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医療・健康・食 週刊現代

こんなにあった!がんになったら「払わなくていいおカネ」全一覧

申請しないと全額自腹です

2人に1人ががんになると言われる時代、高額かつ長期的な負担は誰もが避けたいと思うものだ。そのようななかで、公的な制度を最大限に活用すればかなりの額の助成が受けられることを知っておきたい。

水道代が年2万円割引に

「私はステージ3の大腸がんと診断され、がんを摘出する手術に併せて人工肛門を造設しました。がんの転移はその後みられなかったのですが、手術の後も、抗がん剤によって手足のしびれが強く、家事や仕事が思うようにできなくなりました。

先生と相談した結果、2級の身体障害者認定を受けたのです。『がんになったら200万円くらい用意しといたほうがいい』と友人に言われていたこともあり、治療費に対する不安はつきまといました。

入院や手術にかかった費用は52万円にもなりましたが、高額療養費制度で10万円に抑えることができました。

通院には割引料金で乗車できるタクシーを利用しています。公共料金は水道が年間約2万円、NHKの受信料は年間約1万3000円程度の割引です。

家族が乗る車の自動車税も年間3万円減免され、ほかにも使える制度は全面的に利用しています。現在も定期検査などで年間約10万円前後の医療費がかかるため、減免制度はありがたいです」

このように語るのは、東京都に住む石川由美子さん(68歳、仮名)だ。がんに罹ると、莫大な医療費がかかることは間違いない。抗がん剤や放射線治療のなかには、1~3割負担の健康保険ではとても賄いきれないものも少なくない。

2人に1人ががんになると言われている時代、その潜在的な不安から、民間の保険に入る人も多いだろう。

もちろんおカネの準備方法として保険は有効な手立てだが、がん患者の家計を助成する制度は公的なものだけでも数多く存在することは見落とされがちだ。

しかも、そのほとんどはこちらから申請しないと補助が得られず、全額自己負担が原則。あとから申請しても戻ってこないものもある。

後悔しないために、たとえいま罹っていなくてもがんになったら「払わなくていいおカネ」を知っておくことが大切だ。

 

冒頭の石川さんがどのような制度を利用し、これほど多くの助成を受けることができたのか、順を追ってみていきたい。

まず多くのがん患者が利用することになるのが、高額療養費制度と医療費控除である。

高額療養費制度は、年収や家庭環境に応じて、5万7600~10万円を超えた医療費を事後に取り戻すことができる、費用が高額になりがちながんの治療では不可欠な制度だ。

たとえば高度な技術を要する腹腔鏡手術なら、3割負担でひと月30万円以上かかることもあるが、この制度を利用すれば1回の手術を10万円程度に抑えられる。

最終的に戻ってくるとはいえ、数十万円の医療費を支払う余裕がない場合は「限度額適用認定証」を術前に申請しておけば問題ない。窓口での支払いが制度適用後の金額になっているはずだ。