悪いことだけが起きるわけじゃない。悪いニュースばかりが目立っちゃうけど、良いことと悪いことが交互に繰り返されながら歴史は綴られていくもんだ。
良いことだって見方によっては悪いことだし、悪いことだって良い側面もあったりするし、すっぱりと切り離して考えることができないわけで、表裏は常に一体なんだ。
というわけで2017年、様々な分野から明るいニュースをまとめてみたよ。
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動物&保全
1. メキシコが太平洋に世界最大の海洋保護区を指定
11月、メキシコは太平洋に15万平方キロに及ぶ世界最大の海洋保護区を指定した。バハカリフォルニア半島の南西390キロに位置するレビジャヒヘド諸島国立公園には、クラリオン島、ロカパルティダ島、ソコロ島、サンベネディクト島が浮かんでおり、ウミガメ4種、魚類344種、サメとエイ37種が生息している。2016年には世界遺産にも登録された。
References:Scientific American
2. ニュージーランドのキーウィの生息数が回復
ニュージーランドの象徴である鳥、キーウィ属の2種が絶滅危惧種指定を解除された。
飛ぶことができないため、ネコやイヌ、オコジョなど外部から持ち込まれた動物によって数を減らしていたが、30年越しの保全プログラムで生息数が回復。
保護区にはオカリトキーウィの成鳥(Apteryx rowi)450羽とノースアイランドブラウンキーウィ(Apteryx mantelli)17,700羽が生息すると推定されている。
References: Birdlife
3. ユキヒョウの絶滅危惧評価が改善
これまでIUCNのレッドリストで絶滅危惧IB類として扱われていたユキヒョウだが、絶滅危惧II類に変更された。
変更の理由は、これまで2,500頭未満と過小評価されていた生息数が、今では成獣7,367~7,884頭であると考えられるようになったことだ。
ただし、生息地の減少や密猟などで個体数自体は減少していることに加え、個体数の推定方法が非科学的であるとして、この決定を批判する専門家もいる。
References:Science Alert
健康
4. 培養された皮膚を男の子に移植
ドイツ在住のハッサンくんは接合部型表皮水泡症という遺伝性の難病を患っていた。おかげで皮膚が非常に弱く、傷・水泡・感染症に常に悩まされていた。
しかしイタリア、ボローニャの再生医療センターが、当時5歳のハッサンくんの健康な部位の皮膚を採取・培養し、失われた皮膚の80パーセントを移植するという手術を試みた。11月に発表された経過報告によれば、7歳になった彼は病床から抜け出て、普通の男の子らしい生活を送っているそうだ。
References:sciencemag
5. ブラジルで流行したジカ熱が収束
2017年5月、ブラジル保健省によって18ヶ月続いたジカ熱大流行の収束が宣言された。ジカウイルスは通常の大人なら感染しても軽い症状しか生じないが、妊婦に感染した場合、胎児に重大な障害を引き起こす。
今年の1月から4月半ばにかけての発症率は、2016年比で95パーセント減少。蚊の駆除政策が功を奏したとのことだ。
References:The Guardian
6. 遺伝子編集で難病治療に進展
DNAを切断し、そこに新しい配列を配置できる遺伝子編集ツール「CRISPR/Cas9」は、今年も目覚ましい成果を挙げた。
これを用いて新たに開発された変異種は、後成的スイッチを入れて遺伝病を治療するもので、人間での治験を控え注目を集めている。
一方、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)というまた別の遺伝子切断技術が、生体内ヒト遺伝子治療の治験に初めて利用された。治療の対象はハンター症候群であり、2018年にその成否が明らかになる。
References:Science News
関連記事:世界初。リアルタイムでDNAを編集する映像が公開される
7. コーヒーの効能が次々と明らかに
2017年11月に発表された研究によると、コーヒーを1日に3、4杯飲む人は、全く飲まない人に比べて、若死・心疾患・肝臓病・糖尿病・健忘症・いくつかのガンに罹るリスクが減少するという。
ただし健康にいいからといって、全く飲まない人がわざわざ飲むようなことは研究では推奨していない。また7月に発表された2本の研究は、コーヒーを飲む人ほど、健康で、死亡率が低いことを明らかにした。
References:The Guardian
宇宙
8. 太陽系に初の恒星間天体が飛来、しかも葉巻型「オウムアムア」
2017年10月18日、星間宇宙からやってきた初の天体が太陽系に進入した。ハワイの言葉で使者を意味する「オウムアウア」と名付けられたそれは、葉巻のような細長い形状をしており、10月15日に地球から2400万キロの地点を通過した。
ブレークスルーリッスンプロジェクトではそれが宇宙船の可能性があるとして観測を続けている。
関連記事:あの葉巻型の恒星間天体に宇宙人の探査機疑惑。専門家が調査を開始。
9. カッシーニが土星から最後のデータを送信
2017年9月15日、地球を発ってから20年目を1ヶ月後に控えたその日、NASAのカッシーニは土星の大気圏に突入しつつ、最後のデータを送信してきた。ミッション中、カッシーニは土星や衛星の素晴らしい画像やデータを大量に送り届けてくれた。
関連記事:ありがとう、カッシーニ!20年の土星探査ミッションを終えたカッシーニが撮影した美しい写真
10. スペースXでロケットの再利用に成功
2017年3月、スペースXはロケットの再利用が可能であることを証明した。同月30日、ファルコン9の第一ロケットを打ち上げ、その着陸に成功。
NASAはスペースXと提携し、貨物を国際宇宙ステーションに輸送するために使用済みブースターを利用する予定だ。一方、再利用ロケット開発のライバルであるジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンもニューシェパードの再飛行を実施。今回は乗客ダミーを乗せての実験だった。
SpaceX relaunches a used rocket, makes history
11. ジュノーが木星の大赤斑を撮影
2017年7月、NASAの探査機ジュノーが木星の詳細な画像を撮影し、「巨大な真紅の楕円の中で、暗い静脈のような雲がもつれ合う」大赤斑の姿を明らかにした。
ジュノーは2016年7月に木星に到着して以来、無数の写真を撮影しつつ、その高感度センサーで化学的組成などさまざまなデータを送り届けてきた。ミッションは2018年2月に終了し、ジュノーは最後のダイブを敢行する。
関連記事:まるでゴッホの絵画のようだ。木星探査機ジュノーが撮影した木星の写真
科学技術
12. スコットランドで世界初の洋上風力発電所が完成
10月、スコットランドのピーターヘッド沖で世界初の洋上風力発電所「ハイウィンド」による発電が始まった。
建設したのは深海のオイルリグ開発を行っていたノルウェーの企業スタトイル社。ハイウィンドの発電容量は30メガワットで、22,000世帯の電力を供給する。
References:bbc
13. バッテリー技術が向上
世界中が電気自動車や再生エネルギーの本格的な導入へ向けて大きく動き出している中、その電力需要を賄うための新しいバッテリー技術が求められている。
トヨタは高速充電が可能で容量も十分な全固体電池が”生産技術”段階にあると発表。ダイソンもまた全固体電池の開発を進めている。
一方、アルファベットは大型発電器向けの溶融塩電池、ハーバード大学の研究者は同様の用途に使う電解質電池やポリマー電池の開発を進めている。研究者によれば、市販に漕ぎ着けるまで2、3年だそうだ。
References:Ars Technica
14. アルファ碁が人間の囲碁棋士に勝利
5月、ディープマインドの「アルファ碁」が囲碁の現世界王者 柯潔との三番勝負で3局全勝を挙げ、人類との戦いに終止符を打った。
アルファ碁ゼロは人間の対局データを用いずとも碁を学習できることを証明。チェス、囲碁、将棋の3種のゲームで自己学習することが可能である。
関連記事:Google傘下のAI企業が対戦データなし、自己学習のみの囲碁AI「AlphaGo Zero」を開発。あっという間に世界最強に
All translated by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
14は世界が良くなったニュースというには賛否あるんでは?
個人的には話題として好きだけどさ
2. 匿名処理班
一番最後のはむしろ暗いニュースじゃないの?
3. 匿名処理班
アルファ碁はAIの特異点的には逆の意味のニュースになりそう
4. 匿名処理班
日経平均が23000円越え
5. 匿名処理班
最後は最高に暗いニュースやんけ
6. 匿名処理班
アルファ碁については人類が敗北したという事で残念だったんだけど…。
7. 匿名処理班
俺、ついに結婚する
8. 匿名処理班
良いニュースも核戦争が起きればすべて吹き飛んでしまう
9. 匿名処理班
7 数年前にカフェインアレルギーを発症してからはコーヒー業界のゴリ押しにはうんざりしている
ポリフェノールならリンゴやブドウで十分取れるしましてや健康のためにワインを飲む理由にはならない
10.
11. 匿名処理班
明日仕事だけどこの記事みたら元気でた。
がんばるフォイ
12. 匿名処理班
ダイソン卿はほんま凄いわ
13. 匿名処理班
アルファ碁が人間の囲碁棋士に勝利で世界が少し良くなった?
このニュ-スに関して世界が悪くなり始めたのでは?
14. 匿名処理班
ジカ熱のジカは、アフリカ(ウガンダ)のジカ森林って言う森の名前から来てるそうです。
15. 匿名処理班
風力発電のでかい風車は、貴重な鳥類を切り裂いて頃しまくる一面があるからって何度でも言いたい
16. 匿名処理班
AIに囲碁で人間が負けるのは、イヤなニュースでしたが…
17. 匿名処理班
動物の生息数回復や自然保護関係は特に喜ばしい。
18. 匿名処理班
最後を暗いニュースって言ってる人がいるが、人間の棋士の強さは個体限りの「才能」で引き継いでいけないがAIの処理能力というのは複製も継承もできる「技術」なんだぞ。
人間の道具が人間の限界を引き伸ばしたニュースだ、明るいニュースで間違いない
ところでエボラはもう収縮宣言だされたっけ?
19. 匿名処理班
※9
コーヒーマニアで海外の産地を訪れては飲み比べたり
収穫から一通りやった事もあるけど突然陰嚢湿疹を発症して
コーヒーも胃の刺激とカフェインがよろしくないので控える事になった
今でもコーヒーそのものは好きだけど
業界のゴリ押しとそれを見破れない日本の消費者双方にうんざり
どんな農産物でも商品でも詳しくなると消費者でいるのも生産者でいるのも
中間業者の粗利っぷりや税金の高さがバカらしくなるものではあるけどね
ポリフェノールといえばデカフェやノンカフェインにも含まれてるけど
カフェインフリーとか含めて売り手に有利な紛らわしいルール作って
しかもそれらは海外では珍しくも高くも無かったりするのに
自然派とか健康を謳う店では無闇にプレミア価格つけてたりする
ともかくあんまり盛りすぎると反動で売れなくなる勢いも激しくなりそう
20. 匿名処理班
アルファ碁は既に独学できるまでになったとか
AIの進化のスピードは速すぎて少し怖いな
21. 匿名処理班
悪いことばかりじゃないと 思い出かき集め カバンに詰め込むパルモ姐さんの明日はどっちだ?
22. 匿名処理班
まあ科学技術に関しては文明が滅びない限りは悪くならないよね
23. 匿名処理班
ニュースは基本的に悪いことばかり流すから世界は果てしもなく暗黒のように感じるが、現実の世界は徐々に改善されている。
貧困も餓死も病気も戦争も差別もどんどん減り続けている。
一方で教育やインフラはものすごい勢いで普及し続けている。
人間の努力する力は捨てたもんじゃないよ。
24. 匿名処理班
※15
25. 匿名処理班
※15
巨大な風車って巨大なほどゆっくり回ると思うんだけど。
26. 匿名処理班
※10. スペースXでロケットの再利用に成功
スペースXはNASAから補助金と技術提供を受けている半官企業なのでスペースXの功績とは言いがたい・・・
※12. スコットランドで世界初の洋上風力発電所が完成
風力はその日その日によって風の量が変わるため世帯に安定供給するのは不可能に近いため、結局は別に火力発電所を作る必要がある。なので作るコストや環境破壊分がマイナスとなる。
※13. バッテリー技術が向上
現在バッテリー製造には莫大なコストが掛かっており、バッテリーを使用すること自体が環境を破壊することに繋がっている(電気自体が火力発電等によって生み出されているため)、またガソリン車に掛かる燃料コストより電気自動車のバッテリー充電コストの方が効率が悪いので、電気自動車を載ることはガソリン車に乗るよりも環境破壊に貢献しているといえる。
これら3点は以前と変わらない、もしくは悪化したとも言える。
27. 匿名処理班
※15
ほんと。鳥殺しの機械だよな。
大嫌いだ。
28. 匿名処理班
※25
どうもそれがそうじゃないらしい。巨大な風車は先端速度がすさまじいことになるので、鳥が避けられる速度を超えているんだそうだ。私は鳥の学習に期待する派で、風車も電力多様化として賛成だけど何の発電方式にしても何らかのデメリットはあるんだよね。。。
29. 匿名処理班
※25
なるほど、そんな風車で死んでいる鳥はどうせ自然界でも生き延びられないからいくら死骸が転がっていても気にする必要ないってことね。
30. 匿名処理班
AlphaGoは人類がAIに敗北したとも言えるけど、そのAIを作ったのも人間なわけで、AlphaGoを作る過程で培った知識・技術は今後のAI開発に役立つだろうから、いいニュースとも言える。なんとも奇妙な話だ。
31. 匿名処理班
最後のはちょっと…
32. 匿名処理班
※7
おめでとう
33. 匿名処理班
洋上風力発電ってとっくに実用かされてるもんだと思ってた意外だったわ