米Appleのティム・クックCEOは12月21日(現地時間)、伝説のポケモン「グラードン」とのツーショット写真をTwitterに投稿した。米カリフォルニア州クパチーノに構えるApple本社キャンパス(宇宙船のような円形の社屋で有名)で出会ったようだ。
といっても、もちろんこれは現実世界の話ではない。スマートフォン向けゲームアプリ「Pokemon GO」(以下、ポケモンGO)の「AR+」機能を利用して、実際の風景にグラードンの3Dデータを重ね合わせて表示し、その隣にティム・クック氏が並んで立った様子を撮影したものだ。
AR+は米Nianticが前日に発表したポケモンGOの新機能。ポケモンGOのテーマであるAR(Augmented Reality、拡張現実)によるゲーム体験をより向上させる機能で、iOS 11にアップデートしたiPhone 6s以降のデバイスが必要だ。
AppleがiOS 11で追加した「ARKit」フレームワークを利用しており、iPhoneの内蔵カメラやモーションセンサーの情報を基に、現実世界と3Dデータの位置情報を従来より高精度に合わせることが可能になった。これにより、画面内のポケモンがより現実に近いサイズで現れ、トレーナーとの位置や距離に合わせて、リアルタイムで大きさや向きが変化するようになる。
例えば、巨大な「イワーク」に近づいて見上げたり、通せんぼしている「カビゴン」を回り込んだり、といったAR体感ができるという。こうした高精度の位置合わせは、現行のポケモンGOのARモードではできなかったことで、ポケモンとの記念撮影がより楽しくなりそうだ。
ちなみに、ティム・クック氏は190cmの(人間としては)長身だが、見上げているグラードンは高さが3.5mあるとポケモン図鑑にある。Twitterの写真を見る限り、AR+機能でポケモンのスケール感がかなり再現できているようだ。
AR+では、位置情報を生かした新しいポケモンゲットの方法も用意している。トレーナーがポケモンに接近しすぎると逃げ出す可能性があるものの、慎重に近づきボールを投げてゲットすれば、「エキスパート」ボーナスとしてより多くの「XP(経験値)」と「ほしのすな」がもらえるようになる。
このようにAR体験の向上が期待できるAR+だが、現実世界を移動してポケモンをゲットするゲームシステム上、あらためて公共のマナーや交通ルール、安全面での配慮は重要だ。Nianticは、「AR+を使用する時は、常に周囲の状況に注意して、安全に気を付けてプレイしてください」とコメントしている。
AppleはAR分野に積極的な投資を続けており、ポケモンGOとの関係は深い。
ティム・クック氏は2016年7月の決算会見後のアナリスト向け電話会見で、ポケモンGOの世界的なヒットを称賛している。また、2016年9月にはAppleの製品発表会で「Apple Watch」のポケモンGO対応を発表し、同年12月にNianticはApple Watch対応版アプリをリリースした。
さらにAppleは、2017年6月の開発者向けイベント「WWDC 2017」でARKitを発表した際、これを利用したポケモンGOのデモも披露し、現状では空中に浮いているように見えてしまうポケモンが、地面にきちんと立っているように見える改善の様子を紹介している。
以上の経緯から、ポケモンGOにARKitを利用したAR+機能が搭載される今回のタイミングで、冒頭のツイートをしたわけだ。ティム・クック氏は「ARKitのパワーがポケモンGOに今日やって来る。ポケモンとトレーナーの間のインタラクティブ性を増し、ARを新たなレベルに引き上げる」と述べている。
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