今のNHKに「受信料制度」は本当に必要なのか

放送法の理念とは大きくかい離している

NHKは国家権力からの独立性が認められているが・・・(撮影:尾形文繁)

受信料の徴収を合憲と判断した12月6日の最高裁判決に対し、違和感を持つ声がネット上に溢れている。

なぜ見もしないNHKに受信料を払わなければならないのか。災害報道や教育関連の放送に公共放送としての役割があるのだ、と言われてもなお、違和感をぬぐえないのは、民放の災害報道がNHKに比べて決定的に劣るという実感がないだけでなく、この説明だけでは「なぜ国営放送ではないのか」という素朴な疑問を解決できないからではないだろうか。

その疑問を解く鍵は、放送法1条2項にある。

戦争の教訓から認められた「独立性」

NHKの根拠法である放送法が誕生したのは終戦から5年後の1950年5月。この前年には、弁護士に自治を認めた弁護士法が誕生している。

戦前の弁護士は旧司法省に懲戒権を握られていたため、国家から弾圧を受け、国民の人権を守るという職務を全うできなかった。その教訓から、弁護士には国家権力から完全に独立した自治権が与えられたのだが、同じく戦時中国家権力の宣伝部隊となったNHKにも、国家権力からの独立性を認めた。それが放送法1条2項だ。

放送法は1条で、「放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする」とし、そのための原則として、同2項で、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」を謳っている。

国家権力のみならず、資本家の権力からも独立した放送局であるためには、国家にも資本家にも頼らない収入源を確保しなければならない。だから国民が負担する受信料なのである。

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  • NO NAME391e0c1c2382
    受信料支払済者の不公平回避のためスクランブル放送を導入すべき

    あれこれ屁理屈をコネて導入しないのは視聴不希望者からも強制徴収できるように利権にしがみつく執念のあらわれ
    up315
    down11
    2017/12/23 07:04
  • マシュー535474100a6d
    NHKが政府から独立しているか云々などはどうでもいい。見たくもない、見もしない放送に受信料の支払いを強制されるのが嫌なだけ。
    up329
    down34
    2017/12/23 06:22
  • NO NAME527714de7d07
     国会を通さないとNHKの予算は下りない。実質国営放送と同じ。
     アンテナとテレビを置いただけで、NHKを見る見ないにかかわらず、受信料金を強制的に徴収される。納得できるわけないでしょう。
     
    up303
    down13
    2017/12/23 07:15
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