「頼んだもんとちゃうやろ。いつになったら料理出てくるんや。はよ、皿を下げんかい」

 40代の料理長にイチャモンをつけた上、仲裁に入った男性客(69)に頭突きを食らわせ、大ケガを負わせたとして、兵庫県警は17日、介護サービス会社社長の金宗範容疑者(43=大阪市天王寺区)を傷害の疑いで逮捕した。

 金容疑者は17日夜、兵庫県有馬温泉の老舗ホテルに宿泊。午後9時ごろ、ホテル内の居酒屋で仲間10人ほどで宴会中、注文した料理が出てくるのが遅いことなどに腹を立て、店のスタッフに「責任者を呼んでこんかい」と、命令したという。

「金容疑者は謝罪に来た調理長を、その場で怒鳴りつけた。ホテル内の居酒屋ですから、そんなに広くはありませんので、店内は騒然としていました。5人ほどで飲んでいた別のグループの男性客があまりの横暴ぶりを見かね、金容疑者に対して『まぁ、まぁ』という感じでたしなめて、注意したそうです。そしたら金容疑者は、その男性客に食ってかかり、口論になった。そして男性客の顔をめがけて頭突きを見舞わせて、大けがを負わせた。金容疑者は通報で駆け付けた捜査員に取り押さえられ、現行犯逮捕されました」(捜査事情通)

■それぞれの社長が経営する会社は……

 義憤に駆られたのだろう。勇気ある行動に出た男性客は、関西で20店舗以上の保険調剤薬局チェーンを展開する会社の経営者。創業以来、「すべては患者さまのために」「患者さま中心主義」を掲げて、会社を成長させてきた。

 男性客は自身の会社紹介の動画で「会社というのは人でもっているものですから、一人一人が手をつなぎ、ハンドインハンドで経営していくのが我が社のモットーです」と企業理念を語っている。また従業員の女性薬剤師は「初めての店舗見学の時に、半日かけて長い間、3店舗をじっくり見学させてくれました。社員一人一人をとても大切にする会社なんだなと思い、入社を決めました」と働きやすさを強調している。

 一方、粗暴な振る舞いで店や他の客に迷惑を掛け、さらに父親ほどの年の離れた年長者に暴力を振るった金容疑者は、大阪市内でデイサービスを行う介護サービス会社を経営しているというから、何をか言わんや、だ。

 会社のHPには「われわれは、皆様の安心・安全で健康な生活を追求し、ご利用者様はもちろんのこと、ご家族の方々にもご満足いただけるサービスを目指してまいります」とある。

 とてもじゃないが、こんな暴力経営者が運営する介護サービスに「安心・安全で健康な生活」など、期待できない。