弾幕STGシリーズ『連縁project』を語る
- 2017/12/22
- 11:33
自分、端子は好きな作品が少ない方ではあるが、
一度『気に入った』作品には、末永く愛する程に深く、所謂『ハマる』事の多い性格である。
そして、『連縁project』も、そのように自分が『ハマって』いる作品群の一つだ。


(画像は連縁蛇叢釼公式サイトより引用)
今回はこのシリーズについての魅力を、自分なりに語ってみたいと思う。
(厳密には『プロジェクト』なのかもしれないが、簡単のために本記事では『シリーズ』という呼び方もする。)
◆なんか、見た事があるような………?
連縁自体の知名度はさほど高くないものの、分かる方ならば『project』という単語と、
上のスクリーンショット画像に既視感を感じるだろう。
そう、連縁とは、かの有名な弾幕STGの作品群『東方project』をリスペクトして生まれたシリーズなのである。
ここで簡単にだが、連縁projectの作者について説明しておきたい。
連縁projectは、サークル『トリック・ノスタルジー』の代表、『JynX』(ジンクス)氏によって製作されている。
サークルとはいうものの、トリック・ノスタルジーのメンバーは今の所JynX氏一人であり、
ゲーム内容は全てJynX氏が一人で作っている。(テストプレイヤーは別にいる)
「ゲーム内容をほぼ全て一人で作っている」という点も、どこか東方を思わせるものがある。
東方projectのパクリかと言われれば、まぁ、否定はできないのだが(実際、1作目の同封テキストで自称している)、
世界観、ストーリー、キャラクター、音楽といったゲーム内の種々の要素は全てJynX氏のオリジナルである(影響を受けてはいるが)。
ゲームシステムも、作品が進むごとに東方とは異なる要素を取り入れつつあるが、やはり似通った部分は多い。
要するに、連縁とは『JynXという人が東方に影響を受けて作った弾幕STGシリーズ』と言える。
◆東方となにが違うの?
雰囲気に東方から影響を受けている事は、プレイしたらすぐわかるだろうが、
先述したように、ゲームシステム以外の要素は概ねオリジナルである。
また、作品が進むごとに、ゲームシステムに関しても東方とは異なった要素が入ってくるし、
4作目『連縁 天影戦記』に関しては、システム・見た目はほとんど別物と言えるほどになっている。
が、毎回システムがちょっと違うのも東方ではいつもの事だし、
ストーリーの上でも、やはり東方を意識させる要素は随所にばら撒かれている。
例えば、舞台は『无現里』という、言っちゃうと『幻想郷的なところ』であり、
ストーリーも、主人公である鳳蓮藪雨(ほうれん やぶさめ)と燕楽玄鳥(えんらく つばくら)が、
闡裡(せんり)神社の神主として、何か異変が起こったらそれを解決しに向かう、
という、基本の流れも東方でよく見たものになっている。
東方の模倣とも言えるような要素が随所に見られるが、
ここまでの説明ではただの東方コピーであり、
『一体、連縁の何が良いの?』というところを、自分なりに説明していきたいと思う。
ゲームシステムも良い所はあるのだが、
自分が連縁に感じる強い魅力はどちらかというとゲームシステムから外れた部分にあるので、
まず、世界観、ストーリーといった所の魅力から入っていきたいと思う。
◆構成要素の違い
弾幕STGというジャンルを取っ払って考えると、
東方projectは『雰囲気』で魅せるゲームであり、
連縁projectは『人間性』で魅せるゲームであると思う。
東方projectは、とにかく『場所』を描くことに非常に長けている、と思う。
多くの魅力的なキャラクターもさることながら、
洋館、森林、月、山、地底、魔界、墓、城、といった風に、
舞台とされる『幻想郷』でも描かれる場所が非常に多く、
更に特徴的なBGMも相まって、『場所』とその『雰囲気』がダイレクトに伝わってくる。
自分はそこが、東方原作の一番の魅力である気がする。
勿論、その場所毎に出てくるキャラクターもその雰囲気を彩り、
最早ゲームをしない一般人にまで広まり始め、説明不要な程に東方のキャラ達は人気を得ているのも事実であるが、
あくまで東方原作の中でのキャラクターは、その多くが基本的な設定が語られるに留まっている。
またストーリーも、つながりがある作品はあるものの、基本的に作品ごとに話は単独で完結している。
その分、様々な二次創作が作られやすい。
一方の連縁projectで、こういった東方のスタンスと何が最も違うかというと、
まず全てが『繋がって』おり、本質的に『一つの』作品である、という事だろう。
また、『連縁』という名を冠するだけあり、キャラ間の関係性が非常に複雑である。
連縁は、『キャラクター』を描くことに長けている、と思う。
それは単なる絵柄の話ではなく、そもそもこの作品が『キャラクター』を中心に回っていると言える。
例えば、鵐蒿雀(しとどあおじ)というキャラは、『渦を巻く的な能力』という能力を持っているのだが、
弾幕は全てが渦巻をモチーフにしており、ダイレクトに能力を表現している。
鵐黒巫鳥(しとどくろじ)というキャラは、『表裏を逆転させる的な能力』を持っており、
ほぼ全ての弾幕で何かしら弾が反転したりする、といった具合である。
弾幕でキャラを表現するのも東方らしいが、東方では『弾幕美』とも言える単独で美しい弾幕も多いのに対し、
連縁は良くも悪くも、弾幕をキャラクターの表現に極振りしている、と思う。
東方と同じく、もちろんBGMもキャラ毎に固有のものが存在している。
更に、4作目『天影戦記』では、過去のBGMが作者本人によってアレンジされている。
また、作者であるJynX氏は『キャラの元ネタ、名前には拘っている』と自ら発言しており、
それも、キャラクター性を重視する連縁を表現しているように思う。
◆連縁projectの展開
前提知識を説明した所で、連縁独自にある魅力を、そろそろ本格的に語りたいと思う。
やや贔屓目になってしまうかもしれないが。ネタバレと言えば少しだけネタバレになるかも。
自分が連縁において何よりも評価しているのはその『展開の仕方』である。
率直に言って、連縁projectが『東方の模倣』を、本格的に抜け出したのは、4作目『天影戦記』の完成版からである、と自分は思う。
とは言っても、1作目『无現里』、2作目『蛇叢釼』、3作目『霊烈傳』までも、
ストーリーとしては東方と比較すると異質なつくりであると言える。
1作目『无現里』では、无現里という世界に主人公が『入って来るまでの話』を描いている。
2作目『蛇叢釼』は、前作で无現里に入って来た主人公二人+一人が、
所謂『異変』を解決する、という、比較的オーソドックスな話である。
3作目『霊烈傳』も、『異変』を解決するという意味ではオーソドックスではあるが、
ここで起こった異変の原因は前作『蛇叢釼』と繋がっている。
この三作だけ見れば、東方リスペクトした普通の6面制弾幕STGという評価を受けてもおかしくない、
というかむしろ、ストーリーに関しては正直『よく分からない』部分も多い。
だが4作目『天影戦記』で、その認識はぐるりと裏返る。
この作品では、過去三作に出演したキャラ+新キャラが、なんと『全て』登場する。
連縁projectの集大成ともいえるような作品である。
過去作で出演したキャラも、立ち絵は全て新しくなっており、
弾幕は、前に使ったものが出てくるシーンもあるが、一部のキャラには新弾幕が追加されている。
驚くべきはBGMである。なんと、使いまわしは『一曲も』存在しない。
過去に出演したキャラのBGMは全てアレンジで使われており、新キャラのBGMは勿論新しく用意されている。
過去三作から出演しているメインキャラは約20人であるが、その全てのBGMがアレンジされている。
それに、新キャラのBGM、更に道中のBGMを含めると、何と本作の曲数は50を超えている。
このゲームは容量が大きめなのだが、その原因はBGMだろう、と思うくらい多い。
自機も、人数だけで言うと合計12人+αと非常に多く、
主観になるがアップグレード無しだとほぼ全ての自機で性能バランスが取れていて、破綻していない。
また、本作にはアップグレードという、所謂『自機強化』要素が存在しており、やり込もうと思うとそれなりに遊べるゲームとなっている。
これ以上のゲームシステムについては、話すと長くなりすぎるので避けるが、
とにかくこのゲームは『連縁の集大成』と言えるだろう。
なら、ここで連縁projectは終わるのだろうか?
実は連縁projectはここから始まっている。
あまり言い過ぎると大きなネタバレになるので避けたいのだが、
このゲームは、終わらないのである。
この『天影戦記』には、ラスボスというより、
連縁projectそのもののラスボスとなり得るような、凶悪なキャラが登場するのだが、
最終的にその元凶を追い詰めた後には、驚くべき展開が待っている。
その後には多くの謎が残されるのであるが、その謎について知った上で、
前三作で『よく分からなかった』ストーリーを見返すと、次第にこの作品群の全貌が見えて来る。
ここでプレイヤーが気付く事とは、
連縁projectがここで『終わる』ことは無く、この『天影戦記』こそが『始まり』であるという事実である。
つまり、天影戦記は、過去三作という布石を経た上で
『集大成』と『始まり』を、同時に成立させる事に成功している。
ここにJynX氏の手腕が伺える。
集大成をプレイさせると同時に、前三作を気にせずにはいられなくしてくるのだ。
未プレイだとなんのこっちゃと思うだろうので話を少し変えるが、連縁projectは、少々難易度が高いと言われていた。
しかしつい最近、『天影戦記』以前の三作に大きなアップデートが施された。
アップデートでこの三作は難易度が大きく緩和され、少なくともEasyは東方のEasyくらいには簡単になった(と思う)。
また、元々は『天影戦記』のストーリーに関わって来るキャラクターが新たに追加され、ストーリー面でも更新がされた。
全体的に、昔の作品に存在した粗をある程度取り除き、前よりプレイしやすい作品となっている。
そして、先述したように、最新作の『天影戦記』は、この連縁シリーズの一旦集大成である。
同時に、今後のシリーズで更に拡がりを見せるだろう謎や伏線じみた内容もてんこ盛りである。
だが全てプレイしても4作であり、最新のストーリーに追いつくにもそこまで多くの時間は必要としない。
なにが言いたいのかというと、連縁に入るなら、『今』である。
◆海外人気
最後に一つ、連縁を語る上で外せない海外人気要素について触れておきたいと思う。
連縁は、何故か海外での人気が(相対的に)非常に高く、会話内容を非公式に全て英語に翻訳するようなファンも存在する。
Len'en wiki(海外wiki)では、キャラ、舞台、更にはJynX氏本人の事まで、
非常に多くの情報がまとめられており、基本的に『このwikiに載ってない情報は無い』と言えるレベルに詳しい。
連縁は国内での拡がりにまだまだ乏しいのが現状であるが、海の外のファンは非常に熱心に情報をまとめている。
勿論海外wikiなので全て英語であるが、熱狂的なファンが複数存在し、
これほどまで充実したwikiを作らせるような魅力ある作品だという事実は注目されるべきであろう。
◆おわりに
色々拙い文だったが、結局自分の思いとしては、
連縁projectという作品群は非常に面白いので、是非プレイして欲しい。
東方をプレイした事がある者なら特に。
という事を伝えたかった。
連縁projectは、弾幕STGという、比較的マイナーなジャンルである。それ故に人を選ぶ所があるゲームでもある。
だが、ここまでの記事を読んでくれた貴方に、少しでも興味を持ってもらえたなら、
このゲームは万難を排してでもプレイする価値があるという事を伝えておきたい。
そしてこれが最も大事な点なのだが、連縁は
フリーゲームである。完全無料である。
この記事をPCから見ているような方ならば、今すぐにでもDLしてプレイする事が出来る訳だ。
是非以下のリンク(作者サイト)から、ゲームをDLして『連縁』の面白さに触れて欲しい。

(動作環境はWindows。詳しくは天影戦記マニュアルとかを参照)
まだ分からないという方は、検索して動画を見てみても良いだろう。
弾幕STGとしても遜色ない面白さを持っていることが分かるはずだ。
ただし、基本的にファンの間で活発な活動が行われているのは海外なので、
動画といったものを探す時には『Len'en』で検索した方が多くヒットする。
また、各作品を呼ぶ際には、サブタイトルの単語の頭文字を略した形がよく使用される。
『无現里』:Evanescent Existence(略:EE)
『蛇叢釼』:Earthen Miraculous Sword(略:EMS)
『霊烈傳』:Reactivate Majestical Imperial(略:RMI)
『天影戦記』:Brilliant Pagoda or Haze Castle(略:BPoHC)
もしこの記事から一人でも連縁projectのファンが増えてくれれば、これに勝る幸いは無い。
※以降は訳分からない独り言なんで読まなくてもいいです
◆でも本当の所連縁が好きな理由
上述したように、連縁projectにはゲームとして秀逸な点も多く存在する。
しかし、本当の所自分がこのシリーズを好きな理由は、本当はそこには無い気がする。
JynX氏の作る「連縁project」に、率直に言って自分は救われている。
それは恐らく、「これだけすごいゲームを、一銭も取らずにフリーで作っている人がいる」
「ゲーム性、立ち絵、BGM、ストーリー、全てを一人で作り、自らの世界を表現することができる」
「自分の世界観を、細かい粗はありつつも本気で表現している」
といったような、JynX氏本人への憧れ………に、近いのかもしれない。
作者であるJynX氏は、少なくとも『无現里』の時点では初心者を自称しており、
『東方』に出会うまでは一人でゲームを作るなど考えた事も無かった、と述べている。
そのような人物が、(ベースとなるゲームがあるとはいえ)ほぼ一からゲームをほぼ一人で構築し、
そして、他言語に翻訳されるほど熱心なファンを生み出し、最近では国内でもファンが増えつつある。
そんなJynX氏を見ていると、訳もなく勇気を貰えるのである。
それはきっと、この連縁シリーズがまだまだ完全ではないからで、
しかし着実に多くのファンを得ながら成長しているからで、
そんな様子に不思議な近しさを抱いてしまい、
自らが創作活動をする事までも、何故か許された気になってしまう。
東方とは違う、言葉では言い表しがたいほど多くのものを、自分はこのシリーズからもらっている。
このシリーズを最後まで見届けるまでは生きたいと思う。真面目に。
一度『気に入った』作品には、末永く愛する程に深く、所謂『ハマる』事の多い性格である。
そして、『連縁project』も、そのように自分が『ハマって』いる作品群の一つだ。
(画像は連縁蛇叢釼公式サイトより引用)
今回はこのシリーズについての魅力を、自分なりに語ってみたいと思う。
(厳密には『プロジェクト』なのかもしれないが、簡単のために本記事では『シリーズ』という呼び方もする。)
◆なんか、見た事があるような………?
連縁自体の知名度はさほど高くないものの、分かる方ならば『project』という単語と、
上のスクリーンショット画像に既視感を感じるだろう。
そう、連縁とは、かの有名な弾幕STGの作品群『東方project』をリスペクトして生まれたシリーズなのである。
ここで簡単にだが、連縁projectの作者について説明しておきたい。
連縁projectは、サークル『トリック・ノスタルジー』の代表、『JynX』(ジンクス)氏によって製作されている。
サークルとはいうものの、トリック・ノスタルジーのメンバーは今の所JynX氏一人であり、
ゲーム内容は全てJynX氏が一人で作っている。(テストプレイヤーは別にいる)
「ゲーム内容をほぼ全て一人で作っている」という点も、どこか東方を思わせるものがある。
東方projectのパクリかと言われれば、まぁ、否定はできないのだが(実際、1作目の同封テキストで自称している)、
世界観、ストーリー、キャラクター、音楽といったゲーム内の種々の要素は全てJynX氏のオリジナルである(影響を受けてはいるが)。
ゲームシステムも、作品が進むごとに東方とは異なる要素を取り入れつつあるが、やはり似通った部分は多い。
要するに、連縁とは『JynXという人が東方に影響を受けて作った弾幕STGシリーズ』と言える。
◆東方となにが違うの?
雰囲気に東方から影響を受けている事は、プレイしたらすぐわかるだろうが、
先述したように、ゲームシステム以外の要素は概ねオリジナルである。
また、作品が進むごとに、ゲームシステムに関しても東方とは異なった要素が入ってくるし、
4作目『連縁 天影戦記』に関しては、システム・見た目はほとんど別物と言えるほどになっている。
が、毎回システムがちょっと違うのも東方ではいつもの事だし、
ストーリーの上でも、やはり東方を意識させる要素は随所にばら撒かれている。
例えば、舞台は『无現里』という、言っちゃうと『幻想郷的なところ』であり、
ストーリーも、主人公である鳳蓮藪雨(ほうれん やぶさめ)と燕楽玄鳥(えんらく つばくら)が、
闡裡(せんり)神社の神主として、何か異変が起こったらそれを解決しに向かう、
という、基本の流れも東方でよく見たものになっている。
東方の模倣とも言えるような要素が随所に見られるが、
ここまでの説明ではただの東方コピーであり、
『一体、連縁の何が良いの?』というところを、自分なりに説明していきたいと思う。
ゲームシステムも良い所はあるのだが、
自分が連縁に感じる強い魅力はどちらかというとゲームシステムから外れた部分にあるので、
まず、世界観、ストーリーといった所の魅力から入っていきたいと思う。
◆構成要素の違い
弾幕STGというジャンルを取っ払って考えると、
東方projectは『雰囲気』で魅せるゲームであり、
連縁projectは『人間性』で魅せるゲームであると思う。
東方projectは、とにかく『場所』を描くことに非常に長けている、と思う。
多くの魅力的なキャラクターもさることながら、
洋館、森林、月、山、地底、魔界、墓、城、といった風に、
舞台とされる『幻想郷』でも描かれる場所が非常に多く、
更に特徴的なBGMも相まって、『場所』とその『雰囲気』がダイレクトに伝わってくる。
自分はそこが、東方原作の一番の魅力である気がする。
勿論、その場所毎に出てくるキャラクターもその雰囲気を彩り、
最早ゲームをしない一般人にまで広まり始め、説明不要な程に東方のキャラ達は人気を得ているのも事実であるが、
あくまで東方原作の中でのキャラクターは、その多くが基本的な設定が語られるに留まっている。
またストーリーも、つながりがある作品はあるものの、基本的に作品ごとに話は単独で完結している。
その分、様々な二次創作が作られやすい。
一方の連縁projectで、こういった東方のスタンスと何が最も違うかというと、
まず全てが『繋がって』おり、本質的に『一つの』作品である、という事だろう。
また、『連縁』という名を冠するだけあり、キャラ間の関係性が非常に複雑である。
連縁は、『キャラクター』を描くことに長けている、と思う。
それは単なる絵柄の話ではなく、そもそもこの作品が『キャラクター』を中心に回っていると言える。
例えば、鵐蒿雀(しとどあおじ)というキャラは、『渦を巻く的な能力』という能力を持っているのだが、
弾幕は全てが渦巻をモチーフにしており、ダイレクトに能力を表現している。
鵐黒巫鳥(しとどくろじ)というキャラは、『表裏を逆転させる的な能力』を持っており、
ほぼ全ての弾幕で何かしら弾が反転したりする、といった具合である。
弾幕でキャラを表現するのも東方らしいが、東方では『弾幕美』とも言える単独で美しい弾幕も多いのに対し、
連縁は良くも悪くも、弾幕をキャラクターの表現に極振りしている、と思う。
東方と同じく、もちろんBGMもキャラ毎に固有のものが存在している。
更に、4作目『天影戦記』では、過去のBGMが作者本人によってアレンジされている。
また、作者であるJynX氏は『キャラの元ネタ、名前には拘っている』と自ら発言しており、
それも、キャラクター性を重視する連縁を表現しているように思う。
◆連縁projectの展開
前提知識を説明した所で、連縁独自にある魅力を、そろそろ本格的に語りたいと思う。
やや贔屓目になってしまうかもしれないが。ネタバレと言えば少しだけネタバレになるかも。
自分が連縁において何よりも評価しているのはその『展開の仕方』である。
率直に言って、連縁projectが『東方の模倣』を、本格的に抜け出したのは、4作目『天影戦記』の完成版からである、と自分は思う。
とは言っても、1作目『无現里』、2作目『蛇叢釼』、3作目『霊烈傳』までも、
ストーリーとしては東方と比較すると異質なつくりであると言える。
1作目『无現里』では、无現里という世界に主人公が『入って来るまでの話』を描いている。
2作目『蛇叢釼』は、前作で无現里に入って来た主人公二人+一人が、
所謂『異変』を解決する、という、比較的オーソドックスな話である。
3作目『霊烈傳』も、『異変』を解決するという意味ではオーソドックスではあるが、
ここで起こった異変の原因は前作『蛇叢釼』と繋がっている。
この三作だけ見れば、東方リスペクトした普通の6面制弾幕STGという評価を受けてもおかしくない、
というかむしろ、ストーリーに関しては正直『よく分からない』部分も多い。
だが4作目『天影戦記』で、その認識はぐるりと裏返る。
この作品では、過去三作に出演したキャラ+新キャラが、なんと『全て』登場する。
連縁projectの集大成ともいえるような作品である。
過去作で出演したキャラも、立ち絵は全て新しくなっており、
弾幕は、前に使ったものが出てくるシーンもあるが、一部のキャラには新弾幕が追加されている。
驚くべきはBGMである。なんと、使いまわしは『一曲も』存在しない。
過去に出演したキャラのBGMは全てアレンジで使われており、新キャラのBGMは勿論新しく用意されている。
過去三作から出演しているメインキャラは約20人であるが、その全てのBGMがアレンジされている。
それに、新キャラのBGM、更に道中のBGMを含めると、何と本作の曲数は50を超えている。
このゲームは容量が大きめなのだが、その原因はBGMだろう、と思うくらい多い。
自機も、人数だけで言うと合計12人+αと非常に多く、
主観になるがアップグレード無しだとほぼ全ての自機で性能バランスが取れていて、破綻していない。
また、本作にはアップグレードという、所謂『自機強化』要素が存在しており、やり込もうと思うとそれなりに遊べるゲームとなっている。
これ以上のゲームシステムについては、話すと長くなりすぎるので避けるが、
とにかくこのゲームは『連縁の集大成』と言えるだろう。
なら、ここで連縁projectは終わるのだろうか?
実は連縁projectはここから始まっている。
あまり言い過ぎると大きなネタバレになるので避けたいのだが、
このゲームは、終わらないのである。
この『天影戦記』には、ラスボスというより、
連縁projectそのもののラスボスとなり得るような、凶悪なキャラが登場するのだが、
最終的にその元凶を追い詰めた後には、驚くべき展開が待っている。
その後には多くの謎が残されるのであるが、その謎について知った上で、
前三作で『よく分からなかった』ストーリーを見返すと、次第にこの作品群の全貌が見えて来る。
ここでプレイヤーが気付く事とは、
連縁projectがここで『終わる』ことは無く、この『天影戦記』こそが『始まり』であるという事実である。
つまり、天影戦記は、過去三作という布石を経た上で
『集大成』と『始まり』を、同時に成立させる事に成功している。
ここにJynX氏の手腕が伺える。
集大成をプレイさせると同時に、前三作を気にせずにはいられなくしてくるのだ。
未プレイだとなんのこっちゃと思うだろうので話を少し変えるが、連縁projectは、少々難易度が高いと言われていた。
しかしつい最近、『天影戦記』以前の三作に大きなアップデートが施された。
アップデートでこの三作は難易度が大きく緩和され、少なくともEasyは東方のEasyくらいには簡単になった(と思う)。
また、元々は『天影戦記』のストーリーに関わって来るキャラクターが新たに追加され、ストーリー面でも更新がされた。
全体的に、昔の作品に存在した粗をある程度取り除き、前よりプレイしやすい作品となっている。
そして、先述したように、最新作の『天影戦記』は、この連縁シリーズの一旦集大成である。
同時に、今後のシリーズで更に拡がりを見せるだろう謎や伏線じみた内容もてんこ盛りである。
だが全てプレイしても4作であり、最新のストーリーに追いつくにもそこまで多くの時間は必要としない。
なにが言いたいのかというと、連縁に入るなら、『今』である。
◆海外人気
最後に一つ、連縁を語る上で外せない海外人気要素について触れておきたいと思う。
連縁は、何故か海外での人気が(相対的に)非常に高く、会話内容を非公式に全て英語に翻訳するようなファンも存在する。
Len'en wiki(海外wiki)では、キャラ、舞台、更にはJynX氏本人の事まで、
非常に多くの情報がまとめられており、基本的に『このwikiに載ってない情報は無い』と言えるレベルに詳しい。
連縁は国内での拡がりにまだまだ乏しいのが現状であるが、海の外のファンは非常に熱心に情報をまとめている。
勿論海外wikiなので全て英語であるが、熱狂的なファンが複数存在し、
これほどまで充実したwikiを作らせるような魅力ある作品だという事実は注目されるべきであろう。
◆おわりに
色々拙い文だったが、結局自分の思いとしては、
連縁projectという作品群は非常に面白いので、是非プレイして欲しい。
東方をプレイした事がある者なら特に。
という事を伝えたかった。
連縁projectは、弾幕STGという、比較的マイナーなジャンルである。それ故に人を選ぶ所があるゲームでもある。
だが、ここまでの記事を読んでくれた貴方に、少しでも興味を持ってもらえたなら、
このゲームは万難を排してでもプレイする価値があるという事を伝えておきたい。
そしてこれが最も大事な点なのだが、連縁は
フリーゲームである。完全無料である。
この記事をPCから見ているような方ならば、今すぐにでもDLしてプレイする事が出来る訳だ。
是非以下のリンク(作者サイト)から、ゲームをDLして『連縁』の面白さに触れて欲しい。
(動作環境はWindows。詳しくは天影戦記マニュアルとかを参照)
まだ分からないという方は、検索して動画を見てみても良いだろう。
弾幕STGとしても遜色ない面白さを持っていることが分かるはずだ。
ただし、基本的にファンの間で活発な活動が行われているのは海外なので、
動画といったものを探す時には『Len'en』で検索した方が多くヒットする。
また、各作品を呼ぶ際には、サブタイトルの単語の頭文字を略した形がよく使用される。
『无現里』:Evanescent Existence(略:EE)
『蛇叢釼』:Earthen Miraculous Sword(略:EMS)
『霊烈傳』:Reactivate Majestical Imperial(略:RMI)
『天影戦記』:Brilliant Pagoda or Haze Castle(略:BPoHC)
もしこの記事から一人でも連縁projectのファンが増えてくれれば、これに勝る幸いは無い。
※以降は訳分からない独り言なんで読まなくてもいいです
◆でも本当の所連縁が好きな理由
上述したように、連縁projectにはゲームとして秀逸な点も多く存在する。
しかし、本当の所自分がこのシリーズを好きな理由は、本当はそこには無い気がする。
JynX氏の作る「連縁project」に、率直に言って自分は救われている。
それは恐らく、「これだけすごいゲームを、一銭も取らずにフリーで作っている人がいる」
「ゲーム性、立ち絵、BGM、ストーリー、全てを一人で作り、自らの世界を表現することができる」
「自分の世界観を、細かい粗はありつつも本気で表現している」
といったような、JynX氏本人への憧れ………に、近いのかもしれない。
作者であるJynX氏は、少なくとも『无現里』の時点では初心者を自称しており、
『東方』に出会うまでは一人でゲームを作るなど考えた事も無かった、と述べている。
そのような人物が、(ベースとなるゲームがあるとはいえ)ほぼ一からゲームをほぼ一人で構築し、
そして、他言語に翻訳されるほど熱心なファンを生み出し、最近では国内でもファンが増えつつある。
そんなJynX氏を見ていると、訳もなく勇気を貰えるのである。
それはきっと、この連縁シリーズがまだまだ完全ではないからで、
しかし着実に多くのファンを得ながら成長しているからで、
そんな様子に不思議な近しさを抱いてしまい、
自らが創作活動をする事までも、何故か許された気になってしまう。
東方とは違う、言葉では言い表しがたいほど多くのものを、自分はこのシリーズからもらっている。
このシリーズを最後まで見届けるまでは生きたいと思う。真面目に。