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異なる文化、信念、歴史、技術

Facebookのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)のミッションは、世界中の人々を結びつけることだ。

2015年にFacebook上でブッククラブ「ア・イヤー・オブ・ブックス」を開設することにしたのも、ひとつにはそのミッションを達成するためだ。このブッククラブでは「異なる文化、信念、歴史、技術」に主眼を置いた本の数々が紹介されている。

娘のマキシマちゃんの誕生により、2週間に1冊の本を読むという目標は達成できなかったものの、ザッカーバーグCEOは2015年の終わりまでにブッククラブで選りすぐりの本を23冊紹介した。

ここではザッカーバーグCEOが選んだ本と、それらを万人の必読書として薦める理由をまとめた。まずは8冊を紹介しよう。

1『歴史序説』 イブン=ハルドゥーン著

『歴史序説』(邦訳:岩波文庫)は、イスラムの歴史学者イブン=ハルドゥーンが1377年に書いた本だ。ハルドゥーンは本書で、歴史的文献のなかにある偏見を取り払い、人類の進歩における普遍的な要素を見つけ出そうと試みている。

歴史を科学的にとらえる革新的なアプローチにより、ハルドゥーンは現代社会学と歴史学の父祖のひとりとして名を残した。

「700年あまりの進歩を経た現在、当時信じられていたことの多くは誤りだと証明されているが、それでも総合的に考えれば、当時の理解や全体的な世界観を知るのはとても興味深い」とザッカーバーグCEOは書いている。

2『The New Jim Crow』 ミシェル・アレクサンダー著

アレクサンダーはオハイオ州立大教授で、人権活動家でもある。『The New Jim Crow』(邦訳なし)では、非暴力的な黒人男性が不当に刑務所に送られ、出所後は二級の市民として扱われている傾向を「ドラッグとの闘い」が助長してきたと訴えている。

「ここしばらく、刑事司法制度の改革に興味を持っていた。この本は、信頼を寄せている複数の人から強く薦められた」とザッカーバーグCEOは書いている。

3『国家はなぜ衰退するのか』 ダロン・アセモグル、ジェイムズ・A・ロビンソン著

『国家はなぜ衰退するのか』(邦訳:早川書房)は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学教授ダロン・アセモグルと、ハーバード大学の政治学教授ジェイムズ・A・ロビンソンによる15年にわたる共同研究をまとめたもので、2012年にアメリカで最初に刊行された。

著者らの主張によれば、「収奪的な政府」が統制権を利用して一部の限られた人の権力を強化するのに対し、「包括的な政府」はオープンな市場を生み出し、市民の自由な消費や投資を可能にするという。また、経済成長は必ずしも国の長期的な健全性を示すものではないとも訴えている。

ここ数年、ザッカーバーグCEOの慈善活動に対する関心は、同氏が裕福になるにつれてますます大きくなっている。同氏によれば、この本を選んだのは世界的な貧困の原因をより深く理解したかったからだという。

4『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』 マット・リドレー著

アメリカで2010年に刊行された『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』(邦訳:早川書房)は、人気サイエンス・ライターであるマット・リドレーの著作のうち最も多くの人に読まれた1冊であるとともに、おそらくは最も物議を醸した本でもある。

著者はこの本のなかで、市場という概念こそが人類の発展の源だと主張し、市場をできるかぎり自由に保てばその発展が加速すると訴えている。その結果としてアイデアが進歩すれば、気候変動や人口過剰という脅威に直面しても、人類の生活条件を持続的に向上させていくことができるという。

ザッカーバーグCEOによれば、この本を手にとったのは『国家はなぜ衰退するのか』とは逆の理論を提示しているからだという。『国家はなぜ衰退するのか』では、社会的な力と政治的な力が経済的な力をコントロールしているとされている。

「両方の見方に触れたあとで、どちらの考え方により共鳴できるのかに興味があった」とザッカーバーグCEOは書いている。

5『最底辺のポートフォリオ――1日2ドルで暮らすということ』 ダリル・コリンズ、ジョナサン・モーダック、スチュアート・ラザフォード、オーランダ・ラトフェン著

著者のダリル・コリンズ、ジョナサン・モーダック、スチュアート・ラザフォード、オーランダ・ラトフェンは10年にわたり、バングラデシュやインド、南アフリカにおける最底辺層の生活の金銭的側面を研究してきた。

その研究で得られた基本的な知見が『最底辺のポートフォリオ』(邦訳:みすず書房)にまとめられている。同書によれば、極度の貧困がはびこる場所は人々がその日暮らしをしている地域や賢明ではない購買判断が下されがちな地域ではなく、貯蓄をするための金融機関を人々が利用できない地域であるという。

「世界のほぼ半分――30億人近く――が1日2.5ドル以下で暮らしているという事実は、きわめて衝撃的だ。1日1ドル以下で暮らす人も10億人を超えている」とザッカーバーグCEOは書いている。「この本を読むことで、私たち全員が取り組めるより良い支援のあり方についても、なんらかの洞察が得られればいいと思う」

6『国際秩序』 ヘンリー・キッシンジャー著

『国際秩序』(邦訳:日本経済新聞出版社)は、元アメリカ国務長官のヘンリー・キッシンジャーが2014年に上梓した本だ。91歳のキッシンジャーはこの本のなかで、過去数世紀のあいだ、世界のさまざまな地域において帝国と政治力という概念がどのように理解されてきたかを分析。現代の世界経済が、しばしば緊張や暴力を伴う方法で世界をまとめてきた経緯を掘り下げている。

この本は「外交に関するもので、どうすれば世界中で平和的な関係を築くことができるのかを論じている」とザッカーバーグCEOは書いている。「子どもたちに残したいと誰もが願うような世界をつくるうえで、それは重要なことだ。私も最近、よくこの問題について考えている」

7『ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』 エド・キャットムル、エイミー・ワラス著

『ピクサー流 創造するちから』(邦訳:ダイヤモンド社)は、創業者のひとりの手によるコンピューターアニメの巨人ピクサーの物語だ。

キャットムルの語りには、経営と起業に関する貴重な知恵がちりばめられている。どんな会社でも、社員が本来持っている創造性を妨げないように意識しなければならないとキャットムルは本書で主張している。

「ピクサーのような偉大な会社がどのようにして築かれ、イノベーションと創造性が育まれたのかについて、当事者の書いた話を読むのはとても楽しい」とザッカーバーグCEOは述べている。

8『Sapiens』 ユヴァル・ノア・ハラーリ著

2014年に最初に刊行された『Sapiens』(邦訳なし)は、エルサレム・ヘブライ大学の歴史学者ユヴァル・ノア・ハラーリによる国際的なベストセラーだ。批評家にも高く評価されている。ハラーリはこの本のなかで、ホモサピエンスの進化をたどり、狩猟採集生活から、みずから力を獲得した「神」のような存在へと至る未来までを追跡している。

「『Sapiens』は、1300年代のイスラム知識人の観点から歴史を見た『歴史序説』の系譜を継ぐものだ。『歴史序説』と同じ疑問の多くを、現代の視点から探究している」とザッカーバーグCEOは書いている。

原文はこちら(英語)。

※ 中編:マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(中編)
※ 後編:マーク・ザッカーバーグが薦める「23冊の必読書」(後編)

(原文筆者:Richard Feloni、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:FLDphotos/iStock)

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