魚の構造を知り尽くした魚屋さんは、魚のキレイな食べ方も知り尽くしているの?

焼き魚や煮魚などをきれいに食べる人は、何となく育ちが良さそうに見えますよね。反対に、汚い食べ方で「育ちが悪そう」と罵られた経験がある人もいるかもしれません。今回、きれいな魚の食べ方を習得したいライターのニシキドアヤトさんが、魚の構造をよく知る魚屋さんに魚の食べ方を教えてもらったようです。お話を伺ったのは「魚屋シュン」(東京都練馬区谷原4-11-5)。アジの塩焼き、サンマの塩焼き、ホッケの開きを食べてみました。骨の取り外し方、身を食べ進めていく順番などコツを教えてもらったら、あっという間に上達!記事最後にはイラストで、魚のきれいな食べ方を紹介していますよ。(上石神井のグルメ和食

魚の構造を知り尽くした魚屋さんは、魚のキレイな食べ方も知り尽くしているの?

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「みんなのごはん」をご覧の皆様はじめまして、ライターのニシキドアヤト(@art_0214)と申します。

 

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突然ですが、みなさんは焼き魚をキレイに食べられますか?

本当に突然すみません。

「お前はいつも突然なんだよ」と、よく言われます。

 

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でも、焼き魚ってめちゃくちゃ食べづらくないですか?

ほぐした身にはもれなく小骨がくっついてきて食べづらいし、好き嫌いが分かれますが、キモは個人的には苦手でして……。それらをよけながら食べていると、どうしても汚くなってしまうんですよね。

 

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▲僕が食べたサンマ。掲載NGが出たためモザイク処理

実家で焼き魚を食べていると、家族からは、

「本当に汚い」
「育ちが悪い」
「親の顔が見てみたい」

と、ののしられます。「うちの子じゃない」と言いたいらしい。

でも、そもそも僕が子どもの頃に親がちゃんと教えてくれなかったから、26歳のいい大人になってもこの有様なのでは……?

「責任をとって、食べ方を教えてくれ!」と親に反論したところ、このような発言が飛び出しました。

 

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なるほど、一理あるな……。

そこで、ふと僕の頭に、こんな仮説が浮かび上がりました。

 

「魚の構造を知り尽くしている魚屋さんは、魚を食べるのもめちゃくちゃキレイなんじゃないの?」

 

つまり、魚屋さんに教えてもらえば解決するのでは……?

 

魚屋さんに行こう

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というわけで、東京練馬区の「魚屋シュン」さんにやってきました!

 

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魚の食べ方が汚くて悩んでいる、ライターの吉川ばんびさんにも同行してもらいました。

 

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僕も魚の食べ方が結構汚い自覚があるんですが、ばんびさんもそんなに汚いんですか?

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おそらく……。写真を撮ってきたんですけど、見ますか?

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お、見ていいですか?

 

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▲ばんびさんの食べたサンマ。掲載NGが出たためモザイク処理

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どうでしょう?

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僕が言うのもなんですが、育ちが悪かったの?

 

モザイクの向こう側をお見せできないのが残念ですが、「そういうアート作品なのかな?」と思う程度にはすごかったです。

これは、ばんびさんの将来のためにも、早急に矯正してもらった方がいいでしょう。

 

魚の構造を教えてもらおう

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そして今回ご協力いただくのが、魚屋シュンの店長・渡部さん。この道40年の大ベテランです。常にニコニコしていて、まさに「人の良さ」の権化という感じ。

 

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本日はよろしくお願いします!

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いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。

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早速ですが渡部さん、魚の構造からキレイな食べ方まで、全部教えてください。

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会って早々節操がないな。

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魚の構造ですか……じゃあ、魚をさばくところから始めましょうか。

 

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特別に調理場に入れていただきました。


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実際にさばいて、魚の骨や内臓の位置を大体把握しておくだけでも、だいぶ食べやすくなると思いますよ。

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なるほど……!

 

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とりあえずアジをさばいてみましょうか。魚の構造は共通点が多いので、アジの構造を知れば、大体の魚に応用が利くと思います。

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アジ! おいしそう……!

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ばんびさん、魚を食べるのは好きなんですね。

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めちゃくちゃ好きです! なので、キレイに食べてあげられなくて、魚にはいつも申し訳なく思っています……。

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優しいですねぇ。

 

魚の構造を知るため、魚をさばいてみる

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魚の各部位は、ざっとこんな感じです。

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ひれが多い。

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これに加えて、アジには「ぜいご」という鋭い突起状のうろこがあるので、気を付けて切り落とします。

 

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この部分がぜいご。

 

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ぜいごは尾の先から内側に包丁を入れて、上下に動かしながら取っていきます。

 

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慣れた手つきでスイスイ下処理していく渡部さん。

 

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「内臓は、こんな風にお腹に切れ込みを入れてあげれば簡単に取れます」

 

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なるほど……! ためになるなぁ。

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次にエラを取りましょう。

 

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「頭を包丁で押さえて広げて……」

 

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「ここに包丁を入れて……」

 

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クルっとすると……

 

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「こんな感じでエラが取れます」

 

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「???」


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どういうこと?

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え? なので……

 

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「押さえて」

 

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「包丁入れて」

 

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クルっとすると……

 

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「エラがとれます」

  

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「??????」

 

渡部さんのいう「クルっと」の部分が早すぎてカメラに収まらず、よく分かりません。「クルっと」ってなんだ? 急に長嶋茂雄さんのような感覚的な説明に移行して、脳が追い付きませんでした。

 

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分かりづらければ、手で取っても大丈夫ですからね。

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ホッ……。

 

「クルっと」は僕には難しかったのですが、ここにエラがあるんだということは理解できました。エラの取り方は「アジ さばき方」とかで検索するといくらでも出てきますので、興味のある方は調べてみてください。

 

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あとは、こんな感じに切れ込みを入れれば完了です。

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すごい、めちゃくちゃ早いですね……!

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ニシキドさんもやってみますか?

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やってみたいです!

 

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「なんかこの手袋をつけると、オペ室いるような気分になりますね。ブラックジャックをよく読んでいたので、うまくさばけると思いますよ」

 

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……?

 

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というわけで、完全に調子に乗りながら実際に下処理をさせてもらったのですが……

 

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「あ! ウロコと一緒に背びれもズタズタにしちゃった!! これだとめちゃくちゃ見栄えが悪い……!」

 

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「ヤバい……! ぜいごと一緒に、思いっきり身もそぎ落としちゃった!」

 

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さすがの店長もこの顔である。すみませんでした。

 

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そして下処理を終えたアジがこちら。

言うまでもありませんが、僕が処理したのは下のアジです。

 

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お腹の切り込みを見ても一目瞭然。

 

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魚をさばくって、大変なんですね……。

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いやぁ、初めてにしては上出来ですよ! 立派立派!

 

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つくづく優しい渡部さん。師匠と呼ばせてください。

 

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その後、調理場の方に塩を振っていただいた後、

 

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大きなスチームオーブンで熱していきます。これで焼くと、ふっくらしておいしくなるらしい。

そして……

 

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焼き上がりました!!

 

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うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!

 

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これは食べなくても分かる、完全においしいやつだあああぁぁぁぁ!!!

 

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急にお腹が空いてきました……! 早く食べたい!

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では、休憩室があるので、そこで食べましょうか。


実食

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こちらが今回焼いていただいた魚。

アジの他に、今が旬のサンマ(シュンさんでは品切れだったため、近くのスーパーで購入)、居酒屋の定番メニューとして知られるホッケも焼いてもらいました。

 

ここで本題に入ります。

 

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渡部さんはもうこの道40年で、毎日魚をさばいてきているので、魚の構造を知り尽くしているわけじゃないですか。

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まぁ、そうですかねぇ。

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やっぱり、魚のキレイな食べ方も知り尽くしてるんですか?

 

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「え……?」

 

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いやぁ、どうでしょう。あんまりキレイじゃない……かもしれないですね。

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僕たちが食べたサンマの画像を見ていただけますか? これ以上キレイに食べられるようになりたいんです。

 

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「すごいですね、特にばんびさんのが……。さすがに、これよりはキレイに食べられると思います」

 

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お恥ずかしい……。こんなに汚いのは、何が原因なんでしょうか?

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そうですねぇ、まず大前提として食べられる部分が把握できていないんじゃないかと思います。この写真を見る限り、まだまだ食べられる箇所が残っているので。

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僕、内臓あたりが苦くてどうしても食べられないんですよね。

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基本的に、頭と大きい骨以外は食べられますからね。内臓あたりは苦手であれば残しても大丈夫です。

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なるほど……では渡部さん、お手本をお願いできますか?

 

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「私もそんなにキレイってわけじゃないんですけどね……」と、食べ始める渡部さん。

 

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「とりあえず、最初に頭から尻尾に向かって、背骨に沿って箸を入れていきます」

 

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「するとスルスルと箸が入るので、骨を避けながら上身と下身を食べていきます」

 

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そう説明しながらパクパクとサンマを食べていく渡部さんと、それを見つめる僕たち。

なんだこの絵。

 

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「半分食べたら裏返す人もいますが、裏返さずに、背骨をこんな感じで外します。この時は手を使っても行儀悪いとは言われないと思います」

 

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キレイに外れる背骨。それを見て「おおぉぉ……!」「すごーい!」と歓声を上げる僕たち。

「主人公が魚を食べるだけの映画の応援上映」みたいな、異様な空間がそこにはありました。

 

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「骨を外したら、あとはもう食べるだけですよ」と、すごいスピードでサンマを口に運ぶ渡部さん。

 

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あっという間に完食してしまいました。

 

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すごい! キレイだしめちゃくちゃ早い……! 2分くらいで食べてしまった。

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豪快な食べ方だったのに、残った骨がキレイ……!

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最初に箸を入れて、身をほぐすだけでかなりキレイに食べられるようになると思います。

 

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いや〜、本当にめちゃくちゃ早いしキレイに食べるしで、勉強になりました。

 

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箸の入れ方や食べられる部位をしっかり把握できたことで、次からは食べるときに迷わなくて済みそうです!

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そうですね。まぁ、お作法にこだわって食べるのもいいとは思いますが、やっぱり自分の好きな食べ方でおいしく食べていただけるのが一番ですね。

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なんて心強い名言……!

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今回お教えした手順は、ほとんどの魚に応用できます。お二人も食べてみましょう。

 

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ということで、僕たちはさっき自分でさばいたアジを食べたのですが……

 

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教わった通り、最初に背骨に沿って箸を入れて身をほぐし、

 

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上身を食べたら背骨を外して、残った部分を食べれば……

 

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じゃん!

いかがでしょうか。上がばんびさん、下が僕です。

二人とも見違えるほどキレイに食べられるようになりました。これで僕も改めてニシキド家の一員として生きていけそうです。

 

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ホッケもしっかり骨を外せば……

 

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こんなにキレイに食べられました!

 

今回、魚の構造を知ればキレイに食べられるだろうと思い、さばき方から教えてもらったわけですが、構造というよりも、ただ単純に食べる順序が定まっていなかっただけなのかもしれません。

頭のほうから食べたり、尻尾から食べたり、お腹から食べたり……いつもバラバラに食べていたのがよくなかったのではないかと思いました。

今後は、渡部さんに教えてもらった手順を意識して、魚に喜ばれる食べ方を追求していきたいです。

 

魚のキレイな食べ方をPOPにしてもらった

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今回お世話になった魚屋シュンさんは、実は店舗がめちゃくちゃデカイです。

 

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店内にはこのように、おいしそうな鮮魚がズラリと並んでいます。

また、いたるところに手書きで味のあるPOPが掲示されています。

 

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これらのPOPは、お店の方が手書きで作成していて、ある雑誌のPOPのコーナーで取り上げられたことがあるらしい。

 

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こちらの小林さんにダメ元で「魚のキレイな食べ方のPOPも作ってください!」とお願いしたら、なんと「いいですよ」と快諾。

後日送っていただいたPOPがコチラです!

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すばらしいPOP!!

何から何までありがとうございます!!!

今後は焼き魚を食べる前に、必ずこれを読む!!!!

 

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さて、皆さんいかがだったでしょうか。

魚の食べ方が汚くて悩んでいる方は、この記事を読めば改善するかもしれません。このあと実際に魚を食べて、キレイになるかどうか確かめてみてください!

それでは今回はこの辺で。

ニシキドアヤトでした。

  

紹介したお店

店名:魚屋シュン
住所:東京練馬区谷原4-11-5
TEL:03-5372-5841
営業時間:10時~19時
URL:http://www.sakanaya-shun.net/

※掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。

 

筆者プロフィール

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ニシキドアヤト

フリーWEBライター。お風呂に入ると手がシワシワになる不思議な現象に対して、「不思議だなぁ」と思っている。

Twitter:@art_0214

 

企画・編集:ノオト

                             
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