横溝正史が異色の家庭小説を執筆

推理小説作家の横溝正史が、太平洋戦争が始まった昭和16年に女性が主人公の異色の家庭小説を書いていたことが明らかになりました。
のちに誕生する名探偵・金田一耕助の原型とみられる人物も登場し、調査に当たった研究者は創作の空白を埋める意義深い発見だとしています。

金田一耕助シリーズで知られる横溝正史は、戦前から戦後にかけて活躍した推理小説作家で、死後に自宅で見つかった草稿の中に『雪割草』と題した小説の下書きの一部が残されていました。
この作品について、二松学舎大学の山口直孝教授らが調査を進めたところ、太平洋戦争が始まった昭和16年に新潟の地方新聞に連載していた長編小説であることがわかりました。
作品の詳しい情報はこれまで明らかになっておらず、この新聞の流れをくむ「新潟日報社」も存在を把握していなかったということです。
山口教授らによりますと、『雪割草』はヒロインの苦労と成長を描いた家庭小説で、当時すでに推理小説の書き手として知られていた横溝正史としては異色の作品となっています。
また、作品の中には、伸びきった髪の毛にくたびれた帽子をかぶり、しわだらけのはかまを着た男性が登場し、山口教授らは、のちに誕生する名探偵・金田一耕助の原型とみられると指摘しています。
横溝正史は別のエッセーで、当時、検閲によって推理小説の発表が難しくなっていたと記しているということで、山口教授は「戦時下の執筆に苦労するなかで現代ものに挑んでいたことが分かる。これまで思い描いていた作家像からはみ出るような作品で、創作の空白を埋める意義深い発見だ」と話しています。

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