安倍晋三首相は22日、電子申請による行政手続きで、紙の添付書類の提出を不要にするよう指示した。関連法令の改正案を早期に国会に提出するよう各省庁に求めた。現行制度では、パスポートの発給などは戸籍謄本か戸籍抄本の提出が義務付けられているが、ネット上ですべての手続きが済むようにする方針。
首相は22日、IT総合戦略本部で添付書類について「一括して撤廃する」と表明した。関係省庁や市役所などが連携し、住民票や戸籍謄本、法人の登記事項証明書などの書類を行政機関の間で共有する仕組みをつくる。利用者はこうした添付書類を取得するために出向く必要がなくなる。
児童扶養手当の受給では、子どもの戸籍謄本または抄本、住民票の写しの提出が必要だが、ネット上で済むようにする。
マイナンバーカードの読み取りやIDの入力などで個人を認証する。早ければ2018年秋の臨時国会に、旅券法など添付書類の提出を義務付ける法令の改正案を提出し、システム整備も進める。
国・地方の行政手続きの種類は約4万3000。法令上は9割が電子申請できるはずだが、実際に電子申請を制度として整備しているのはそのうちの12%。政府関係者は「既に電子申請を実施している手続きでも、紙の添付書類が必要になるのは4分の1程度はあるのではないか」という。
実際の申請件数(年間で約13億6000万件)で見ると、紙の添付書類を求める手続きは、商業法人の登記事項証明書が1億461万件、住民票の写しが5132万件、戸籍謄抄本が4724万件に上る。こうした紙の添付書類をなくせば、利用者の手間が減り、電子申請が進む見通しだ。