トンチンカンすぎる日本の「リベラル」
日本の野党はなぜダメなのか。彼らはしばしば「左派リベラル」と呼ばれるが、実は本来の意味の「リベラル」ではまったくない。といって「保守」でもない。政治的な立ち位置が不明瞭なのだ。原点から考えてみよう。
そもそもリベラルとは何か。英語で「liberal」と言えば「自由で偏見がない、開放的」といった意味になる。政治の世界では自由主義だろう。個人の自由と多様性を大切にした社会を目指す立場である。
具体的な政策に落とし込めば、個人の自由を基礎にしているから当然、市場経済重視だ。そして多様な人々が差別や偏見なく暮らせるように、雇用と社会福祉重視になる。社会保障を充実させるために「大きな政府」を目指す。雇用を創出するためには金融緩和を志向する。これが世界標準だ。
金融を緩和すれば、経済が刺激されて活況になり雇用が増える。それは安倍晋三政権の実績が証明している。アベノミクスの下で金融緩和が続き、いま完全失業率は2.8%の低水準、就業者数は6581万人(2017年10月)と58カ月連続で増加した(http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/201710.pdf)。
欧米のリベラルは、基本的に以上のような「大きな政府と金融緩和志向」である。たとえば、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は一貫した金融緩和論者で知られているが、教授がニューヨーク・タイムズに連載しているブログのタイトルは、その名も「The Conscience of a Liberal(リベラルの良心)」(https://www.nytimes.com/column/paul-krugman)だ。
ところが、日本で左派リベラルと呼ばれる勢力の経済政策は、これとほとんど真逆になっている。旧民主党の流れを組む勢力は一貫して増税による財政再建を唱え、かつ金融政策は引き締め志向なのだ。増税で借金を減らすだけなら、歳出は増えないので「大きな政府」にはならない。
たとえば、民主党政権時代に消費増税を決めた「社会保障と税の一体改革」はどうだったか。増税分を社会保障の充実に回せばいいのだが、多くは財政赤字の縮減に使われた。2015年度に消費税8%への増税で得た増収分8.2兆円のうち、社会保障の充実に充当されたのは、わずか1.35兆円にすぎない(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/h27ss.pdf)。
ちなみに、財政再建という名の緊縮財政と金融引き締め志向は、野党を応援する左派系マスコミも同じである。
代表格である朝日新聞や毎日新聞は一貫して増税による財政再建、すなわち緊縮財政を唱え、金融緩和を強く批判してきた。東京新聞も私が社説を書いていた当時は金融緩和を唱えていたが、最近は「早く緩和を手仕舞いすべきだ」と主張している。
野党の中でも、日本共産党は増税に反対だが、金融緩和を批判するのは旧民進党勢力と同じである。つまり、日本のリベラル勢力はマスコミや共産党を含めて、リベラルとは名ばかりで、むしろ雇用を悪化させる政策を志向しているのだ。
規制改革についても、個人の自由と市場経済を尊重するなら当然、改革推進でなければならないが、彼らはモリカケ問題でトンチンカンな追及をするばかりで、規制改革の本筋に迫った議論はまったくなかった。