企業不祥事の原因、共同体的一体感が影響

法務・ガバナンス
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2017/12/22 6:30
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 大手メーカーによる製品データ改ざんなど、企業不祥事が後を絶たない。これら不祥事の全体的な傾向や問題の背景には何があるのか。企業法務を研究するGBL研究所の理事で、最近の上場企業の不祥事120件を分析した渡辺樹一氏に聞いた。

 品質・性能偽装や顧客情報の流出など、企業が重大な不利益をもたらす業務上の事件や事故を起こした場合、事実の調査や原因の分析などが必要になる。一般的には、まずは企業内で内部調査委員会を立ち上げることが多く、より踏み込んだ対応が必要とされる場合に、外部の弁護士などの有識者で構成する第三者委員会などが設置される。

 ――2014年1月~17年6月に上場企業によって公開された調査報告書120件を分析した結果、どのような不祥事が目立ちましたか。

 「120件中、28件は意図的ではない不祥事で、インサイダー情報の社外への流出やミスによる過年度決算の修正といった事例が多かった。一方、残る92件は意図的な『不正』だ。そのうち最多の43件が『不正会計』、32件が『会社資産の不正流用』、品質偽装などの『その他意図的なコンプライアンス違反』が15件だった。上場している市場の種類と不祥事の関係については、ジャスダックと東証マザーズでは経営陣による利益相反などを含む資産の不正流用が多く、東証1・2部では不正会計が多かった。不祥事件数を上場会社数で割った発生率はいずれも3%程度で同等といえる」

 ――潜在的な原因別でも分類されていますが、どのような傾向が見られましたか。

 「経営者、従業員のいずれによる不正かという点、及び、それぞれについて『保身・出世や“会社のため”』『個人的な利得目的』という点で切り分けてみた。個人的な利得目当ての場合は個人の資質によるところが大きいので、特に注目したのは前者のケースだ。親会社経営者による不正の場合、上場廃止の回避など会社を存続させるため、保身や地位の維持をコンプライアンスよりも優先する姿勢がみられた。子会社経営者や従業員によるものには、自負心や評価を得るためのほか、保身や不利益の回避のために数値目標を達成しようとする不正が多かった。これらの不祥事の潜在的な原因として、日本企業特有の『共同体的一体感』があると指摘したい」

 ――共同体的一体感とは何ですか。

 「日本企業では長期雇用を前提にした新卒一括採用に基づき、社員の感情的な一体感を求める組織運営がされている。その中で徐々に昇進を重ねて出世した役員は共同体の中で『選び抜かれた人』であるという感覚がある。この感覚にはいい側面もあるが、コンプライアンスのリスクを高める側面も強いと感じる。まず経営陣の場合、長く「従業員」として出世してきたため、会社との委任契約により会社法などで規律付けられる立場になったという意識を持ちにくく、それがプライドの乱用や誤用を招き、コンプライアンスやガバナンスの軽視など誤った方向に向かう場合がある」

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