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老化を進める物質「オステオポンチン」から逃れる方法

食べるならサラダより温野菜とか
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カギは内臓脂肪にあり

慢性炎症は、近年、専門家の間で注目を集めている。風邪やケガなどで起きる炎症が「大火事」だとすれば、慢性疾患は「小火」のような状態が長く続く現象だ。これが体を蝕んでいく。

これまでの研究によれば、慢性炎症は、動脈硬化の他に、糖尿病、がんなどの発症にも関係していることが明らかになっている。

さらに、認知症(アルツハイマー病)にも慢性炎症が影響を与えており、抗炎症薬を用い、慢性炎症を抑えることでアルツハイマーの症状を抑制できるという研究も、専門誌『ニューロバイオロジー・オブ・エイジング』に発表されている。

まとめれば、異常化した細胞によって血中のオステオポンチンが増え、それが慢性炎症を引き起こし、体の老化につながる。そのために様々な疾患が体に出てくるということだ。

 

しかし、加齢によってオステオポンチンの分泌量が増えるのであれば、私たちには、まったく対策の打ちようがないのではないか。

必ずしもそうではない。実は、前出の佐野氏は、加齢とは別に、生物の体の中でオステオポンチンを増加させている要因を発見したのである。佐野氏が言う。

「私たちのチームが行った研究によって、オステオポンチンが、内臓脂肪型の肥満によって増加するという新たな事実が明らかになったのです。

この研究論文は、昨年11月にアメリカの医学研究専門誌『ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション』に掲載されました。

実験の内容はこうです。一方に、脂肪分(ラード)をたっぷりと含んだエサを食べさせ内臓脂肪をつけたマウスを、もう一方に脂肪分の少ない通常のエサを食べさせたマウスを準備し、両者を比較します。

すると、通常のエサを食べさせたマウスの内臓脂肪にはほとんど存在しない、異常化したTリンパ球が、太ったマウスの内臓脂肪からは大量に見つかった。そしてその異常化したTリンパ球がオステオポンチンを分泌していたのです。

太ったマウスでは、血液中のオステオポンチン濃度の上昇が確認され、内臓脂肪の慢性炎症も見られました。

加齢とはまったく別に、『肥満』という病態でオステオポンチンが増える仕組みが解明されたわけです」

たとえ若い人であっても、内臓脂肪が多い人は、オステオポンチンの分泌量が多くなっていると考えられる。もちろん自覚症状はない。日々の生活習慣によって身についた内臓脂肪が、ゆっくりと、しかし、確実に体にダメージを与えていく。

だが、裏を返せば、内臓脂肪をきちんとコントロールして増やさないようにすることによって、私たちはオステオポンチンの分泌量を増やさずに済む、ひいては老化を防げるということだ。

「どのような種類の食事を食べるとマウスのオステオポンチンの分泌量が多くなるかを研究している最中です。

まだ厳密なことは言えませんが、たとえば、ラードなどに多く含まれる飽和脂肪酸(常温で溶けない油)は内臓脂肪でTリンパ球の異常を引き起こしやすいので、不飽和脂肪酸を含むオリーブオイルを併用するなど、オステオポンチンを増やしにくくする工夫はできると考えます」(佐野氏)

では、そのほかに内臓脂肪を増やさない食べ物にはどんなものがあるのか。管理栄養士の麻生れいみ氏が解説する。

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「一番いいのは、何といっても、サバサンマイワシなどの青魚類です。こうした魚は、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった物質を多く含みます。

どちらも、人間の体内でつくることができず、食品などによって外から摂取する必要がある必須脂肪酸の『オメガ3脂肪酸』。オメガ3脂肪酸は、脂肪を燃焼しやすくする作用があるのです」