同じ量の白米を食べても血糖値が上がらない方法
糖尿病の多くは、特に初期のうちは自覚症状がありません。そのため、健康診断などで血糖値が高めと指摘され、食事に気を付けるようにいわれても、食生活をなかなか変えられないということがあります。
そして、気づいたときには糖尿病が進行してしまっていたという患者さんは、非常に多いのです。
特に、日本人の主食である白米を控えるのはつらいものがあるでしょう。
しかし、そんな人に朗報です。白米を食べても、食後血糖値の上昇が緩やかになる「ごはんの食べ方」が科学的に解明されているのです。
杉山みちこ教授らによる大規模調査によると、白米単体でごはんを食べるよりも、混ぜごはんやかけごはんにしたほうが血糖値の上昇が抑えられると判明したのです。
つまり、「納豆ごはん」や「卵かけごはん」は、同じごはんの量でも、白いごはん1膳に比べて血糖値が上がりにくいのです。
とろろごはんの血糖値の上昇は白米の約半分
ごはんを主食にしている日本人の場合、白米にどういう食品を組み合わせるかを意識することが大切になります。
GI値(グリセミック・インデックス)という食後血糖値の上昇度合を示す指標があります。
GI値はヨーロッパやカナダ、オーストラリアなどで積極的に取り入れられ、糖尿病の食事療法としても浸透している指標です。
しかし、インスリンの分泌能力は人種によって差がありますし、日常的に摂取する食材も日本特有のものがあります。
そこで、杉山みち子教授の調査結果と、我々日本GI研究会が計測したものを合わせた、日本食の日本人によるGI値を、私たちは糖尿病の患者さんへの食事指導に活用しています。
この指標では、ごはん1膳(白米約150g)のGI値を100としたときに、
・白米に近い(GI値83以上)の食品=「高GI」
・中程度(GI値65~82)の食品=「中程度GI」
・64以下の食品=「低GI」
と分類しています。
普段の食事では、なるべく中程度GIから低GIの食品を多く取るように指導しているわけです。
GI値で見ると、すりおろしたナガイモをかけた「とろろごはん」は、たいへん優秀な低GI食です。普通に白米だけを食べたときより、とろろごはんのほうが血糖値の上昇度合が半分ほどゆるやかになります。
高GI食である白米が、とろろをかけただけで低GI食になるのです。
これは、ナガイモに含まれるネバネバ成分であるムチンによる効果です。ムチンは食物繊維の一種ですが、食物繊維の働きで、腸内での糖質の吸収を遅らせるからです。
かけごはんのほかに、ヒジキやワカメ、タケノコ、シメジ、マツタケ、コンニャクなど、食物繊維が豊富な食材を組み合わせた「混ぜごはん」も、血糖値の上昇がゆるやかになります。これはもう、ごはんに混ぜたり、かけたりしない手はありません。
左の表は、白米をいちばん血糖値が上がりやすい食品としたとき、混ぜごはんやかけごはんがどれくらい血糖値の上昇を抑制するかを示しています。
下にいく(白米に近づく)ほど血糖値が上がりやすく、上にあるほど血糖値が上がりにくくなります。いずれも、白米単体で食べるよりも血糖値の上昇がゆるやかになるわけです。
ただし、これはあくまで茶碗1杯分のごはんで比較した場合です。
おいしいから、血糖値が上がりにくいからと食べ過ぎてしまっては意味がありませんので、味つけは薄めにして、よくかんでゆっくり食べるようにしてください。
冷やごはんも血糖値が上がりにくい
また、炊きたてのごはんはとてもおいしいものですが、血糖コントロールの点からいうと、ごはんは一度冷えたもののほうが、血糖値の上昇はゆるやかになります。
これは、冷やすことによってごはんのでんぷん質が「レジスタントスターチ」というでんぷんに変わるためです。
レジスタントスターチを日本語に直すと、「難消化性でんぷん」となります。つまり、消化されにくいでんぷんという意味です。
同じ量、同じカロリーの炊きたてのご飯と冷えたご飯を比べると、温かい炊きたてのごはんは、でんぷんがほとんど小腸で吸収されるため、血糖値が急激に上がります。
一方で、冷えてレジスタントスターチがふえたごはんは、小腸で吸収されるのに時間がかかり、血糖値が上がりにくいのです。
冷やごはんでお茶漬けをするという食べ方がありますが、これは血糖値を上げないお勧めの食べ方になります。
一度にたくさんごはんを炊いた後、小分けして冷凍しておくのもよいでしょう。
酢と冷やごはんの効果で血糖値上昇を抑える
また、オーストラリア・シドニー大学のミラー教授の実験によると、すしのGI値がとても低いことがわかっています。
では、なぜすしは血糖値を上げにくいのでしょうか。
まずは、冷やごはんによるレジスタントスターチの効果が考えられます。
加えて、酢が血糖値を上げにくくするとお話しましたが、冷やごはんの効果にさらに酢が加わることで、血糖値が非常に上がりにくくなります。
先に紹介した杉山みちこ教授の調査では、白米と酢、魚との組み合わせについても血糖値の上昇具合を調べています。
普通に白米を食べたときの血糖値の上昇度数を100とすると、すし飯にしただけでも、血糖値の上昇度数は7割がた抑えられます。
そして、すし飯にカツオのタタキやマグロ、ホタテなどの魚貝を乗せると、血糖値の上昇はさらにゆるやかなものになります。
食べ方次第で、ごはんは決してあきらめなくてもよいということがおわかりいただけると思います。
ごはんの食べ方をうまく工夫して、血糖値の管理に活かしてください。