9月24日に総選挙があったドイツだが、FDP(自民党)と緑の党との連立交渉が11月19日に決裂し、メルケル首相(CDU・キリスト教民主同盟)は未だに組閣できない。結局、一度、下野するといって引っ込んだSPD(社民党)が再び駆り出されることになった。
メルケル首相は、とにかくこの大連立に賭けるしかない。決裂して再選挙になれば、おそらくCDUの支持率はさらに落ち込み、その代わりに、皆で極右だと言って無視しようとしているAfD(ドイツのための選択肢)が伸びるだろう。AfDはすでに、CDU、SPDに次ぐ第三の勢力だ。
とはいえ、引っ張り出されたSPDは、「次期は野党の雄として頑張る」と見栄を切ってしまっているし、党内にはマンネリの大連立に反対する声も強い。そこですったもんだした結果、一応、大連立が可能かどうかを見極めるため、幹部同士が会うというところまでは決まった。
ただし、条件は“ergebnis(結果)offen(オープン)"。つまり、目標は決めずに白紙の状態で、連立の可能性があるかどうかだけをまず探るというもの。国家の危機、EUの危機などと言われても、易々とメルケル首相の作戦には乗らないぞというSPDの決意(あるいは不信感)は強く、連立交渉は始まる前からすでにギクシャクしている。
最初の会談は1月7日だそうだが、私は、決裂して再選挙になる可能性がかなり高まっているように思う。
実は、お隣のオランダでも、3月の総選挙以来、同じようなことが起こっていた。こちらは、ヴィルダースの自由党が第2党になった。すべての政党とメディアから極右と非難され、蛇蠍のように嫌われている政党だ。そこで、この自由党を無視して連立を組もうとしたが、なかなかうまくいかなかった。
7ヵ月掛かって、ようやく10月に、現首相のルッテ氏率いる中道保守のVVD(自由民主党)が、CDA(キリスト教民主アピール)、民主66、PU(キリスト教同盟)の3党をかき集めて、4党連立政権を立てた。しかし、この与党は、上院でも下院でも、野党との差が1議席しかないため、このまま政権が安定するとは誰も信じていないらしい。
一方、ヴィルダース氏はまだ54歳。これからの成り行き次第では、さらに力を伸ばす可能性がある。
オーストリアでも巨大な地殻変動が起こっている。10月の総選挙で社民党を破り第1党となった国民党の党首は、31歳のセバスチャン・クルツ氏。12月18日には首相に就任した。ただ、衝撃的なのは、そのクルツ氏が連立相手に選んだのが、社民党ではなく、極右と言われている自由党だったこと。
当然、他の政党とメディアが大反発したが、当のオーストリア国民はどうかというと、ほとんど異議なし。社民党政権下のリベラルな政治に、国民がノーを突きつけた形だ。
オーストリアは社民党下の政権において、人口比ではドイツよりも多くの難民を受け入れてきた。しかし今、クルツ氏の国民党も、極右と言われる自由党も、移民・難民政策の大幅な修正を訴えている。それを国民が支持した。
ちなみにEUでは、もう一つの移民大国スウェーデンも、受け入れを厳しく制限し始めている。