広島から、往年のスクリューボール・コメディを思い起こさせる、オトナのラブコメディが届いた。

『ガメラ』『デスノート』などでお馴染みの金子修介が監督、脚本を務める『こいのわ　婚活クルージング』は、広島県庁で実際に行われている「みんなでおせっかい！『こいのわ』プロジェクト」をモチーフに書き下ろされた「史上初の婚活映画」だ。

門脇誠一郎(風間杜夫)は、広島の小さな町工場を自身の開発した技術で大企業に成長させた名物社長。ワンマン経営が祟って突然の社長解任となるが、持ち前の「直感とイマジネーション」を武器に心機一転、クルージング会社設立と同時に、バツイチである自身の第二の婚活を始める。

山本ナギ(片瀬那奈)は、広島東洋カープのマスコットガール出身でご当地アイドルだった過去を持つ編集者。会社を追われた誠一郎にただ一人付いてきた秘書兼運転手の大丸(八嶋智人)は、ナギの経歴と美貌に白羽の矢を立てた。こうして誠一郎の最初のお見合い相手となったナギだが、取材を兼ねての参加であったことがバレ、二人は大ゲンカとなる。

誠一郎はその後も婚活を続けるが、合理的かつ即物的な美人女医・美鈴(白石美帆)にはフラれ、財産目当てが明け透けな萌(未浜杏梨)とは上手くいかない。本音をぶつけてくるファイナンシャルプランナー・佐緒里(海老瀬はな)とは意気投合するも、最終的には誠一郎が資産運用を任せる吉村(城みちる)と親しくなってしまう。

ナギは同級生のシングルマザー・綾香(小橋めぐみ)に協力を仰ぎ、広島県庁の少子化対策課が主催する「こいのわプロジェクト」を取材。結婚相談所を営むボランティアの宏美(藤田朋子)、県庁職員の北野要士(町田啓太)と出会う。

ナギと綾香が宏美に誘われた「ワンランク上の婚活クルーズ」は、誠一郎のパートナー探しのための合コンだった。後妻業が疑われる美魔女・優子(中山忍)、「工事中」のハーフ・愛里(コトウロレナ)ら、一癖も二癖もあるメンバーの中に要士もいた。実は彼、アイドル時代からナギの大ファンだったのだ。

瀬戸内海を股に掛け、老若男女の思惑が交差する「恋の輪(こいのわ)」……それぞれの婚活の行方は、はたして――。

2017年11月18日(土)、広島での先行上映から1週間後のこの日『こいのわ　婚活クルージング』の全国ロードショーが始まり、名古屋ではセンチュリーシネマ(名古屋市中区栄)で、出演者の海老瀬はな、益田祐美子プロデューサーが初日舞台挨拶に登壇した。

海老瀬はな　私は、名古屋で映画の撮影があったり、御園座さんで公演をさせてもらったり、何ヶ月も滞在させてもらったことがあったので、さっき駅に着いて劇場まで向かう景色を見て「懐かしいな」と凄く嬉しくなりました。その名古屋でこんなに多くのお客様と一緒に初日を迎えられて、本当に嬉しく思っています。

益田祐美子プロデューサー　今日は雨の中こんなに大勢のお客様にご来場いただきまして、本当にありがとうございます。名古屋には、愛があります(場内拍手)。

海老瀬　はい、それが最初ですね。

益田　はなちゃん、ヒロインでしたから。

海老瀬　……大学生の役でした、その時は(笑)。

海老瀬　広島での撮影は初めて行かせていただいたんですけど……風間(杜夫)さんとデートしながらiPadいじってたのが私なんですけど、広島城やおりづるタワー、観光名所に行かせてもらって凄く楽しかったです。ただただ「こんなに緊張しなくて良いんだろうか？」って思いながら撮影に臨んでいました。普段は凄く緊張するんですけど、(金子修介)監督のお人柄だったり、風間さんの優しさだったり、本当にただデートをしてる感じでした(笑)。

海老瀬　そんなに歳が離れているとは思えないくらい、本当にお元気なんですよね。撮影の前日だったんですけど、風間さん、八嶋智人さん、町田(啓太)くん、皆で一緒にご飯を食べて、その後「もう一軒行こう！」、「もう一軒！」ってなって……次の日、私も6時入りとか、皆朝の入りが早かったのに、3軒も行って。しかも、3軒目で「テキーラ飲もう！」って……吃驚しまして(笑)。でも、次の日はスッと現場に来られるんです。素晴らしいなと思いました。

海老瀬　はい、楽しい現場でした。

益田　特に風間さん、「この歳になって、こんな美女に囲まれて」って仰ってました(笑)。現場に入って、段々若返ってくるんですね。だから皆さん、恋は大切です(場内笑)。

益田　ある日、広島県の方が我が社に来られまして、「今、日本を元気にするため、国力を高めるためには、皆さんが恋をして結婚して子どもを増やさなきゃいけない。そのためには、婚活で成婚率を高めなきゃいけない。『こいのわプロジェクト』が成功しているので、これをテーマに映画を作っては？」というお話がありました。プロデューサーとして幾つか役割があるんですけど、お金集めってけっこう重要な役なんです。パッとお金を出してくれそうな人の顔を思い浮かべたら、皆さん独身なんです。お金があって資産を持ってるんですけど、心が寂しい(場内笑)。「お金を出していただければ、貴方の伴侶を見つけてあげる」ってことを条件に、この映画を作り始めました(笑)。

益田　はい(笑)。「お金は返せないかもしれないけれど、伴侶は紹介できます」、と。

益田　色々な社会ネタを見て決めた、監督のアイデアですね。

海老瀬　普段、結構ボーッとしたような、おっとりした役が多いので、新鮮で嬉しい役でした。「(私で)大丈夫かな？」とは思いましたけど、多分ボーッとしてる感じだからこそ良いんだろうなと思いました。

益田　金子監督は、はなちゃんが一番やらないように見えるから、あの役にしたって言ってました。今回出演されてる女優さんは全部、金子さんの好みです(場内笑)。

海老瀬　ありがたいことに、多かったです。あと、映画やドラマって、カメラに向かって話し掛けて、笑い掛けてって撮影は滅多にないんですけど、今回は凄く多くて……ちょっと、恥ずかしかったです(笑)。

益田　金子監督は、「自分では愛人を作れないので、カメラの中で恋をするんだ」って。

海老瀬　凄く素敵ですね！へぇ～～。

海老瀬　全く無くて(笑)……私、体育会系で、文系なので。でも、「賢い人、好き！」みたいな台詞があったんですけど、私はボーッとしてるので、男女関係なく頭の回転が早い人に憧れるんです。

海老瀬　前の日にお酒を飲んだイメージしかなくて(笑)。でも、映画を観て、私もレモンって良いなと思いました。

益田　レモンの花言葉は「誠実な愛」ですから、はなちゃんにぴったりです。

益田　そうですね。映画のテーマにも繋がりますね。

海老瀬　良い文化ですよね。昔は、適齢期の男女がいたら、ご近所さんが……みたいな話とか聞きますけど、今はほとんど無いので。この映画から広がっていけば良いなと思います。

益田　もう、おせっかいをし過ぎております(笑)。ちなみに、明日は娘の結婚式でございます(場内拍手)。

海老瀬　今日はこの作品のお誕生日みたいな日なので、名古屋の皆さんと迎えられて、本当に私も幸せです。ほっこり何かが心に残ってれば嬉しいなと思います。ありがとうございました(場内拍手)。

益田　映画は、一人では出来ません。皆さんの口コミが、一番大切です。ご覧になりました想いと感動を、どうぞ広げていっていただけたらありがたいです。パンフレットも、私たちが次の映画を作るエネルギーとなりますので、ご協力をいただけたらと思います。

舞台挨拶後サイン会が開かれ、名古屋PARCO東館8階・センチュリーシネマ前のフロアには、長蛇の列が出来上がった。

パンフレットに丁寧にサインを入れ、笑顔で写真撮影に応じるお二人に、人だかりはしばらく消えることが無かった。

心にぽっかり空いた穴を埋める……恋と映画は、婚活と映画館は、実は凄く似ているのかもしれない――。