『君の名は。』の大ヒットにも注目

最近「童貞コンテンツ」が増えているのはなぜ? イメージ変化のきっかけは2002年!?

  • 社会・政治
  • 2017.12.13
  • by 新R25編集部

素晴らしきDT(=童貞)の世界」を伝えるコンセプトのもと、10月からはじまった青春バラエティ『DTテレビ』(AbemaTV)や、同月にはじまった30歳以上の男女が「童貞(処女)卒業」を目指し高校に強制入学させられるドラマ『オトナ高校』(テレビ朝日系)など、近ごろ「童貞」をテーマに掲げたコンテンツが増えている。

出典Youtube

『DTテレビ』(AbemaTV)より

日本性教育協会の調査によると、2005年を境に青少年の童貞率はどんどん上がっているというデータも出ているが…なぜエンタメコンテンツとしてこれほど童貞がフィーチャーされているのか? “永遠のオトナ童貞のための文化系WEBマガジン”『チェリー』編集長の霜田明寛さんに見解を聞いてみた!

みうらじゅんと伊集院光の共著である『D.T.』(2002年)が童貞のイメージを変えはじめた!?

まず『童貞』のイメージが変わったのは、2002年が起点だと思っています。その年に、みうらじゅんさんと伊集院光さんが『D.T.』という本を上梓したのですが、そこで童貞を『DT』というポップな名称で呼びはじめました。同じ年に、『木更津キャッツアイ』というドラマで、嵐の櫻井君が『バンビ』という童貞のキャラを演じ、さらに翌年2003年には嵐の二宮君山Pが童貞卒業を目標とする高校生たちを演じた『Stand Up!!』と、立て続けにジャニーズのタレントが童貞キャラを演じるドラマが放映されました。それまでにはまずなかったことです。そういったコンテンツを経て、童貞の受け取られ方がだんだんと『気持ち悪い』から『ポップ』『ピュア』なものへと変わっていったと思います」(霜田さん)

「童貞=ポップ」という認識のオトナが“作り手側”にまわり、童貞コンテンツが増加

画像は「AbemaTV公式 YouTube」のスクリーンショット

霜田さんは、その2002〜2003年に学生だった人が、“童貞はポップなものである”という認識のもと「作り手側」にまわったことで、童貞をテーマにしたエンタメ作品が増えているのではないかと推測する。

つまり、童貞が増えたからというより、“童貞に対する価値観が変化したオトナ”が制作側に増えたことが、童貞コンテンツが増えた理由の一つのようだ。そんなオトナたちから生み出された作品は、見ている人たちにどんな価値を与えるのだろうか?

「童貞コンテンツに触れることは、自分が童貞だったときの純粋性を取り戻すための行動だと思います」(霜田さん)

たしかに、ここ最近は芸能人や政治家の不祥事など、ドロドロとした話題が多い。テレビで躍動するピュアな童貞の姿は、視聴者にとっても新鮮で、元気の出るコンテンツなのかもしれない。

進む童貞のオープン化。カリスマモデル・こんどうようぢの『20歳・童貞・スーパーニート』に衝撃

「童貞コンテンツ」が童貞をよりポップなものに昇華させ、社会の空気をつくりだす。そんな流れを経て、最近ではますますオープンになっている。

「2013年に発売された“ジェンダーレス男子”こんどうようぢのスタイルブックの帯に『20歳・童貞・スーパーニート』と書いてあったことには驚きました。絶大な影響力を誇るカリスマモデルである彼が、童貞ということを恥ずかしげもなく言っていくことで、『童貞=ポップ』であるという認識はさらに加速するのではと思っています」(霜田さん)

SNS、テレビでも「童貞」を公言している

たしかに、童貞を公言する人の裾野が広がるなかで、童貞は“モテる・モテない”という優劣ではなく、ひとつの価値観やポジションとして語られることが増えてきている気がする。

“童貞性”が描かれた『君の名は。』の大ヒットで、国民の童貞に対する受容性を確認できた

画像は映画『君の名は。』公式サイトのスクリーンショット

最後に霜田さんは、こんなことも話してくれた。

「あとこれは見逃されがちなのですが、映画『君の名は。』の大ヒットも関係していると考えています。もともと新海誠監督の作品には『純愛』『初恋』など“童貞性”がテーマに含まれていますが、『君の名は』でも、女子の身体になった男の主人公が自分を確認するために毎回胸を触るシーンがあるほか、主人公とヒロインが時間と空間を乗り越えてつながるなど、随所に『こうなったらいいな』という男性の妄想が盛り込まれています。これが賞賛されヒットしたということは、今の時代に童貞が受け入れられている証拠なのではないでしょうか」

気づけば身近なコンテンツに潜んでいる“童貞性”。今後は「童貞コンテンツ増えてるな」なんてわざわざ思うこともなくなっていきそうだ!

〈取材・文=東田俊介〉