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- ・2年前に「ジャパネットたかた」を長男に譲り、今年4月、サッカーJ2リーグ「V・ファーレン長崎」の社長に就任
- ・スタジアムのテーマパーク化を目指し、倒産寸前クラブをわずか半年余りでJ1昇格へ導く
- ・「成功という言葉はない。“人間はいつも自己更新”がモットー。70でも80でも90でも『初心』を持たなきゃいけない」
今年4月、サッカーJ2リーグ「V・ファーレン長崎」の社長に就任
2017年、悲願のJ1初昇格を決めたV・ファーレン長崎。
何度も宙に上がったのは意外や意外、誰もが聞き覚えのある、あの声の持ち主だった。
V・ファーレン長崎の社長に就任して8カ月の高田 明社長は、「こんなおもしろい世界があるんだって感じ。毎日が楽しみ」と語った。
独特な声と巧みな話術で、年商1,700億円の企業までに成長させた通販大手「ジャパネットたかた」の創業者・高田 明さん。
2年前にジャパネットを長男に譲った高田さんは、今年4月、サッカーJ2リーグを戦う地元チーム、V・ファーレン長崎の社長に就任した。
当時、V・ファーレン長崎は、累積赤字が3億円を超え、J1昇格はおろか、プロチームとしての活動も困難な状況に陥っていた。そんな倒産寸前クラブが、わずか半年余りでJ1昇格へ。
「長崎の奇跡」をもたらした、高田流改革とは。
通販業界からサッカーへ。不安はなかったのか?
高田社長は、「サッカーへの不安は全然なかったです。人を幸せにするスポーツは、見てるとき楽しい・人生を感じる。ビジネスもそう。売り上げとか利益じゃなくて、モノを販売するというビジネスの中で、モノの販売を通して、いかに人の幸せに貢献できるか、ミッションは両方一緒」と語った。
通販を通して、モノの先にある幸せを追求してきた高田社長にとって、サッカーのクラブ経営も理念は同じだという。
スタジアムで過ごす5時間がキーワード
「ファン・サポーターは、スタジアムで試合を見るだけではない。試合を見に来る方は、そこで自分がエネルギーを得て、次の日も元気になろうという方がすごく多い。そのためには、試合だけでなく、試合の前に楽しむ時間。食べ物もおいしくしなければいけない。いろんなイベントをするとか、試合を見てすごく感動して、試合の余韻を残し、1時間でも楽しんでいく」
試合当日は、自らチームをPRする高田社長が目指したのは、スタジアムのテーマパーク化。
サッカーをただ90分の試合ととらえず、試合の前後も含めたスタジアムで過ごす5時間をキーワードに設定。
地元グルメの充実や子どもの遊び場を設けるなど、人が幸せを感じる空間に変貌させた。
V・ファーレン長崎サポーターは、「盛り上がってうれしい」、「楽しい。いっぱいお店が出て」などと話した。
そんな高田効果は実を結び、これまで5,000人程度だった観客数は、J1昇格を懸けた天王山の一戦で1万3,000人を超え、最終節には2万2,000人まで膨れ上がった。
すると、選手たちにも気持ちの変化が現れた。
「人間はいつも自己更新」
高田社長は、「やっぱり笑顔が違う。1勝、2勝、3勝と続くと、表情の中に、戦うぞ、やるんだ、県民のために頑張らなきゃという思いを感じるようになった」と語った。
異業種への挑戦を楽しみ、新たな舞台に情熱を傾ける高田社長を駆り立てるものは何か。
「成功という言葉はないんですよね。人間はいつも自己更新をしていくっていうのが、僕のモットーなんですね。自己を更新するっていう。『初心』というのは、若いときの初心だけだと思うけども、70でも80でも90でも、初心は持たなきゃいけない。初心を夢に置き換えてもいいけど、それをずっと持ってる限り、人は年とりません」と話す。
出身地の長崎・平戸なまりで、「J1」が「ゼイワン」に。
「ゼイワンになることは、もう過去のこと。次は、ゼイワンの中で何を目指すか。ACL、アジアチャンピオンズリーグは高い夢と思うかもしれないけど、そういうものを目指してる姿は、人をすごく力づける。だから、そんなこともできたらいいなと思います」と語った。
2018年は、その「ゼイワン」で、高田社長の経営手腕の真価が問われる。