【ワシントン=河浪武史】米下院は20日、連邦法人税率を35%から21%に引き下げる税制改革法案を再採決し、賛成多数で可決した。上院も可決済みで、10年で1.5兆ドルという巨額減税が議会を通過した。レーガン政権だった1986年以来、約30年ぶりとなる税制の抜本改革が実現する。ただ、法案成立に必要なトランプ大統領の署名は21日以降にずれ込む。
トランプ大統領は20日、ホワイトハウスでライアン下院議長ら共和党指導部とともに演説し「米国史上、最大の減税だ。記録破りなことをなし遂げた」と誇った。法人税率の大幅引き下げで「企業と雇用の流出に歯止めをかける」とも主張した。
議会を通過した税制法案は、連邦法人税率を大きく引き下げる。地方と合わせた法人税率は28%程度となり、日本やドイツ、フランスなどよりも低くなる。企業の海外子会社からの配当課税も廃止する。米企業は海外に2.5兆ドルもの資金をため込むが、トランプ政権は配当課税の廃止で米国に投資マネーを戻したい考えだ。
企業の米国内投資も後押しする。新税制では5年間の時限措置で、設備投資の全額を課税所得から差し引ける「即時償却」が広く使えるようになる。全体の企業減税の規模は10年で6500億ドルに達する。
個人税制でも所得税の最高税率を引き下げ、遺産税なども軽減する。個人税制全体の減税規模は10年で1兆ドルを超えるが、大半の税優遇は8年間の時限措置で、2026年以降は一部で一転して増税となる可能性もある。減税で財政赤字も10年で1兆ドル強増える見込みで、中長期的には金利上昇などのリスクもある。
法案はトランプ大統領が署名して成立するが、ホワイトハウスは20日、署名が21日以降にずれ込むと指摘した。税制改革を年内に実現するには、予算関連法を改定して、財政悪化を抑制する「ペイ・ゴー原則」を外す必要がある。税制法案の採決が土壇場で遅れ、ペイ・ゴー原則の審議もずれ込んでおり、20日までに採決できなかった。
トランプ氏は22日までに税制法案に署名するとしてきた。ただ、議会は同日で期限が切れる暫定予算の審議を優先しており「ペイ・ゴー原則」の適用除外が決まるか不透明だ。来年1月になれば同原則は一時的に棚上げできるため、トランプ氏が署名を年明けに持ち越す可能性もある。その場合も新税制は18年1月1日に遡って適用する。