リニア中央新幹線の建設工事を巡る談合事件で、大手ゼネコン・大林組(東京都港区)の社員が、東京地検特捜部と公正取引委員会の任意の事情聴取に「大手4社で工事を均等に割り振ろうと思った」などと説明していることが捜査関係者への取材で明らかになった。4社のうち大成建設(新宿区)幹部が準大手ゼネコンなどに受注を断念するよう働きかけていたことが既に判明しており、特捜部などは、大手で「うまみ」を分け合い集中的に受注しようとしたとみている模様だ。
受注調整していたとみられるのは、鹿島(港区)、大成建設、大林組、清水建設(中央区)の4社。リニア工事の事業主体であるJR東海(名古屋市)などはこれまでに22件の工事を発注。大手4社を中心とする共同企業体(JV)はこのうち15件を受注している。
4社はそれぞれのJVで3~4件を受注。JR東海は発注工事の契約金額を公表していないが、関係者によると、4社の受注総額はそれぞれ数百億円で大きな差はないという。
大林組の社員は事情聴取に「リニアはめったに出ない大きな工事。4社に均等に割り振ろうと思った」と説明。特捜部などは、契約額に差がつかないように4社間で調整したうえで、巨額の工事を集中的に受注しようとしたとみて捜査を進めている模様だ。
リニア工事の業者選定手続きを巡っては、大成建設の元常務執行役員が、4社以外の複数のゼネコンに受注を断念するよう働きかけていたとみられることが判明している。大手4社が、工事を平等に受注できるよう調整する一方で、他の準大手や中堅ゼネコンに対し、4社の調整結果に従わせようとした構図が浮かぶ。
特捜部は今月8日、大林組を偽計業務妨害容疑で捜索。その後、大林組は公正取引委員会に談合を認めて違反を申告する意向を伝達した。【飯田憲、平塚雄太、小林直】