「俺、カードはブラックだからな」。

一見、かっこよく聞こえる台詞ですが、限度額がなく、クルマのような高額商品さえ買えてしまうという噂のブラックカードのことではありません。今回は、いわゆる「ブラックリスト」のお話。これに載ると、カードが作れなくなったり、ローンが組めなくなったりするといいますが、実際のところはどうなのでしょうか。

消費生活ジャーナリストでクレジットカードに詳しい岩田昭男さんに聞いたところ「ブラックリストなるものは存在しませんよ」とのこと。それって、一体どういうこと?

ブラックリストの正体

Photo: 開發祐介

岩田昭男(いわた・あきお)

消費生活ジャーナリスト。1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。

「クレジットカード会社に、ブラックリストという名簿やリストは存在しません。カードが作れなくなったり、ローンが組めなくなったりするのは、「事故扱い」になったときですね。その場合、カード会社が加盟する信用情報機関に事故情報が登録されます。これが、俗に言うブラックリストに載るという状態ですね」

信用情報機関とは、クレジットカード会社等の共同出資によって設立された機関で、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)、JICC(株式会社日本信用情報機構)があります。

加盟会員である会社から、個人属性や契約内容、支払状況、残債額などの信用情報を収集。クレジット会社からの照会があれば、その情報を提供するそうです。しかし、カードで事故って…。いったんどんな状況か想像がつきませんが、具体的にはどういったことなのでしょうか。

「もっとも一般的なのは、支払いの遅延。ある月の支払いが滞ると、まずは入金を促す連絡がきて、それでも払わなければカードが使えなくなります。それも無視し続けて3カ月程経過すると、事故情報として扱われる可能性が高いですね。事故情報は信用情報機関に登録されるので、別の会社でも新しいカードをつくったり、お金を借りたりすることができなくなる場合があります」

ほかにも、消費者金融や銀行ローンの返済が滞る、自己破産や任意の債務整理、多重申し込み、クレジットカードの現金化なども事故情報として掲載される可能性があるのだとか。しかし、これらは多くの人には関係なさそうです。

「そうとも言い切れません。ここ2~3年で問題になっているのが、スマートフォンでの支払いです。銀行口座から引き落とされる通話料金の支払いは、滞っても事故にはなりません。しかし、分割払いで購入した本体代金はローンという扱いになります。最近は本体代金を通話料金と合わせて支払うケースが多い。つまり、自分では通話料金の引き落としが遅れているつもりでも、実はそれがローンの延滞になっていて、事故扱いになってしまう、というケースが増えています」

"ブラックリスト"に載るとどうなる?

もし、信用情報機関に事故情報が載ってしまうと、どうなるのでしょうか。会社にバレてクビになり、家族や親戚には縁を切られ、選挙権もなくなる…なんてことになってしまうのでしょうか。

「事故情報が一般に知られることはありません。ただし、事故情報は5年、信用機関によっては10年間残るので、完済しても5~10年間は新規でクレジットカードが作れなくなる場合があります。とはいえ、既に持っているクレジットカードはそのまま使えるし、プリペイド式のカード等を利用すればネットショッピングも可能です。ただし、ローンを組めなくなるのは困ると思います。最近では、結婚して家を買おうとしたら、数年前のスマホ料金の延滞で住宅ローンや自動車ローンが組めないといったケースも増えていると聞きます」

ちなみに、自分の信用情報は閲覧することが可能。「CIC」では、本人であればパソコンやスマートフォンから情報開示を申し込むことができます。気になる人は、一度見てみるのもいいでしょう。

CICのサイトによれば、信用情報には支払い状況が「$・P・R・A・B・C」などの文字で記載されています。「$」は入金あり。「A」は約束の日に入金がなかった。「C」は入金されていない、などの意味。

事故情報、いわゆるブラックリストは、時間の経過以外に合法的に消す方法はありません。また、ブラックリストに載らなくても、延滞すると信用の格付けが落ちて、ローンが組みにくくなることも考えられます。「ちょっとくらい支払いが遅れても大丈夫」などと軽く考えずに、カードを使ったらしっかりと支払うように心掛けましょう。

Photo: 開發祐介

Source: CIC