
さて、このグルタミン酸ナトリウムってどうやって作られるんでしょうか?
なんとなく、工場のようなところで、よくわからないけどすごい機械に材料を入れたら、グルタミン酸ナトリウムの出来上がり!!
僕も実際、詳しく知るまではこんなイメージでした笑
こういうイメージだと「人工物!」っていう感じがして、それはなんだか体に悪そうですよね…。
では、代表的なうま味調味料である「味の素」がどう作られているのかを確認してみるとどうでしょう?
「サトウキビから作られています」と書かれていることが多いですね。
うーん、これはまあ間違ってはいないんですが、大事な部分を言ってもいないですね。
はい。それではここでグルタミン酸ナトリウムがどうやって作られるのかを簡単に見てみましょう。
グルタミン酸ナトリウムはこうして作られる!
この「グルタミン酸ナトリウム」を作るには、ある生き物たちの力を借りています。
その生き物とは「微生物」!
微生物は、その名の通りとーっても小さい生き物たちのことです。
彼らと人間の生活は密接に関わっていて、正直な話、彼らがいなければ人間は生きていくことすら困難でしょう。
そして、この微生物たちに「発酵」をしてもらうことで、グルタミン酸ナトリウムを作り出しています。
発酵ってなに?と思ったら、難しく考える必要はありません。
発酵とは、「微生物たちが生きていくこと」です!
例えば人間で考えてみると、人間は生きていくためにご飯を食べて、体の中で糖分や脂肪、タンパク質なんかを作り出して「生きています」。
これと同じで、微生物もご飯を食べて、体の中で様々なものを作り出します。
そして、人間と微生物では「ご飯」に当たるものや、作るものが違うので、もし微生物が作り出したものが人間にとって有用なら、これを利用できます。
これが「発酵」なんですね。
先ほど出てきたサトウキビは、まさにグルタミン酸を作る微生物にとっての「ご飯」に当たります。
そして、微生物によって作られたグルタミン酸をナトリウム化することでグルタミン酸ナトリウムができています。
だから、サトウキビが直接、グルタミン酸ナトリウムに変わるわけではないんですね。
このように、現在はうま味調味量の成分は「発酵法」によって作られています。
人為的ではありますが、決して人工的に、怪しい化学薬品なんかを混ぜたりして作られているわけではないんですよ。
しかも、この「発酵」は自然界でも普通に起きていますし、しょうゆや味噌だって発酵によって作られています。
さあ、まだうま味調味料が「人工物」に思えますか?
〇原料が「石油」だって聞きました。そんなの体に悪いに決まってる!
先ほどの話を読んでこられた人は、原料は石油じゃないよ!微生物が作ってくれてるんだよ!と言い張れることでしょう。
でも、この「原料が石油」だという話、残念ながら、あながち間違いでもないんです。
はてさて、うま味調味料の原料は「石油」なのかどうか?
この真実は、実は過去にありました。少しだけ時間をさかのぼってみましょう。
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かつては石油から作られていた
今でこそ味の素は微生物によって作られていますが、昔はそうではありませんでした。
1970年ごろ、当時はまだ、都合よくグルタミン酸を発酵によって作り出してくれる微生物が見つかっていませんでした。
グルタミン酸ナトリウムを作るためには、別の方法を取るしかありません。
そして、その別の方法の1つであり、さらに、残念なことにコストの面で最も優れていた方法が「石油による製法」でした。
石油には、発がん性物質であるタールなどが含まれていますから、石油そのものが人間にとって害があることは言うまでもありません。
そして当時では、この石油に含まれている有害な物質について、「取り除く努力はしているが、完全に取り除けているかはわからない」というのが正直なところでした。
このように、「かつては」石油から作れら、害毒性が問題になっていた時期もありました。
しかし、しばらく経ってグルタミン酸を作り出す微生物が見つかり、今ではもちろん石油ではなく、微生物によって作られています。
石油から作られていることへの不安は、どうやら今ではするだけ無駄のようです。
〇たくさん食べたら体に悪いんじゃないの?
はっきりと言いましょう。体に悪いです。間違いなく。
これはもう、疑うべくもありません。
ですがこう言ってしまうと、まるでグルタミン酸ナトリウムが悪者であるかのようになってしまうので、弁解のために少々説明をしていきましょう。
「たくさん」取れば塩でさえも危険なものである。
さて、「たくさん」のとらえ方というのは人それぞれだと思うので、データから考えてみましょう。
みなさんは、「LT50」というものを知っていますか?
これは「Lethal Dose 50%」の略で、日本語では「半数致死量」といいます。
この数値は、動物の体重1㎏あたり、その物質を何mgの摂取で、投与した動物の半数が死に至るのかを示したものになります。
わかりやすく言えば、「この量だけ摂取したら大変危険だ」ということです。
下の表を見てみてください。(長いので、とりあえず下まで飛ばしましょう。)
名称 | 半数致死量(mg/kg) | 含有するもの・用途 | 出典・備考等 |
---|---|---|---|
ボツリヌストキシン(A) | 0.00000037 | ボツリヌス菌 | [1]より。資料により非常に幅が大きい。 |
テタヌストキシン | 0.000002 | 破傷風菌 | |
マイトトキシン | 0.00005 | 有毒渦鞭毛藻 | |
パリトキシン | 0.00025 | スナギンチャク類 | |
ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD) | 0.0006~0.002 | 産業副産物 | [2]などより。種による特異性などを含め緒論あり。 |
ベロ毒素 | 0.001 | 病原性大腸菌・赤痢菌等 | |
テトロドトキシン | 0.01 | フグ他 | |
VX | 0.02 | 化学兵器 | 下の濃度の項も参照 |
リシン | 0.03 | トウゴマ | |
ミクロシスチン | 0.05 | 藍藻類 | [3] |
アコニチン | 0.05~0.1 | トリカブト | |
α-アマニチン | 0.1 | 毒キノコ(ドクツルタケ等) | [4] |
モノフルオロ酢酸 | 0.1 | 殺鼠剤 | [5] |
サリン | 0.35 | 化学兵器 | [6] |
d-ツボクラリン | 0.6 | クラーレ、矢毒 | |
コルヒチン | 0.6 | イヌサフラン他・医薬 | [7] |
ストリキニーネ | 0.6~2 | マチン、殺鼠剤 | |
ニコチン | 1~7 | タバコ | |
シアン化カリウム | 3~7 | 試薬(いわゆる「青酸カリ」) | |
亜砒酸ナトリウム | 10 | 試薬(いわゆる「ヒ素」) | |
パラチオン | 10 | 農薬(有機リン系) | |
黄リン | 10 | 試薬 | [8] |
メタミドホス | 10~30 | 農薬(有機リン系) | |
塩化スキサメトニウム | 10~50 | 筋弛緩剤 | [9] |
酢酸タリウム | 30~40 | 試薬 | [10] |
アジ化ナトリウム | 46 | 試薬 | [11] |
DDT | 110 | 農薬(有機塩素系) | [12] |
モルヒネ | 120~500 | ケシ、麻薬 | |
メタンフェタミン | 135 | 覚醒剤 | |
カフェイン | 200 | 茶・コーヒー等 | |
トリフルオロ酢酸 | 200 | 試薬 | [13] |
パラコート | 250 | 除草剤(ピリジニウム系) | [14] |
マラチオン | 250~600 | 農薬(有機リン系) | [15] |
2,4-D | 375~666 | 除草剤(有機塩素系) | |
アセチルサリチル酸 | 400 | 医薬(アスピリンなど) | |
スコポラミン | 1200 | チョウセンアサガオ等・医薬 | |
ホウ酸 | 2000~4000 | 試薬・医薬 | [16] |
塩化マグネシウム | 2800~4700 | にがりの主成分 | [17] |
塩化ナトリウム | 3000~3500 | 食塩 | |
エタノール | 5000~14000 | 酒類 |
非常に個人差が大きい |
ビタミンC | 12000 | 栄養素 |
wikipediaより
例えば、一番上の「ボツリヌストキシン(A)」という物質は「ボツリヌス毒素」とも言われ、その半数致死量は、わずかに0.00000037mg/㎏。
体重が60㎏の人であれば、60倍して、0.000022mg
つまり、体重が60㎏ある人間の場合、わずかに0.000022mg摂取しただけで、大変危険であるという恐ろしい毒素だということが分かります。
つづいて、表の下から3番目を見てみましょう。
一番左に「塩化ナトリウム」と書いてあるのが分かりますか?
これは、いわゆる「食塩」です。
では、食塩のLD50はどれだけでしょうか?
3,000~3,500mg/㎏とありますね。
体重60㎏の人間であれば、180,000~210,000mg、およそ200gほど。
大さじにして約11杯分を一度に食べてしまえば、例え食塩であっても、命に危険が及ぶ、ということなんですね。(一度に摂取した場合です)
なるほど驚きです。確かに「たくさん」摂れば、塩であっても命に関わるようです。
でも、みなさん。そんなに「たくさん」食べますか?
グルタミン酸ナトリウムだって同じです。
もちろん「たくさん」食べれば、大変危険で有害なものですが、普通に食べている分にはそんなことはありません。
塩や砂糖も同じなのに、どうしてかグルタミン酸ナトリウムばかりが悪者にされてしまうようです。
グルタミン酸ナトリウムを「たくさん」食べれば危険だとまだ思っているような人は、もっと身近で大量にあるものついて心配した方がいいでしょう。
どうぞ色んな研究機関に訴えてみてください。
「塩は200gも取れば命に関わる。なんて危険なんだ!!」と。
さいごに
さて、今回はまた長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
うま味調味料というのは、正しく使えば、とっても便利でおいしい調味料です。
もちろん使う使わないは個人の自由ですが、「なんとなく不安」という理由だけでうま味調味料のすべてが否定されてしまうのは非常にもったいない気がします。
ここまで読んでくださった皆さんはきっと「うま味」や「うま味調味料」というものを十分に使いこなせることでしょう!
料理というのは、とても化学的で科学的なものです。
だから、色んなことの「なぜ?」が分かれば、料理はもっともっと楽しくなるはず!!
これからもこういった記事は時々書いていくので、よかったら目を通してみてください。
それでは今回はこの辺で!また次回です。