Acrobatの[印刷工程]ツールを使って「画像の解像度を調べる」、「テキストをアウトライン化する」、「特定のカラーを特色にする」、「判型を変更する」など、印刷向けで求められるPDFの編集方法を解説します。
[印刷工程]ツールの概要
今回使うツールは、[印刷工程]です。
[ツール]タブ、または、ツールパネルウィンドウで[印刷工程]をクリックして表示します。
[印刷工程]ツールには、次の機能が用意されています。
- 出力プレビュー
- プリフライト
- オブジェクトを編集
- 色を置換
- 分割・統合プレビュー
- PDF/Xとして保存
さらに
- ページボックスを設定
- トンボを追加
- ヘアラインを修正
- インキ
- トラッププリセット
macOS版では、[編集]メニューの[プリフライト…]をクリックして、[プリフライト]を呼び出すことができます。
- command+shift+Xキーのキーボードショートカットが用意されています。
- Windows版の[編集]メニューには[プリフライト]はありません。
今回は、この中でもよく質問をいただく、次の4つについて紹介します。
- 画像の解像度を調べたり、変更する
- テキストをアウトライン化する
- 特定のカラーを特色にする
- 判型を変更する
画像の解像度を調べたり、変更する
事前準備:単位の変更
事前準備として、環境設定で単位を変更します。
[環境設定]の[単位とガイド]カテゴリで[ページと定規の単位]を「ミリ」から「インチ」に変更します。
解像度の確認
- ドキュメントを開き、[印刷工程]ツールの[出力プレビュー]をクリック
- [出力プレビュー]パネル中央の[プレビュー]をポップアップして「オブジェクトインスペクター」を選択する
- 解像度を調べたいオブジェクトをドキュメント上でクリックすると、[画像の属性]セクションに「解像度:水平428.548ピクセル/in」のように表示される
つまり、この場合には、428.5ppiということです。
解像度の変更(1)すべての画像を対象にする
PDF内のすべての画像を対象にする場合には、[最適化されたPDF]コマンドを利用します。
[PDFの最適化]ダイアログボックスが開いたら、[ダウンサンプル]の値、[次の解像度を超える場合]の値を設定し、別名でPDFを保存します。
[次の解像度を超える場合]が「450」になっている場合、428.5ppiの画像は対象外ですので、対象とする場合には[次の解像度を超える場合]を「400」のように変更します。
解像度の変更(2)個別の画像を対象にする
個別の画像を対象にする場合には、Photoshopと連携します。
- [印刷工程]ツールの[オブジェクトを編集]を選択する
- 変更したい画像の上で右クリックし、[画像を編集]をクリック
- Photoshopが起動し、画像が開いたら[画像解像度]ダイアログボックスで[再サンプル]オプションをオンにし、変更したい解像度を値を入力します。
- 保存して、ドキュメントを閉じると、PDF内の画像が更新されます。
テキストをアウトライン化する
AcrobatでPDF内のテキストをアウトライン化するときの手順です。
- ドキュメントを開き、[印刷工程]ツールの[プリフライト]をクリック
- [プリフライト]パネルが開いたら、スパナのアイコンをクリック
- [文書]セクションの[フォントをアウトラインに変換]を選択し、パネル最下部の[フィックスアップ]ボタンをクリック
- PDFを別名で保存する
確認
- [ファイル]メニューの[プロパティ]をクリック
- [文書のプロパティ]ダイアログボックスが開いたら[フォント]タブに切り替え、フォント情報がクリアされていることを確認する
なお、テキストのアウトライン(Acrobatでは[フォントのアウトラインに変換])は、Acrobat DCからの機能です。
特定のカラーを特色にする
次のようにプロセスカラーを特色に変換してみましょう。
- ドキュメントを開き、[印刷工程]ツールの[プリフライト]をクリック
- [プリフライト]パネルが開いたら、パネル上部の「必須」のポップアップメニューから「プリプレス、カラーおよび透明」を選択
- スパナのアイコンをクリックし、「カラースペース、特色、インキ」のカテゴリを開く
- [指定されたプロセスカラーを特色ライトブラウンにマッピング]を選択し、オプションメニューから[フィックスアップを複製]をクリック
- [プリフライト:フィックスアップを複製]ダイアログボックスが開いたら、左上の[名前]変更する(「指定されたプロセスカラーを特色DIC116にマッピング」)
- ウィンドウを大きくして、次のように変更する
- 変換先カラー名:DIC116
- 変換先/代替カラーモデル:CMYK(%)
- 変換先/代替カラー値:0/78.1/52.5/0
- 同様に「DIC638」版を作成
- [指定されたプロセスカラーを特色DIC116にマッピング]を選択し、[フィックスアップ]ボタンをクリック
- [プロセスカラー名]に「Magenta」(変換元のプロセスカラー名)と入力する
- PDFを別名保存する
- 同様に「DIC638」をフィックスアップ(Cyan版に変更)し、別名保存する
確認
- [印刷工程]の[出力プレビュー]をクリック
- [特色版]をオフにするなどして確認する
判型を変更する
ここ数年、女性誌の中には、同じ内容で判型違いの雑誌が店頭に並ぶようになりました。一度、書き出したPDFを再度InDesignに貼り込んで変形し、再度、PDFに書き出すような手順を踏まず、Acrobatで判型を変更することができます。
今回は、B5サイズで作成したPDFを、AcrobatでA4サイズに変更する想定で解説します。
- ドキュメントを開き、[印刷工程]ツールの[プリフライト]をクリック
- [プリフライト]パネル右側の[オプション]をクリックして、[プリフライトフィックスアップを新規作成]をクリック
- [フィックスアップカテゴリ]から「ページ」を選択、[フィックスアップのタイプ]から「ページを拡大/縮小」をクリック
- [ページを拡大/縮小]の欄の[短辺]、[長辺]、[単位]を入力し、左上の[名前]に「A4サイズに拡大」などの名前を入力する
- [OK]ボタンをクリックしてダイアログボックスを閉じる
- [ページ]セクションに「A4サイズに拡大」が追加されるので、[編集]をクリックして[お気に入りに設定]をクリック
- [すべてを表示]をクリックして、「お気に入り」を選択。右下の[フィックスアップ]をクリック
- [PDFとして保存]ダイアログボックスが開くので、ファイル名、保存先を指定して[保存]をクリック
確認
- [文書のプロパティ]を開き、ページサイズを確認する
まとめ
今回は、[印刷工程]ツールを使って次の4つを実現する方法をご紹介してきました。
- 画像の解像度を調べたり、変更する
- テキストをアウトライン化する
- 特定のカラーを特色にする
- 判型を変更する
まだまだ、[印刷工程]ツールにはできることがたくさんあります。
Acrobat上でPDF内のテキストやフォントの変更も可能ですが、Acrobatに頼りすぎず、まずはIllustratorやInDesignで完結するのが先決です。